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「在外邦人なんでも1000」N0.003 まずは貰って後から贈与

これは、神田英明氏が発行するニュースレター「在外邦人なんでも1000」のバックナンバーです。

◆日本の老親の相続案件で、海外にいる子は得てして相続放棄をしがちです。国際結婚した子は、どうしても負い目を感じ易く、兄弟から「自由勝手に海外で人生を楽しんでいる」、「親の面倒を見なかった」と言われて、本人もその気になり遺産分割において遠慮することになります。しかし、それは往々にして良い結果を導きません。なぜでしょうか。
 まず、相続では平等扱いされることを法は正面から認めていて、親がそれと異なる内容の遺言書を遺さなかったということは、子は平等に扱いたいという意思の表れです。まずは親の意思を尊重しましょう。
 また、海外在住者が親の面倒をみたり、見舞いに来たりが余り出来なかったのは当たり前です。自分ができる範囲の中でベストは尽くしていたという評価において、自己の貢献度を考えれば十分なのです。遠慮せずにまずは平等に遺産分割に預かりましょう。「自律のない意思決定」は必ず後悔します。
 実質的に考えても、海外在住の子は実は親のためになっていたのです。海外在住の子は親にとっての誇りであり、話の種であり、人生における潤いをもたらしてくれる存在だったのです。
 さらには、相続の段階で権利放棄をしても、実は兄弟からそれほど感謝されません。この時点での兄弟の考えは、いわば罪に対する償いとして権利放棄は当然でしょうと言うくらいの感触だからです。
 この現状は法律家の目から見たら、赤信号です。トラブルは客観的な処遇の不均衡からくるものではなく、主観的な感情の不満から発生します。最大限譲歩して権利放棄したという意識のある海外の子は、兄弟からそれが当然という態度を取られては、物凄く悔しい思いをすることになるでしょう。その禍根により、いずれ兄弟仲が上手くいかなくなることが目に見えています。本人も不満、兄弟は感謝知らず、それで兄弟仲が悪くなるのでは、遺産を遺した天国にいる親御さんも浮かばれないでしょう。
 では、どうすれば良いのでしょうか。
 最も良いのは、まずは第一段階の相続時では平等に権利を行使することです。その後に兄弟や甥姪に親の介護等につき感謝の気持ちとして、第二段階として1~2年後にでも、自らの自由意思で兄弟や甥姪に感謝の分を贈与して上げましょう。罰としての償いではなく感謝としての贈与です。それによって兄弟や甥姪からも心から感謝されます。本人は最高の気持ちを味わえ、兄弟から心からも喜ばれ、天国の親も喜ぶ。全員が幸せになります。全く同じことをやっているようで、その効果は全く異なります。

以上、自律的な意思決定が大切という観点から「遺産はまずは平等に、それから気前よく」のススメでした。

「なんでも1000」通算No.008「在外邦人なんでも1000」No.003

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神田英明(民法学者・東京弁護士会弁護士)

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神田英明氏のプロフィール

民法学者(明治大学)、弁護士(東京弁護士会)、法曹教育の第一人者(司法試験首席合格、20歳合格者を輩出)。教え子弁護士が全国各地に100人。
自身の海外経験をもとに、遺産相続に関するミュンヘン講演(在ミュンヘン日本国総領事館後援)や「親が認知症になる前にすべきこと」のフランクフルト講演、「脳が喜ぶ勉強法」という教育に関するデュッセルドルフ講演、さらには国をまたいだ往来が気軽にできなくなった状況をふまえ、世界規模でのzoom講演(「日本にいる老親のためにすべきこと」など)を開催中。
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