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最後に眠る係り
冷蔵庫の扉がゆっくり閉められていっていた。まだ扉は微妙に開いている。でももう奥の、冷蔵室のスライスチーズなんかはかなりの暗闇のなかだった。ゆっくり閉まっていく。卵が6個、6個4/1、6個2/1、7個8個、暗がりに消えていく。
いつしか冷蔵庫の灯りが消えた。
いま、外の光が7ミリ幅で差し込んでいる。
扉のいちばん手前側には甘口の焼肉のタレがあった。いつもタレが最後に眠る係だった。いちばん暗い夜をタレ以上に知る食べものはここにはなかった。
『おやすみモランボン』
えっ
2ミリの光のほうから声がした。
驚きに振り返る前に扉はじんわりと閉まってしまった。なんだったんだ。暗闇のなかタレは目をつむった。左肩あたりに残る声色の波紋をしずかに感じていた。
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