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小銭スパイラル

 2023年1月7日

 小銭が多すぎる.過去一番多い.一円と十円が三十枚ぐらい入ってるし,五円玉が五枚もあった.ダイソーの赤い小さなポーチを財布代わりにしているのだが,ぎっちぎち.ポーチを振っても小銭の音がせず,ぶんぶんと一個の鈍器のように風を切るのみである.ちなみに落としてもいいように安い財布にしたのに,それ以降,一回も落としていない.

 大分前にも書いたが,これには原因がある.まず,物を買う.その際,レジで,お金を出すのに手間取り,店員さんの視線を感じてしまい,気まずくなる.「あなた待ちですよ」という雰囲気を全身で受け,焦ってどんどん手が空振る.後ろに並んでいるお客さんがいれば,もう逃げ場などはない.

 慌てなくて大丈夫ですよと何やら別作業をしてくれる店員さんもいる.だが,それはそれで申し訳ない.「あなた待ちですよ」から遠ざかろうとしてくれることで,僕待ちであることが,余計に強調され,恥ずかしくなる.


 そんで,これらを回避するために,パッと取り出しやすい紙幣や大きい硬貨を出して済ませてしまう.店員さんにも後ろのお客さんにも誰にも迷惑を掛けなかったという安心と引き換えに,小銭がどんどん増えていく.その安心だって,主観的なものにしか過ぎないのに.もう一の位だけでもいいから,各々硬貨を作って欲しい.三円玉や七円玉など.

 そして,現在,「小銭がいっぱいあるからうまく取りだせない→パッと紙幣を出す→小銭が増える」のスパイラルに陥っている.小銭スパイラルと名付けた.過去一番のスパイラルに見舞われている.

 だがしかし,救世主は存在する.セルフレジだ.

 ああ,貴方を見つけた時の感覚は,生まれる前から知っていたような気がします.そうそれは,集合的無意識のような,誰しもに備わっている,生きとし生ける同志達への無償の愛.僕のような人間に向けられたるは,原始的なぬくもりでした.安堵に次ぐ,安堵.僕は今,貴方のおかげで,誰にも迷惑を掛けずに,心置きなく,財布から小銭を取り出せますと,心で呟いているのです.

 本当にありがたい.あとセルフレジの機械は,スーパーなどでは,群衆となって存在していることが多い.そのおかげで,僕が遅くても,回転率が乱れにくくなる.

 そして,十円を五円一枚,一円五枚で払ったりなど,小銭を減らすこともできる.ただこの行為,セルフレジの愛に付け込んだ狡い悪行のような気もして,あまりしないが,したことはある.実は今日やってしまった.なので,スパイラルは脱した.ああ,二度と消えない欲の烙印と引き換えに,とか言ってもきっとすぐに忘れてしまうだろうな.

 罪悪感を免罪符にしている,最低な人間がここにいる.


 セルフレジへの思いを書いてみたが,一口にセルフレジと言っても,いろいろある.幾度となく,現金不可に引っかかった.うぬあ,罠だぁ,撤退!結局,普通のレジで,どたどたさせながら払う.あと,セミセルフレジ.セルフレジの皮を被った化け物だ.機械操作の拙さも相まって,とんでもなく焦る.

 PayPayなどをやればいいだけの話なのだが,なんとなく敬遠してしまっている.これはなんとなく.スマートフォンで,未だにフリック入力せずにタップ入力をしているのだが,これに近しい.


 昨日は,縁というライブとバカ爆走という事務所ライブに出させていただいた後,松井咲子の爆笑クレッシェンド 事務所対抗戦という生放送に出させていただいた.去年,人力舎回で気絶しつつも勝ち抜いたので,人力舎代表で出た.そして,なんとか優勝した.今日は,E-3寄席というライブに出させていただいた.

 なので,昨日の夜,会場から近いソラマチで,三人で天丼を食べた.それそれは美味しい天丼だった.追加で,僕はタコポン酢和え,新井さんは白子の天ぷら,柿田さんはアボカドの天ぷらを頼み,三人で分けた.全員,無心で食べ進めた.

 僕はソラマチのようなショッピングセンターのレストランで何かを食べる経験がほとんどなかったので,新鮮だった.一応,テーブルに敷いてあった紙のランチョンマットを家に持って帰った.飾ろうと思っている.


 スカイツリーは生えているようだった.空に伸び,誰からも見える,目立つ塔.生命力を感じながら,その堂々さを少し見習おうと思った.



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