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映画『ミッドナイトスワン』を観てきた。また観に行く

ごきげんよう。雨宮はなです。
友人が「観といてよ。で、感想きかせてよ」というものですから観てきました、『ミッドナイトスワン』。
※注意:ネタバレ含む

何も知らずに観に行って出会った傑作

劇場公開がスタートしたのはなんと、2020年9月25日!
そんなに前だったっけ?と疑ってしまいましたが、ハロウィン前にあるお店でオネエの方が「『ミッドナイトスワン』観てきた。つけまが取れるほど泣いた」って話してたのを覚えているので、間違いないことを確信。かなりのロングラン上映という事実に気づき、驚きました。

予告編も観ず、公式ホームページを確認もせず、いっさいの前情報無しで観ました。メインヴィジュアルで主演が草彅剛さんであること、LGBTQが要素として含まれていることはわかりましたが、物語展開などは全く知らずに行きまして…結果としては大正解だったと思います。

社会の闇と書いて”現実”と読む

この作品、おそろしく”現実”が切って張ってされていると終始ゾワゾワしていました。LGBTQの方々については知り得ませんが、水商売シーンでの出来事や親子関係、学校での出来事、それに田舎事情に至るまで…誰か一人の、とはいかなくてもたくさんの誰かのエピソードが次々と展開されているような感覚になります。

あまりにも衝撃的だしスクリーンの中で起こっていることだから「これは作り物だ、ドラマなんだ」と思う人がほとんどだと思います。むしろ、そんなことすら考えもしないでしょう。特に、未成年モデルの撮影会や男性風俗のシーンなんかは。
でも、この「社会の闇」なんて言われるようなものって”現実”なんですよね。実はいくらでもその辺に転がっていて、見ないで済んでいるのはただの幸運でしかなくて。映画を観ながら”現実”を扱ったシーンの多さとそれが連続することに驚きました。

原作版と違うラスト

観終わって劇場を出てすぐに、件の友人に「観た」と報告。「もう一回観たいって言ってたよね?いつ行く?」と付け足しました。そこから少し続いたやり取りの中で教えてもらったのですが、原作小説とラストが違うと。原作版では浜辺で踊るシーンで終わりなのだと。

「イチカが海に入っていくシーンは最悪のパターンを予想させる」と友人も話していましたが、本当にその通りです。「映画版は希望を持たせるエンドになってるよね」と言われ、”映画版”であることをとても良く活かしているなぁと感心し感謝しました。
原作をいじりすぎるのは好きじゃありませんが、”映画版”だからできる表現や解釈があるし伝えるものも選べるというのが持論です。

決してお涙頂戴ではなく、安っぽい闇”風”演出でもない

脚本にも演出にも演技にも、決してお涙頂戴要素はありません。扱っている内容やエピソード的にどうしても「ほら、これが観たかったんでしょ」「どうですか、素晴らしいでしょう、感動したでしょう」という意識が透けるどころか押し付けられそうなものですが、逆に驚くほど全く無いのです。
「あぁ、こんなことがあったんだな」「今、彼女にはこう見えているんだな」としか思えない、自然さが素晴らしかった。

演技・役者については冒頭こそ、「草彅剛さん、ヘアメイク似合うなー」とか「顔に手を持っていくときの演技、きちんと指導されてるんだろうなー」なんて思いますが、あっという間にナギサというひとりの人間しか見えなくなります。冒頭こそ「演技は期待できないなぁ」とか「なるほど、『スクール・オブ・ロック』形式で選ばれたのね。バレエシーンはすごい」なんて思いますが、あっという間にイチカというひとりの人間しか見えなくなります。

また、社会的な関心を含んだ作品はやたらと暗くされたり、重いものとして取り扱われますが、この作品は等身大のジオラマのように出来ているので、暗いし重いのだけど必要以上にそれを感じることなく観ることができます。こんなことがあるんだ、と線引きさせるのが上手です。ただどうしても、線引きしきれないで感情が寄り添ったとき、入り込んだ時に泣けてくるのでしょう。頂戴しなくても涙する作品です。

まとめ

また観たい度…♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
原作小説読みたい度…♡♡♡♡♡♡♡♡
ディレクターズカット版は無いんですか度…♡♡♡♡♡♡♡

映画『ビバリウム』に続き、「~で語る」をしたい内容が多すぎるので今後展開していきます。語る内容が多すぎる。近々もう一度観てこようと思います。『ビバリウム』より優先度上げてます。

以下、語ろうと思っているトピックの一部です。
☑ノンフィクションなのではと思えるほどの人物描写
☑母性は生物学的女性にのみ宿るものではない
☑LGBTQの社会的現実を表現
☑なにをもって”母親”なのか
☑オデットの背中

今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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