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【月刊あめのもり】2021年4月「経営理念の話をしていると、いつの間にやらアルフィーの話になっていることもある。」

さあ、毎月恒例の月1コラムです。

もっと日程的に余裕を持って仕上げようと毎回思うのですが、毎月けっきょく公開日(僕の場合は末日)の前日の夜に焦りながら書いているのが情けないばかりです。
まるで学生時代の夏休みの宿題のようですね。

今回ははじめての試みとして、同じく毎月1回、月の末日に配信しているメルマガと連動させた話をしてみようと思います。
そのメルマガからから飛んできた方もいらっしゃるかもしれませんね。

メルマガでは、今月より僕の息子が通う保育園から毎日16時過ぎに届く1日の様子の報告が楽しみで仕方がないという話、そしてその理由の一つが「徹底して“具体”に寄せているから」といったことを書きました。

(メルマガの登録は「info@i-tie-s.com」まで)

そこに紐づけて、今日は「抽象と具体」をテーマに書いてみましょう。
僕がコピーを書く時に、もっとも大切にしていることのひとつです。

(この記事は2021年4月30日に株式会社アイタイスの公式サイトに公開されたものの転載になります。)



「M・V・V」。これ、何の頭文字?

3月あたりからブランド構築の依頼がたまたま重なって、現在、企業が4つ、商品が2つが同時に進んでおります。

一口に「ブランド構築」と言っても、その内容はさまざま。

あえてギュギュギュっと絞り込んで簡潔に言うならば、
企業やサービス、商品などが持つ中心的な価値を言語化し、定義づけることで、ユーザーに向けて発信できる状態にするための取り組みとでも言いましょうか。

プログラムもいくつかあるのですが、企業の場合は『経営理念の策定』がメインになります。

以前、僕の師匠でもあるユニィディオ株式会社の代表、山田さんとそんなテーマで対談をしたこともありました。(対談時の社名は「ノティオ」)

世の中で見られる「経営理念とは?」的な話と比べて、とてもカジュアルで、読みやすい内容になっているので、こちらもぜひ一読ください。

経営の意志を。会社が世の中に存在する意味を。『経営理念』に詰め込もう。

その策定方法もさまざまです。つくる目的や組織の規模感などに合わせて、経営者に徹底的にヒアリングをするだけの時もあれば、プロジェクトチームを結成してワークショップをする時もあります。

上で紹介した山田さんとの対談記事で使った画像を転載。

『経営理念』は、「ミッション・ビジョン・バリュー」のカタチにするのがほとんど。

『ミッション』は「企業の社会的使命」と呼んでいて、「会社がなんのために存在しているのか」という、とても大事な命題に対する答えです。

もちろん「お金を稼ぐため」というのも一つの答えですね。

しかしそれだと、例えば我々のような中小零細企業は、この世に存在する意味が、大企業と比べて何百分の1、何千分の1しかないことになってしまいます。
ってことは「別になくなってもいい」ってことにすらなりますよね。
そんなはずはないのに。

だからこそ、会社が何のために存在していて、社会に対してどんな責任を果たし、なんのために社員たちが働いているのかを定義づける必要があります。これがミッションです。

次に『ビジョン』。これは「あるべき未来像」と呼んでいて、「中長期的に組織がどういった状態になればゴールなのか」を定めるものです。

どの企業も数字による目標はあると思いますが、そうではなくて、定性的な状態を示すのがこのビジョンです。

多くの場合、この『ミッション』と『ビジョン』の2つは、“経営の意志”を示すものとして掲げます。

したがってその企業が展開するさまざまな事業やサービスを包括した普遍的価値として定めることとなり、必然的に手法やアプローチには寄せず、抽象度の高い言葉を選ぶことが多くなります。

同じく山田さんとの対談記事より。

一方で『バリュー』は「優先すべき価値観」と呼んでいて、比較的、“現場”や“日々の業務”に寄った具体的な言葉を並べます。
たとえば……

「まったく練られていないものでいいから、100案くらい出せ!」

「たっぷり時間をかけていいから、渾身の2〜3案だけを出せ!」

この2つ、まったく逆のことを言っていますが、どちらかが正解っていうわけではないですよね?

