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【試写レポ】『アンネ・フランクと旅する日記』オンライン試写会【11_2022】

ごきげんよう。雨宮はなです。
久しぶりのオンライン試写会でした。鑑賞のタイミング選べるし、雨が降っていても関係なし!とてもありがたかったです、映画.comさんありがとうございます!

今回は映画作品とそこから考えた内容、およびその後の特典映像について語ってまいります。

この作品における3つの特徴

この作品の特徴を述べるにあたって、次の3ジャンルで表すことができます。

①作風(手描きのようなデザインと重みのある色味)
②主人公設定(「キティー」という馴染みのないキャラクター)
③問題提起(現代の難民問題へ繋げる)

日本アニメの主流になっている「萌え」要素のない、人間らしさが重要視されたキャラクターデザインに、現実に近い色合いに近いカラーリングを施した背景なため現実に起こった物語であるかのような錯覚を覚えます。キャラクターたちを身近に感じることで、その後の問題提起の際「自分に関係のあること」と捉えやすくなるための工夫にも感じられました。

「キティー」というキャラクターは日本人であれば特に馴染みのないものだと思います。そもそも、「アンネの日記」を読んだ人が少ないでしょうから、彼女についての説明が何度も色々な表現であるのは非常にありがたいことです。また、アンネ・フランクがどれだけ知られていて歴史的に重要視された人物であるかも知ることができます。

アンネ・フランクとその家族たちが国内における難民であったことから、キティーが現代の難民と交流をもつシーンがあります。そしてそれが物語でも重要な展開をもたらします。ここ数日の世界的な問題や、私自信が先日『牛久』という映画作品を鑑賞したこともあり、もっと広く知られ向き合うべき課題が表現されていると感じました。(キティーの言動や義賊的な振る舞いに対しては良い印象がありませんが)

特典映像はむしろ必須なのでは…?

オンライン試写会では本編の後で、ある団体の代表者と今作の監督のインタビュー映像が特典として公開されていました。

代表者は「これを教科書的なメッセージとして受け取ってほしくない。ストーリー自体を知って欲しい。そして自分なりにメッセージを感じてくれたらうれしい」と述べていますが、日本の教育を受けた日本人(とくに若年層)には難しい期待だなと感じました。

また、監督はキティーというキャラクターを練るにあたって、ご自身の娘さんに意見を求めたりかなり参考にしたそうで、だいぶ本来のキャラクターとは離れていることが考えられます。実際、アンネが設定した人物像からはずいぶんと離れが思考や言動をとるキャラクターで、個人的には好みではありませんでした。キティーが本来の姿として描かれるのは、アンネとのやり取りのシーンだけで、現実世界で動いている間は「監督の娘」として観た方が自然な気がしました。

ということを踏まえると、特別映像は映画の冒頭に流すべき必須コンテンツのような気がしました。本編がそんなに長くないですし、それでよかった気がします。

「すべての人が尊重されること」

この作品のTwitter公式アカウントがPRツイートのひとつで発言していた内容です。

作品まで鑑賞しておいてなんですが、この作品が語れる内容でないと思いました。あくまで、私の考えのうえでは、です。
というのも、私はもともと「他人の手紙や日記を読むのはいかがなものか」という考えの持ち主です。これは自身の経験によるところが大きいのですが、「死人に口なし」を悪用している気がしてならないのです。

手紙は書き手が読み手にだけ読まれることを前提に書いたものであって、日記は本人が本人のために書いているもの。メールやラインも同じですが、最近はよくスクリーンショットでインターネット上に無許可で投稿されているのをよく見かけます。モラルの低さを感じるとともに、そこに疑問をもたない思考回路がつくられていることに若干の恐怖を覚えています。

何が言いたいのかというと、この「すべての人」というのは「いま生きているすべての人」だということです。死んだ人間に対する敬意があり、尊重されるのであればそもそも「アンネの日記」は出版されなかったことでしょう。

さいごに

ものものしいナレーションをいれたドキュメンタリーや、悲惨な出来事ばかりを再現したドラマ作品とは違い、あくまで日記という個人の視点から出来事を紹介しつつその時間を生きた人間の「考え」を反映させて当時を写した今作は”新しい”と感じました。

歴史的人物を追うだけでなく、追ったうえで現実にリンクさせることで「終わったことではない、常に意識するべき問題がある」と提示した点において素晴らしい作品だと思います。

そんな『アンネ・フランクと旅する日記』は明日、3月11日(金)よりロードショー!

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