色仕掛けで勝つ美味しんぼ

鮭の脂を唇に塗る色っぽい仕掛け。
紅すぎず、けれど薄すぎない絶妙に女性性の紅潮を表すのならば鮭の油が一番だ。
テカりも、自然物の脂のテカりなのだからそれが不自然に見えるわけなどない。
艶、とはこのことなのだ。

そうやって、食べ終わった鮭の焼き魚皿に残った脂を小指にとると、唇に塗った。これから男と会うのだ。
3点しかテーブルに接地していない皿は指を乗せるたびにカタカタと鳴った。
最後に鮭の皮を唇で挟んで「んーまっ」と仕上げれば、目はまさに雌の鮭になっていた。

今夜、海原雄山と勝負なのだ。


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