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プレゼント選びは大仕事

 2023年3月30日

 新井さんに約二ヶ月遅れで誕生日プレゼントを渡した.猫が三匹ぐらい刺繍してある半袖シャツ.しょっちゅう服が欲しい,服が欲しいと連呼していたので服にした.柿田さんはきちんと誕生日に渡していて,プレゼントは服だった.渡すことができてようやく肩の荷が下りた.こんな表記をしたら誤解を招きそうだが,誕生日などのプレゼント選びが本当に苦手なのだ.


 僕には何をあげたらよいのか全く思いつきません.相手が何を欲しがっているのかなんて分からないのです.遠回しに聞く芸当もできなければ,直接聞く潔さもないのです.だから,僕にはプレゼントを渡さなくていいですから,僕からのプレゼントも無くしてよいですか.

 と声高に言いたくなる.でも,それはよくない.仮に自分がもらえなくても,相手には渡した方がいいと思う.プレゼントは,単純なギブアンドテイクではなく,もっと複雑な気がする.なんかこう,優しさというか人としてというか.上手く言語化できない把握しきれない何かがあると思う.そして,把握しきれていないから,僕はプレゼントをあげることが苦手なのだとも思う.

 やれと言われたことは狂ったようにできるのだが,プレゼントをあげるというような自分で考えないといけないことが苦手なのかもしれない.ここだけ書くとすごくダメ人間のような気がする.いや,お前はダメダメのダメ人間だろうよ.ダメ人間ってポップなようで辛辣.


 ネットでどんなプレゼントが良いか調べてみる.それでも,全く思いつかない.思考停止状態でネットの海をさまよっていた.20代の人が貰って喜ぶものとか,僕はこれ貰っても嬉しくないなぁとか思っちゃう.なんなんだよ,お前は.お前が貰うんじゃないんだから,相手基準で考えろ,ばかたれぃ,と思いながら,結局何も思いつかなかった.

 なので,正直,今回の新井さんへのプレゼントにおいて,誕生日に柿田さんが服をあげていたという事実から,僕も服にすれば失敗はないと思ったけれど,しょっちゅう服がほしいと言っていた事実もあるから,僕はプレゼントとして服を選びました.

 誰かに言い訳するかのように,新井さんにプレゼントを渡した.これが,新井さんというある程度,親しい人だったからまだ良かった.微妙な距離感の人に渡す場合は,もっと悩む.僕の指す微妙な距離感とは,好きな人の誕生日プレゼントの事を指す.


 付き合っていない状態であっても,好きな人から誕生日を聞いてしまうと,誕生日付近には何か用意しないといけなくなんじゃないかと思う.別に用意しなくても問題は無いし,相手ももらえるなんて思っていないだろう.でも,相手はなんか引っかかっちゃうんじゃないかと思う.別に貰えるとは思ってなかったけど,誕生日の話はしたよなぁと.うっすらね,うっすら,思っちゃうんじゃないかとすごく心配になる.

 そしてそれは,大きなプレッシャーとなる.間違いは断じて許されない!プレゼントのセンスで,与える印象は大きく変わる!幸も不幸もお前次第!嗚呼,神よ,我にセンスを!ぐぬぬ!まったくもって都合のいい神頼み.

 めくるめく悩みの中,僕は,ある一つの答えを導き出した.あげるものを一つに決めよう.そして,誰かに出会い,困ったらそれをあげよう.

 そうして,僕は,好きな人には,もはや好きな人という範疇を超えて,それ以外の関係の人でも,困ったら紅茶とジャムをセットであげている.これはロシアンティーセットで,ジャムを紅茶に入れて飲んだら美味しいよ,と説明している.いつも同じ説明をする.貰った人はみんな半笑い.だから,もしかしたらもっといいプレゼントがあるのかもしれない.でも,思いつかないから,仕方ない.

 これは最終手段であって,一応,限界まで考える.それだけは忘れないでほしい.すぐにほいほいと渡しているわけではないし,ジャムも毎回,その人が好きそうなものを選んでいる.僕は一体に何に対して言い訳をしているのだろうか.


 そんなこんなでプレゼント選びというものは僕にとって大仕事となる.それができる皆はすごいと思う.柿田さんとかすごいと思う.去年の新井さんの誕生日,柿田さんだけが誕生日プレゼントを用意してきた.

「抜け駆けずるいですよ!用意するならするで言ってください!僕だけすごい失礼な人じゃないですか,柿田さんは悪い人だぁ」

と僕は柿田さんに言った.すると,新井さんが

「いや,元々用意する気がなかった人の方が悪いだろ」

と言った.ぐうの音も出ない.完膚なきまで僕が悪い.いや,用意するという発想がなかった.う〜ん.その後,かなり悩んだ挙句,駄菓子と目の疲れを取るアイマスクをあげた.いろんな人にセンスがないと言われたけれど,結構考えたつもりだった.


 誕生日プレゼントをさりげなく,ちょうどよいセンスで渡せる人を見た時,この人はできる大人だなと思う.

 そして,なんだかんだ言っても,プレゼントって貰えると嬉しい.


 あと,去年の僕の誕生日に,柿田さんは僕が欲しがっていたリュックをプレゼントしてくれた.嬉しくて使っていたら,いろんな人がリュックを褒めてくれる.すると,柿田さんが「ぼくがあげたんです」と言う.皆は「センスがすごくいいね」と柿田さんを褒める.でも,このリュックは僕が欲しがっていたものであり,センスがいいのは僕なのだといつも思った.でもわざわざ口に出すと,僕がださくなる.だから,言わずに我慢した.歯痒かった.






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