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【ウイグル問題】わかりやすく解説~当事者による講演会の備忘録~

2021年7月31日(土)、都内でウイグル人の方々をお招きした講演会が開催されました。

スピーカーとして登壇されたのは、特定非営利活動法人 日本ウイグル協会 理事 ハリマトローズ氏、『在日ウイグル人が明かす ウイグル・ジェノサイド ―東トルキスタンの真実』著者 ムカイダイス氏、清水ともみ氏 著書『命がけの証言』に登場するムハラム・ムハンマドアリ氏です。

ウイグルで人権弾圧が行われているという話、一度は耳にした事もある方が多いのではないでしょうか。

ウイグルで何が起きてるのか

noteでも清水ともみ氏はとても有名ですね。

漫画で読むのはとてもわかりやすく、一人でも多くの方に読んでもらいたいです。

実際に何が行われているのかと言うと、新疆ウイグル自治区に住む大勢のイスラム教徒(主にウイグル人)が、中国共産党の「再教育」キャンプに強制収容されている言われております。

「再教育」という言葉だけ聞くと、残虐には聞こえないかも知れないですが、その中身は拷問や強制労働、強制避妊手術や中絶など、胸が痛くなる内容ばかりです。

「日本ウイグル連盟」会長トゥール・ムハメット氏は次のように述べています。

2017年に中国政府によって全ウイグル人を対象とした遺伝子検査(という名のDNA採集)が行われましたが、ウイグル人は敬虔なイスラム教徒で、お酒もタバコも吸わないため、内臓が健康的な方が多く、そこに目をつけた中国共産党はウイグル人の臓器を売買するというビジネスを始めたのです。
もちろん、自ら臓器提供の意思を示した人からではなく、強制収容所で殺されたウイグル人の体から臓器が取り出されます。生きたまま、麻酔なしに臓器を取られることもあるそうです。
現在、中国で臓器のドナーを探すと10日以内にドナーが見つかりますが、これらはほぼ殺されたウイグル人たちの臓器です。中国の臓器売買ビジネスは現在、年間3兆円もの売上があると見込まれています。
去年9~10月、ウイグル地域の電車・バス・飛行機などの公共交通網が止められたのですが、中国共産党はこの期間にも何十万人ものウイグル人を強制連行し、臓器を採取したという証言があります。
引用:世界ウイグル会議

これらの鬼畜すぎるとも言える行為、清水ともみ氏の書籍ではさらに詳しく知ることができますので、是非ポチっとしてみてくださいね。

本当に起きてるの?

このような残酷な事が起きてるんですよ!と言っても、デマじゃないの?ソースは?と言われる事も少なくありません。

本当に信じられないような残酷な話ですからね。

私たちは実際にウイグルに行って、その様子を見ることはできません。

客観的事実に基づき、当事者の声なども聞いた上で判断していくしかありません。

2021年6月11日、BBCニュースは「中国のウイグル族弾圧は「地獄のような光景」=アムネスティ報告書」の中でこのように伝えました。

「ものすごい人数が収容所で洗脳、拷問などの人格を破壊するような扱いを受け、何百万人もが強大な監視機関におびえながら暮らしており、人間の良心が問われている」

そして、拘束や拷問についても示唆しております。

専門家らは、中国が新疆地区で少数民族への弾圧を始めた2017年以降、約100万人のウイグル族などのイスラム教徒が拘束され、さらに数十万人が収監されているとの見方でほぼ一致している。
報道では、刑務所や収容所で身体的、心理的拷問が行われているとされている。
人口管理のため、中国当局は強制不妊手術や中絶、強制移住を実施しているとも言われている。宗教や文化に基づく伝統の破壊を目的に、宗教指導者を迫害しているとの批判も出ている。

拷問内容は極めて悪質で、聞くだけで吐きそうになるような内容です。

拷問の方法としては、「殴打、電気ショック、負荷が強い姿勢を取らせる、違法な身体拘束(「タイガーチェア」と呼ばれる鉄製のいすに座らせ手足をロックして動けなくするなど)、睡眠妨害、身体を壁のフックにかける、極めて低温の環境に置く、独房に入れる」などがあるとした。
タイガーチェアを使った拷問は、数時間~数日にわたることもあり、その様子を強制的に見せられたと証言した人もいたという。

