春が終わる

桜でんぶと錦糸卵は吹き攫われた。
春の終わりに吹く風はとうぜん春の色をしている。風は季節の色を奪っていく。
そしてどうやらこれが春の最後の風のようだった。
わたしは残った地味いなちらし寿司を覗き込んでいる。そのあいだにも雲は徐々に入れ替わり夏の色はめきめきと芽吹いていく。

視線を上げたときにはもう、いつも季節になっている。

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