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【試写レポ】『生きててよかった』特別試写会【29_2022】

ごきげんよう。雨宮はなです。
今回はアクション映画『生きててよかった』を鑑賞してきました。公式さん、ありがとうございました。

今回は作品についてとイベント、そして試写会についてを語ります。
※今回は公開前ということを踏まえ、ネタバレのないよう頑張って作品について紹介します。

作品について

セカンドキャリアの難しさ

物語は現役ボクサーの主人公がドクターストップをかけられ引退し、一般的な正社員としての就職と結婚をもってスタートします。ここで描かれるのはセカンドキャリアの難しさ。主人公はボクシングですが、他の競技や芸術活動なんかにおいても「専門性の強い世界」から離れて一般的な社会で働くというのは、実は非常に難しいことなのだと認識させられます(対比的にヒロインが働くシーンがちょいちょいあるのがまた効果的なのです)。

興味深いのはその「専門性の強い世界」に生きていた人間の扱いが、外国人や元犯罪者と似たような感覚だということ。作品中、意図してか否か、主人公がセカンドキャリアにおいて教育(研修)を受けるシーンや自主学習するシーンはありません。しかし、ファイトクラブに通って以降に訓練をするシーンは見受けられます。誘った人間に「次はこういうスキルを身につけてください」とアドバイスされることもあります。

人間は自分で勝手に習得するもの、自分の努力で習得するもの、それ以外に分かれるものだなぁと強く感じました。「できない」の理由を本人に求めがちですが、「できる」ように導く人間のスキルや責任を感じる作品でもありました。だからこそ、ボクシングジムの会長のセリフが響くのです。

自分を構成する要素

主人公、ヒロイン、主人公の親友がそれぞれ自分を構成する要素と向き合うことになります。これは珍しいことだと思いました。主人公はがっつり、ヒロインは添え物程度に自分を見つめることはあっても、主人公の親友が自分と向き合うシーンに尺を割く作品はめったに見かけません。

「こうだと思ってた。だけど、それは違った。こうなんだ」という反省を三者三様に見せてくれる、ほったらかしがない。間に合わせにワーッとやるんじゃなくて、ちゃんと物語の中でしっくりくるようにしてある。観客がおいてきぼりになることもないし、冗長だなと感じることもない。
「自分を構成する要素は何か」と三度も問いかけて、その度に違う見つけ方と答えを用意して、飽きさせない。それどころか、観客自身にそれをさせるんだから”四者四様”なのかもしれない。これは、すごいことだぞ、と。

この作品における「愛」の定義

この作品が扱う「愛」というのが潔く”自己愛”なのが面白さをあげる一つの要因でしょう。しかし、それだけではないし”それが転じて他者への愛となりうる”こともあるのだと示してくれています。

主人公の母、ヒロイン、親友の妻といった「結婚した女性」が示しているものがそれにあたると感じました。けれど、男性が自己愛で完結していると主張するでもなく、女性のそれを押し付けるでもないバランスの良さに心地よさを覚えました。

”自己愛”といったけれど、「まずはしっかり自分を愛すること」の大切さが表れているようにも思えるのです。

トークイベントについて

自虐監督とフライング主演

マスコミ向けに行った二度の試写会の他、一般向けというのはこれが初めてだったそうです。当選してよかった!
監督と主演がいっぺんに登壇してくれる、贅沢な時間でした。お二人ともキャラが濃い!

監督のお話はだんだんと自虐路線に走り、でも、語り口がコミカルなので思わず笑ってしまう。主演は合図を勘違いして呼ばれる前にフライングで舞台上に姿を見せるというお茶目さん。
推せる、これは推せるぞ。作品だけでなく、中の人たちも素晴らしい。これは推せるぞ。(二回目)

アクションへのこだわり

たくさんのお話をしてくれましたが、やはりアクションへのこだわりが強く印象に残りました。主演の木幡さんが出演されている『レジェンド・オブ・ファイア』のアンドリュー・ラウとドニー・イェンの関係を例にどのような手法かを丁寧に説明してくださいました。簡単に言うと、作品監督とアクション監督は別にいて、アクションシーンの撮影時に作品監督は手も口も出さない(なんなら現場にいない)という信頼関係の下行われた撮影だそうです。

「みなさんが観ても理由がわからないであろうリテイクを重ねました」「このシーンはこだわりたかったので、スタントさんに依頼せず自分で受けました」「日本のスタントさんが優秀すぎる」など、興味深い話をたくさんきかせてくださいました。

試写会について

真ん中あたりの列で鑑賞していましたが、本編鑑賞中もイベント中も電子機器のライトがちらついたり、マナーモードの振動音で演出が邪魔されることはなかったと記憶しています。
トークイベントも和やかかつ興味がキープされた状態で進み、おそらく会場の参加者全員が「満足!」という表情で退出したのではないでしょうか。

神楽座での試写会に参加するのは初めてでしたが、普段は会議等に使われるホールのためか、各座席に引き出し式のテーブルがあるのがメモを取る人間としてはありがたかったです。

さいごに

ボクサーを描く作品は数多くあれど、ボクシングなどのアクションを楽しませながらセカンドキャリアに触れる作品は多くないように思えます。それを支える人との関係や、支える側の人間のドラマも濃厚で面白い。誰もが何かを持ち帰れるけど、無差別うっすい共感テロやマーケティング成果感動ポルノってわけではない。

スクリーンでの追体験することが自分のルーツをたどる助けになるかもしれない『生きててよかった』は、5月13日(金)よりロードショー!

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