笑顔でさようなら。またねと言えたら

「みなさん、こんにちはー!」
にこやかに始まる配信の挨拶。
それが俺らの当たり前で。
それがいつもの日常だった。
勉強しながら。寝落ちかけながら。
ただ耳を傾けていたよな。

なだらかに進む時間は実はとても早くて。
のんびり歩く歩道は案外獣道で。
それに気づかないように。
それを隠すように。
あなたの明るい声が耳に届く。

疲れたなんてこぼす俺たちに。
歩くって、大変なんだぞ
笑うって難しいんだぞ
だからね、みんな
生きててえらいぞ!!

突き抜けるような笑顔でそういってくれた
画面の向こう。
どんな人間かもわからない俺たちに
いつもあなたは、笑顔で。

時々思い出してしまう。
あなたのいなかった日々を。
何も考えず灼熱の道を歩いた。
厚着をして雪の降る街中を歩いた。
何でもなく歩いてるだけなのに膝が折れそうになった。

そんな日から
今日は、なんていうのかなって考えるようになった。
「暑かったねぇみんなねぇ!溶けてないかい!」
「マジ凍えるように寒かったさぁ今日ねぇ!!笑笑笑」

もうすぐ今日が終わる。

――――――――――――――――――――――――

「みんなーこんにちはやねぇ」
にこやかに始まったいつもの挨拶。
昔は皆さん、だったよね
少し砕けて君らしくなったね

みんなにお知らせがあるんだって。
寂しそうな声をして。

その内容は…。

君は今、どんな気持ちなのだろうか。
自分に関わってくれた人たち。
ずっと応援してくれた人たち。
仲良く挨拶を返してくれていたみんな。

当たり前の日常だった。
でも時間というのは残酷で。
いつかそれは当たり前ではなくなってしまう。

わかっていたはずなのに
君を追いかけた。

これから私は君無しで歩むんだ。
それを思うと心が震えてしまう。

大丈夫かな?
心配そうな声でそうつぶやくのを
私は聞き逃さなかった

寂しいで埋まるコメントの中
「大丈夫に決まってるやんけぇ!」
とコメントを残した

「うんうん、みんな寂しいねぇ」

「あっ・・・」

「でも、大丈夫やんね。みんなね」

どの方向に歩きだせば良いかもわからずに
現実逃避をするように聞き始めた君の声
今もまだわからないけれど
君が進み方を教えてくれた

君が歩いたんだ。どの方向でも前
君がいなくても君と見付けた道ならこの道が前
いくら獣道でもそう歩くと決めた

「みんなー!!さようならぁ!!いつかのためにまたねっていえたらねぇ」

大丈夫。きっとまた言える日が来る

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