隙間みたいな日々

　2023年7月18日

　昨日は「100」というライブに出させていただいた．今日は一日中，大学にいた．日常のつなぎ目みたいな日々だった．隙間．

　僕の卒業研究は新聞データをテキストマイニングという手法を用いて分析するのだが，僕のパソコンはおろか，研究室のパソコンでさえも，新聞データの容量が大きすぎて，テキストマイニングのツールが応答しない．本当に困った．

　昨日，十三時に会場のシアターマーキュリーに集合だった．電車が遅延したため，歩くであろう場面は全て走った．ギリギリ間に合った．楽屋で坊屋さんにお会いしたが，ますます僕の後輩に似てきていた．特に口元が似ていた．

　出番を終えると，人間横丁のお二人と江戸マリーの角井さんとえびしゃの中村さんと僕らでご飯を食べることになった．なんという不思議なメンバー．スパゲッティを食べることになった．その前にZARAへ行ったが，自分の格好と周囲のお客さんの格好に差がありすぎて，恥ずかしくて隅にいた．でも，一緒にいた中村さんのリュックから掃除用具の柄が二本飛び出していて，少し心強かった．

　えびしゃの中村さんは，どうやらフジテレビにADとして就職する予定だったが，それを蹴って，芸人になったらしい．そして，僕の高校時代の陸上部の先輩であり，今フジテレビのアナウンサーである松崎涼佳さんと同期であったらしい．こんなつながりもあるもんだ．すごい．ただ共通の知り合いがアナウンサーであるということが，特殊すぎて引っかかる．高校時代，呑気に涼佳先輩と呼んでいたが，もう恐れ多くて呼べない．でも，いつか共演できるように頑張ろうと思った．

　スパゲッティは美味しかった．外で食べる料理は，自分で作れないものを基準に選ぶ節があるため，基本スパゲッティなどは選ばない．なので，久しぶりにお店のスパゲッティを食べた．麺の硬さから違う．味付けも均一で，偏っていない．具もたくさん入っている．家で食べるよりも，断然美味しい．

　その後，皆で話していたのだが，会話のスピードについていけず，変なタイミングで相槌を入れたり，分かっていないのに反応したり，前後に関係ない話をしたりと，すごい変な感じになってしまった．たぶん，疲れていた．でも，人間横丁のお二人も角井さんも中村さんも優しくて，笑ってくれた．行き詰まったら，キャンパスノートに手の絵を大量に書く僕の癖についての話なんて誰が聞きたいんだ．本当に申し訳ない．

　帰り道，BOOKOFFに寄った．筒井康隆「ヨッパ谷への降下」，首藤瓜於「脳男」，北村薫・宮部みゆき編「名短篇，ここにあり」の三冊を買った．いつもだったら，感情が前面に押し出されている作品を買うのだが，なんとなく物語が強い作品が読みたくて，この三冊になった．今まで筒井康隆の作品を読んだことがなく，すごく楽しみだ．本当は山本文緒の作品も買おうかと思ったが，まだそのタイミングじゃないかなと思い，止めた．

　電車の中で，ぼけーっと突っ立って，目を動かしていた．ふと右薬指にはまるぶかぶかの指輪が目に入った．何故ぶかぶかなのだろうか．たまに，こういうちょっとした違和感がすごく気になる．理由を考えていたら，いつの間にか三鷹に着いていたので，急いで降りた．

　こういう何らかの状況を経た結果だけ見ると，納得のいく理屈でないんじゃないかなと思うけれど，実際にその結果までの過程を全て見ると，納得のいく理屈であったりする．

　前に，暗くなったTully'sCOFFEEのドアのメニュー表の前で，電話越しに「えっと，左下がマンゴータンゴスワークルで…」と真剣に伝えている人がいた．夜も更けて，Tully'sCOFFEEのメニューを誰かに電話越しで伝えることも，ここだけ見てみると，まったくもって意味が分からないが，ここに行き着く過程も含めて見てみると，納得のいく理屈があるのだろう．うん，いや，うん，まあ，これに関しては，さすがに無い，かもしれない．

　デスゲームか脱出ゲームかなんかに巻き込まれた人が，テレホンチャンスなどで友達にTully'sCOFFEEのメニューを確認してもらっているのかと思った．でなければ，夜十二時近くに，深刻なトーンで静かに，一人で真剣に，Tully'sCOFFEEのメニューを電話越しで誰かに伝えないだろう．変なの．