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ITコンテンツ業界の労務(4)フレックス制その3

あめにきのオフィスのnoteでは、スタッフが仕事をしてきたうえで気がついたことを、書いていきます。
毎週月曜日に更新する予定です。

前回のつづきです。

今回は、フレックス制で置きがちな問題点についてみてみます。

まず、総枠時間に対して労働時間が足りない場合です。
フレックス制では、会社が1か月の労働時間枠を決めて、その枠の中で従業員が実際の労働時間を決めて働く、という制度です。そうすると、当初に決めていた労働時間枠よりも実際の労働時間が足りなくなることが、起きる可能性があります。
もともとの仕事量が少なかった場合もありますし、従業員が効率的に仕事を進めた結果として労働時間が短く済んだ場合もあります。
この場合、賃金については、当初に決めていた労働時間枠をベースに額を計算して支払ってもいいのですが、多くの会社は、実際の労働時間をベースに額を計算する、つまり当初予定の枠より実際の労働時間が短いときには、その仕事をしなかった時間の給料を支払わない、という制度を選択します。つまり、控除です(控除できますよと言えば、ほぼすべての経営者は控除を選びました)。
控除は従業員に不利な制度なので、労使協定で定めることになります。

さて、控除が定められるとどうなるかといえば、従業員が仕事場に居続けることになります。
早く帰れば給料が下がるわけですから、それを避けるために月末にダラダラ長時間仕事をすることになるのです。

この対策として、社労士や弁護士から、勤務時間が一定以上不足した場合にはその従業員をフレックス制から外す、また、月末の勤務時間が一定を超えた場合にはその従業員をフレックス制から外す、という労使協定を結ぶことを提案されることがあります。
しかし、これをしてしまうと、業務を効率化した(という自信を持っている)従業員や、ある時期に業務量が減るような部署の従業員、またもともと月末の勤務時間が長くなる部署の従業員から、不満が出ます。
その結果、労働時間調整のために、従業員が月初めから多めに勤務することとなり、長時間労働の常態化の原因となります。

また、フレックス制の問題点として、残業(早出、居残り)を命じにくい、ということもあります。
そもそもフレックス制は、従業員にも不利益(当日の残業手当が出ない)が発生するかわりに従業員に勤務開始終業時刻を決定させている、という制度ですから、会社が残業を命じることはできないはずです。しかし上司が現状や要望を伝えて、従業員のその日の予定退社時刻よりも後になる仕事を依頼することは、できてもよさそうです。
上司と部下という上下関係があるなかで「依頼」が「命令」とみなされることはあるにせよ、この残業命令については、従業員の側からの不満が出やすいところです。
これについては、労使協定であらかじめ、一定の場合に残業を命じることができる、と定めておく必要があります。もちろんこの場合には、先に挙げた「月末の勤務時間が一定を超えた場合にはその従業員をフレックス制から外す」規定の例外とすることとなります。
また、一定の場合というのが漠然とした文言にならないように、例示規定とする(「クレーム処理、重大アクシデント、その他の場合」など)と、従業員の不満は減ると思います。

次回に続きます。

*個人事業主や法人成り会社あたりの規模の経営者の方は、労務・広告・法務・経理、さまざまなサポートについて迷うこともあると思います。
ぜひ、「あめにきのオフィス」にご相談ください。(このnoteを書く最大の目的は、もちろん広告です。)

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