あるのは「その組織において何が尊ばれるか」ということだけ。
例えばそういったものを定めるのがバリューです。

バリューはいつも大体5〜6くらいにまとめます。
現場で優先させるべき価値観を定めていくわけですから、経営者だけでなく、スタッフを巻き込んだワークショップなどを通して作ることが多いのがバリューです。

そしてバリューよりもっと「具体」とか「現場」に寄ったものが『行動指針』で、ここにはいっさいの抽象度を排した言葉を並べます。

「机の上は常にキレイにしましょう」「朝は大きなで元気に挨拶をしましょう」

会社によってはそれくらい具体に寄ったものも行動指針には入ります。

リッツカールトンで知られる「クレドカード」も、このバリューや行動指針に近いものですね。

ちなみに僕個人の行動指針として定めたものが、「雨森武志の基本ルール100」です。
※相変わらず更新をサボっておりますが……

雨森武志のきほんルール100

そして、先に紹介した対談の中で山田さんも話しているのが、「数字と理念の両方で牽引していくのがいい」ということ。

僕もいつも経営者の方に同じことを伝えています。
どれだけ立派な理念があったからといってそれだけで稼げるわけではないですからね。


抽象よ、お前はややこしいやつだぜ!

さて、特に『ミッション』と『ビジョン』に関しては、抽象度の高い言葉が選ばれがちと書きましたが、この「抽象度の高い言葉」がなかなかの曲者です。

会社がもつさまざまな価値のエッセンスを抽出し、それを抽象化、概念化することで『ミッション』や『ビジョン』をつくるのですが、
それが例えば……

「世の中に新しい価値を創造する」

なんて言葉になってしまうとどうでしょう。

抽象度は100点ですが、会社の独自性がまったくないし、メッセージとしても弱く、社員への浸透度も限りなく低いでしょう。

メルマガにも書きましたが、
「保育園で園児とどのように1日を過ごしたか」という報告に、「今日は愛を持って子ども達と接し、絆を深めました」とか「今日は子ども達の健やかな未来を育むために全力で努めました」なんて書かれていてもお父さん・お母さんはポカーンとするだけ。

つまり、理念においては具体に寄っていてもだめだし、だからといって抽象的すぎてもだめというわけです。その会社だけがもつ本質的な価値を見つけ出し、それを経営者も社員も信じ抜ける言葉にすることが、コンサルタントでありライターである僕の腕の見せ所です。

このあと紹介するセミナーで使った資料

以前、同じくユニィディオの山田さんにお願いされて、クリエイター向けのセミナーでそういう話をしたことがあります。
少し長いですが、もしよければGWの時間潰しにどうぞ。

そのようにしてミッション・ビジョン・バリューの3つを定めれば、会社の軸というか、背骨の部分というか、輪郭みたいなものがはっきりとしてきて、それによってスタッフの一体感が生まれ、チーム力も高まり、さらに採用などにも効果が現れるというカラクリです。

そしてそれは企業のみならず、例えばスポーツチームや、自治体、教育機関などにも当てはまると思います。

いかがでしょうか。
特に中小企業の経営者の皆さん、経営理念の策定をメインとしたブランド構築に取り組んでみませんか?
(最後に営業的メッセージ!爆)


※すべて個人の感想です(炎上対策)

はい。ここで終わっても良かったのですが、こんな“一般論”を書くのがこのコラムではないはずなので、さらに関連づけて、話を進めてみましょう。

繰り返しになりますが、抽象度の高い言葉っていうのは曲者です。
「常套句」「大文字の言葉」「クリシェ」みたいな風にも呼ばれるそれらの言葉。

覚えているのは、菅野美穂主演でドラマ化もされた人気漫画『働きマン』のこんなシーン。
主人公である雑誌編集者の弘子が上司にこんな風に怒られています。

「住民は恐怖の一夜をすごし」
「着のみ着のままの生活を余儀なくされている」
「常套句のオンパレード いっこも自分の頭で考えた言葉がねーよ」
「誰だァ!? こんな恥ずかしい文章書いた奴は」

「働きマン / 講談社」第2巻 40ページより

この上司の指摘、とてもよく分かります。

例えば僕はサッカーを筆頭にスポーツが好きなので、昼休みにはヤフースポーツを見るのが日課なのですが、その記事の中で(特にタイトルに)「圧巻」という言葉が入っていると、一瞬でゲンナリして、その記事を読むのをやめてしまいます。

