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登記申請書類の自動生成サービスと司法書士法(2)

あめにきのオフィスのnoteでは、スタッフが仕事をしてきたうえで気がついたことを、書いていきます。
4月の月曜日には、司法書士法について書きます。(4月に書きましたが、7月にアップロードしています)

登記申請の書類をネットで自動生成するサービスについて、司法書士法に抵触するおそれがある、という国会答弁がされました。
これについて、前回に引き続き、詳しく見ていきます。

前回の答弁には、続きがあります。

第211回国会衆議院 予算委員会第三分科会第2号 令和5年2月21日

○塩崎分科員 明確な答弁、ありがとうございます。
 次に、オンラインの登記書類作成においては、法定相続人が誰かということを確定するというのが非常に大事になります。例えば、戸籍謄本を代行取得した結果、当初想定していた法定相続人とは違うかもしれない、こういったことが起き得るわけでございます。
 こうしたオンライン事業者においては、戸籍謄本を確認した上で、法定相続人が当初の想定と異なるかどうか、これを確認して、その結果次第で対応フローを変えるというふうになっております。
 しかし、ここで考えてみますと、相続登記申請において、被相続人との関係で法定相続人が誰か、これはまさに法的な評価ではないかということでございます。戸籍謄本の正確な読み取りと同時に、民法の各規定の解釈、そして個別具体的な事案への正確な当てはめ、こういったことがなければ正しい判断をすることはできないわけでございます。
 そこで、法務省にお伺いします。
 戸籍の記載から親族関係を読み取って民法に当てはめ、具体的に法定相続人を確定していく、こうした作業は法律事務に当たって、司法書士法に抵触しないのか、お答えください。

○金子政府参考人 これも一般論としてお答えいたします。
 民間事業者が、サービス内容の一部として、登記申請を行おうとする依頼者に関係する戸籍の記載から法律上の親族関係を読み取った上で、民間事業者の判断で法定相続人を特定し、その判断を前提として登記申請書類を作成したような場合に、その対応が、民間事業者において依頼者に代わって申請書類を作成したと評価されるようなものであれば、司法書士法第三条第一項第二号に違反するおそれがあるものと考えられます。

ここでは、戸籍謄本のチェックについて検討しています。
特殊な戸籍でない限りは、戸籍謄本を取り寄せて読めば、誰が法定相続人であるかは一義的に掌握できます。ゆえに、法定相続人割り出しは、事実的あてはめであるとも解することができます。
しかしここで、法務省民事局長の答弁によって、一定のラインが示されることになりました。

・戸籍の記載から法律上の親族関係を読み取った上で、
・民間事業者の判断で法定相続人を特定し、
・その判断を前提として登記申請書類を作成したような場合に、
・その対応が、民間事業者において依頼者に代わって申請書類を作成したと評価されるようなもの

であれば、司法書士法に抵触する可能性がある、としています。

そうすると、士業者以外が行っている戸籍取り寄せ代行サービスや、戸籍画像認識・出力加工サービスは、それらにとどまる限りは、司法書士法に抵触しないことになります。しかし、当該サービスによって得られた結果を登記申請フォームの入力に直結させると抵触可能性がありそうです。
ただ、民事局長答弁では「法律上の親族関係を読み取った上で、民間事業者の判断で法定相続人を特定」とあるので、親族関係の読み取りだけでは司法書士法抵触の要件としては足りず、法定相続人の特定までが必要である、とも読めます。
(通常は、法定相続人の特定は一義的に可能ではあります。)

答弁の続きをさらにみてみます。
こちらは、東京都司法書士会の声明にいう

・個別具体的な事案を前提に登記申請書類の作成に関する相談を受けて回答したり、助言したりして、登記申請書類の作成にあたって依頼者からの相談に応じたと評価されるような場合

に該当する部分です。

○塩崎分科員 ありがとうございました。
 もう一つお伺いしたいと思います。
 こうしたオンラインサービス事業者においては、往々にして、フォームに入力をしてもらうことに加えて、個別のフォローアップサービス、電話やメールでのフォローを行っているということでございます。
 資料二、こちらを御覧ください。
 こちらは、ある事業者のホームページからの抜粋でございますが、サービスを使ってみたユーザーからの声ということで、ユーザーレビュー、これが載っております。こちらを少し紹介をさせていただきます。
 五十代、埼玉県の方でございます。電話するたび、分かりやすく簡潔に解決できて本当に助かりました。こういうふうに書いてあります。
 六十代、東京都の方。法務局からの追加書類の相談で連絡した際にも、すぐに対応していただきました。ありがとうございました。こういう記載があります。
 六十代、栃木県の方。書類の書き方の説明や附箋紙で印があったので、スムーズに書き方ができてよかったです。こういった話があります。
 静岡県の方。この度は、何も分からない私に丁寧に説明のメールをいただき、メールで分からない点を電話した際には丁寧に教えていただき、ありがとうございました。
 このような次第で、こちらのユーザーレビューの結果からしますと、まさに個別事案に基づく細かなフォローアップ、指導、アドバイスを行っていることが強く推認されるわけでございます。
 そこで、法務省にお伺いしたいと思います。
 こちらのユーザーレビュー欄の記載にありますように、仮にこのサービス事業者が、個別の登記申請書類の作成に関して、具体的な事案に関する利用者からの照会に応じたりサポートをしたりしているとすれば、これはまさに、司法書士法三条五号に定める登記申請書類作成の相談に応じていること、この業務に当たることは明確ではないかと思いますが、こうしたサービスの提供は司法書士法に抵触しないかどうか、お伺いしたいと思います。

○金子政府参考人 これも一般論としてお答えいたしますが、民間事業者側が、個別具体的な事案を前提に、登記申請書類の作成に関する相談を受けて回答したり助言したりして、その対応が、民間事業者において登記申請書類の作成に当たって依頼者からの相談に応じたと評価されるようなものであれば、司法書士法第三条第一項第五号に違反するおそれがあるものと考えられます。

議員が紹介しているユーザーレビューだけを読むと、これがもし無資格者の行為であれば明らかに司法書士法違反です。
ただ、フォーム入力によるオンラインサービス事業者が、そのフォーム入力に対して個別フォローをする、というのは、よくある話です。最近ではAIフォローも多いです。
「入力画面にいるが先に進めない」というものから、「何を入力すればいいのかわからない」というものまで、電話等による相談ができることが多いです。

相続登記申請書のオンライン作成サービスで、「ここの相続人の欄には何を入力すればよいのか」というたぐいの質問に答えることが、司法書士法に抵触するのであれば、当該サービスは利用者に対してずいぶん不便を強いるものにならざるを得ません。
「それは答えられないのでお客様の判断でご入力ください」「私どもで調べることができませんのでお客様がお調べになってご入力ください」という答えが続出すれば、利用者もウンザリすることになります。

次回に続きます。

*個人事業主や法人成り会社あたりの規模の経営者の方は、労務・広告・法務・経理、さまざまなサポートについて迷うこともあると思います。
ぜひ、「あめにきのオフィス」にご相談ください。(このnoteを書く最大の目的は、もちろん広告です。)

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