BBCニュースだけではなく、様々なところでウイグルの人権弾圧に関する問題は取り上げられております。

米英独の3カ国は2021年5月12日、国連のオンラインイベントで、中国による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への対応を改めて批判したとロイター通信が伝えております。

また、アメリカ政府は2021年7月13日、中国の新疆ウイグル自治区で少数民族に対する強制労働などの人権侵害が多く報告されているため、同自治区に投資したり、サプライチェーンで連携している企業は「アメリカの法律に違反する危険性が高い」と注意を促しております。

世界の国々の反応

2021年に入り、中国の新疆ウイグル自治区に対する問題を「ジェノサイド」と認定する動きが次々とありました。

アメリカ政府は2021年7月13日、中国の新疆ウイグル自治区で少数民族に対する強制労働などの人権侵害が多く報告されているため、同自治区に投資したり、サプライチェーンで連携している企業は「アメリカの法律に違反する危険性が高い」と注意を促した。
引用:SankeiBiz
英議会下院は22日、中国の新疆ウイグル自治区で「少数民族が人道に対する犯罪とジェノサイド(民族大量虐殺)に苦しんでいる」と認定し、英政府に行動を求める決議を超党派の賛成で採択した。決議に拘束力はないが、英政界では中国の人権問題への不満が高まっている。
引用:日本経済新聞
欧州連合(EU)加盟国のリトアニアが、人権問題を巡り中国を非難する姿勢を強めている。議会は5月下旬、新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族の置かれた状況を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定する決議案を可決。政府は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関する経済協力などを進める枠組みからの離脱を表明した。
引用:東京新聞
米国、英国やドイツなど18カ国の国連代表部は12日、非政府組織(NGO)とともに中国新疆ウイグル自治区の人権状況を議論するオンライン行事を開催し、ウイグル族の人権侵害を非難した。一方、中国は「政治的な思惑があり、実際は中国を封じ込めようとしている」と反発した。
参加した米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「新疆では人間が拷問され、女性は強制不妊手術を受けさせられている」と指摘し「中国政府が新疆でウイグル族や他の少数民族に対してジェノサイド(民族大量虐殺)や人道に対する罪をやめるまで声を上げ続ける」と強調した。
各報告書などからジェノサイド認定が進み、対中制裁にまで発展しております。
引用:日本経済新聞
欧州連合(EU)は22日開いた外相理事会で、中国での少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害にあたるとして、中国の当局者らへの制裁を採択した。対中制裁は約30年ぶりで、同日付で発動した。ブリンケン米国務長官が同日から就任後初めて欧州を訪問するのに合わせ、協調姿勢をアピールする狙いがありそうだ。
引用:日本経済新聞
米財務省は22日、中国政府による新疆ウイグル自治区での少数民族への人権侵害に関わったとして、同自治区公安局幹部ら2人を制裁対象に指定したと発表した。在米資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。欧州連合(EU)、英国、カナダも同時にウイグル問題で対中制裁を実施した。
引用:時事ドットコム

最近では北京冬季五輪の話にも発展しております。

米議会の超党派組織「中国問題に関する米連邦議会・行政府委員会」(CECC)は27日、来年の北京冬季五輪の有力スポンサーである米企業5社を招いてオンライン公聴会を開いた。議員らは、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区で中国政府によるジェノサイド(民族大量虐殺)が展開されているにもかかわらず、スポンサー企業が営利を優先させていると厳しく非難した。
出席したのは、コカ・コーラとクレジットカードのビザ、民泊仲介のエアビーアンドビー、IT大手のインテル、一般消費財メーカー世界最大手のプロクター・アンド・ギャンブルの役員。
引用:SankeiBiz

北京冬季五輪に向けて、世界がウイグル問題に対しどのような意思表示をしていくか、注視していく必要がありますね。

日本の反応

日本の反応はと言うと、直近では企業の対応について記事化されているのをよく見かけます。

と言うのも、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)がまとめた報告書の中で「2020年3月に強制収容所に入れられたウイグル人が、自治区を含む中国全土の工場に移送され、強制労働を強いられている」件について、日本企業14社が名指しされているのです。