でも「圧巻」がひとつもない日を探す方が難しいくらい。
めちゃめちゃ使われていますけどね。

歌の歌詞にはもっと敏感です。

さほどキャリアのない若いアーティストを槍玉にあげるのは少し心苦しくはありますが、すこし前、週末にたまたま家族で食事をしながら「ミュージックフェア」を見ているとリトルグリーモンスターという女の子のボーカルグループが登場します。

その時に歌っていたのは「Viva」という曲。あまりに気になって、調べてしまいました(笑)

「VIVA」

追いかけて行こう 追いかけてもっと
辿り着けないような場所だとしても
あなたがいれば 強くなれるよ
喜びの足音 聞こえるだろう

挫けそうな時こそ 観える景色もあるんだ
(きっと、ほら、きっと)
壊れてしまいそうなくらい
重ねた傷跡 それも勲章

例え声が枯れてもいいさ
響き届け明日へ向かって

さぁ美しく 誇らしく 進め

終始こんな感じ。

もちろんファンの方もいるでしょうからあえて細かくは言及しませんが、もし僕の部下が書いたコピーに、上にあるどれか一つだけでも入っていたら
「おいおい、仕事、なめんなよ」「もっと時間を使って考えようぜ」と突き返すであろうフレーズだけで1曲ができていますね。
これはもはや見事と言っていいでしょう(笑)

炎上覚悟で、もっとファンの多そうなアーティストを取り上げるなら、THE ALFEEもいつもこんな感じですよね。
あまり詳しくはないのですが、少し調べてみると……

「Brave Love ~Galaxy Express 999.」

Can You Hear Me? 聞こえるかい
この胸の熱い鼓動が
偶然のときめきに 愛は動き始める
だからいつまでも
少年の瞳で明日を見つめていく
勇気 忘れないで
あゝ 星がきらめく一瞬に
人は生まれ 消えてゆく
刻まれるHistory 夢は一つさ
愛するためにBravely Fight!
あきらめないで Destiny
約束された場所が心のUtopia
未来はけして君を裏切らない

うん。なかなか厳しいな……(笑)

まあアーティストの歌の歌詞と、僕のようなコピーライターの仕事は似ているようでまったく違うものなので、僕が何を言っても的外れなんでしょう。
個人的な感想を抜けきれていないですし。

ちなみに僕は大江千里のファンで、特に槇原敬之や秦基博もカバーしている「rain」という曲が大好きです。
そこにはこんな一節があります。

「rain」

道路わきのビラと壊れた常夜燈
街角ではそう だれもが急いでた
きみじゃない悪いのは自分の激しさを
かくせないぼくのほうさ

常夜燈」。
もうこの単語一つで、僕の中では超名曲です。

なかなかロジカルには説明できないのですが、「じょうやとう」という響きや、言葉が持つ情緒、頭の中に浮かぶイメージ、そして普段はあまり触れることがない言葉であること……。

もうたまりません。

ちなみに同じ「rain」の冒頭の歌詞はこんな感じ。

言葉にできず凍えたままで
人前ではやさしく生きていた
しわよせで こんなふうに雑に
雨の夜にきみを抱きしめてた

これまたきちんと理論的には説明できないんですがここで出てくる「しわよせ」もいいですよね。

“何かと何かがトレードオフである状態”を示す言葉は
「引き換え」とか「犠牲に」とか、いろいろありますが、
ここでは「しわよせ」がどう考えても100点な気がします。

少し話を戻すと、僕がクライアント企業の理念を作る時も、わりと同じような観点で言葉を選びます。

やはり経営理念は会社において特別なものであるべきなので、
普段の業務の中で、もしくは日常的に使われている資料などで頻繁に登場するような言葉ではないものをできれば選びたい。

さらに字面や響き、余韻、行間というか言葉の奥にイメージできるもの……

そういったものを総合的に判断しながら、言葉を並べていくのが僕の仕事です。

……なんて、わかったような口を聞いていますが、大江千里の域にはまだまだ到達できていないですけどね。


はい、今日はここまで。

そんな感じです。今日も特に何のオチもなく、終わっていきます。

昨年と同じく、全国的に外には遊びにいけない大型連休です。
僕は昼間は遠出をすることなく家族と一緒に過ごし、夜はたまっている原稿を書く、なんて休み方になりそう。

これまでのグズグズしたペースから卒業するために、来月の月1コラムも連休中に書いてしまおうかな(絶対に無理!)

ではまた!


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