グルメ探偵、ミスリードする


仕事で行った現場が土日だと周りの飲食店がやっていない地域で、いつも開いているお好み焼き屋に行くしかないのだが流石に飽きる。

そこで開拓してみよう!となりいつもとは違う方に曲がった瞬間に、鮮やかなインド人カレー屋の看板が目に飛び込んできた。配色がインド人がやってるカレー屋だと一目で分かる絶対に美味しいそれ。
お好み焼き屋より近いところにこんな店があるなんて知りもしなかった。
と喜び勇み店内に入り絶対を美味しく食べた。
絶対に対して御馳走さま〜を言って店を出たら、店前のガードレールに鉢植えが並んでいた。

そこには小さい灰色の実がついた植物や黄色いパプリカみたいなのがついたものが置いてあった。

「へぇー香辛料をここで育ててるんだね」と仲間と話しながら店の方を振り返ってみると、それは完全に隣の花屋の鉢植えだった。

空腹の砂漠の中に現れた原色の強すぎるオアシス。
インドカレー屋の鮮やかな看板に目を奪われて駆け込んでいった私たちには、手前にあった花屋の存在など知覚出来ていなかったようだった。

そして道端の鑑賞用としては少し物悲しい風合いの鉢植えたちと、インド人カレー屋。
探偵は簡単に騙された。オアシスの発見に喜びすぎていた。

失敗を失敗のままにするから失敗なんだ

という誰が言っていたかわからない名言が頭に浮かび、

「まぁ香辛料が日本のこんな道端の気候で育つわけないよな」と言って互いに傷つけ合わないような会話を私たちは丁寧にし、完璧に自己保身をしてその場を後にした。

帰り際、紫色の服を着た坊主の女僧侶が国道を信号無視していた。
「女僧侶が国道を信号無視しているね」という、そのときはもう現状の説明から越えられない会話をして、現場に帰った。

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