ノックの音

ベッドに横になって本を読んでいると、コンコンコン、コンコンコン、と何かをノックするような音が聞こえてくる。

夜の10時にドアをノックする音がするのも変なものだし、ドアを叩くならもう少し金属のような音がしてもいいはず。

聞こえてくるコンコンという音は、硬い木に拳で軽快に叩くような音だった。

もしや入浴している彼女に何かあって、声が出せなくて困って助けを呼んでいるかもしれないと思い、浴室につながる廊下のドアを開けてみると、洗面台の前に、全裸で頭にピンクのタオルを巻いた姿の彼女が首を傾けて懸命に頭を振っていた。

彼女は「あ、見られちゃった」と恥ずかしそうな顔をしながら、それでも軽く飛び跳ねるように首を傾けて、自らの頭を上から軽快にたたいていた。

彼女の小さな拳が、彼女の頭を叩くたびに、コンコンコン、と軽やかな音が廊下に響いていた。