京セラ、シャープ、ジャパンディスプレイ、ソニーグループ、TDK、東芝、任天堂、パナソニック、日立製作所、三菱電機、ミツミ電機、しまむら、ファーストリテイリング(ユニクロ)、良品計画(無印良品)

これらの企業に対し、独自アンケートを実施した結果が公表されていました。

パナソニックは、メールに加えて電話も入れたが、答えはなかった。ソニーグループは個別の質問には回答せず、見解を説明する文書が届いた。
今後の取り引きに関する質問に対して、ジャパンディスプレイ、TDKは「強制労働の事実は確認できなかった」としながらも、直接、間接にかかわらず当該企業との取り引きを停止する方針を明らかにし、京セラは「親会社との取り引きを精査中で、見直しを検討する」とした。
ミツミ電機は過去に当該企業の親会社と少額の取り引きがあったことを認め、今後取り引きをすることはないとの方針を示した。
一方で、シャープ、東芝、任天堂、日立製作所、三菱電機、しまむら、ファーストリテイリング(ユニクロ)、良品計画(無印良品)は、当該企業との取り引きを否定し、今後の取り引きの可能性について明言を避けた。
引用:Yahoo!ニュース

2021年07月20日には時事ドットコムが次のような記事を出しています。

自民党外交部会などは20日、党本部で会合を開き、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害をめぐり意見を交わした。出席議員からは、来年2月の北京冬季五輪について「外交的ボイコットを検討すべきだ」「中国自体が五輪憲章に反する人権侵害をしており、開催地変更を働き掛けるべきだ」などの意見が出た。
引用:時事ドットコム

日本政府としてウイグル問題に対してジェノサイド認定を行った上で何か行動をするという話はまだ見受けられないですが、自民党内部では声が上がっている様子です。

遡って2021年3月24日にはこのような記事が出ております。

中国の新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって、アメリカやEU=ヨーロッパ連合などが制裁を科す中、政府は、制裁の実施には慎重な姿勢で、中国側と意思疎通を続けながら、状況の改善に向けた責任ある行動を強く促していく方針です。
引用:NHK「ウイグル人権問題 日本政府は制裁に慎重姿勢 責任ある行動促す

更に遡って2021年1月26日にはこのような記事が出ております。

米国務省が中国による新疆ウイグル自治区での行動を「ジェノサイド(大量虐殺)」と認定したことを巡り、外務省の担当者は26日の自民党外交部会で「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」との認識を示した。出席した自民党議員からは「日本の姿勢は弱い」などの指摘が相次いだが、外務省側は「人権問題で後ろ向きという批判は当たらない。関係国と連携しながら対応していく」と理解を求めた。
引用:毎日新聞「政府、中国のウイグル弾圧を「ジェノサイドとは認めず」 米国務省認定と相違

遡って見てみると、世界で続く中国の新疆ウイグル自治区に対するジェノサイド認定とは裏腹に、慎重な構えを見せていた日本政府ですが、2021年6月13日に閉幕した主要7カ国首脳会議(G7サミット)で採択された共同宣言を見てみると、「グローバルな責任及び国際的な行動」として新疆のことが明記されており、世界と足並みを揃えてこの問題に取り組むのではないかとも読み取れます。

中国に関して、そして世界経済における競争に関して、我々は引き続き、世界経済の公正で透明性のある作用を損なう非市場主義政策及び慣行という課題に対する共同のアプローチについて協議する。多国間システムにおけるそれぞれの責任の文脈において、我々は、相互の利益になる場合には、共通のグローバルな課題において、特に気候変動枠組条約COP26その他の多国間での議論で気候変動及び生物多様性の損失に対処するに当たり、協力する。
同時に、そうした協力をする際にも、我々は中国に対し、特に新疆との関係における人権及び基本的自由の尊重、また、英中共同声明及び香港基本法に明記された香港における人権、自由及び高度の自治の尊重を求めること等により、我々の価値を促進する。
引用:日本経済新聞「G7サミット 共同宣言の全文

しかし翌日、対中非難決議の今国会の採決見送っています。

自民、公明両党の幹事長と国会対策委員長は15日、国会内で会談し、中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害への非難決議について今国会での採択は困難との認識で一致した。
引用:日本経済新聞

今後の動きにも注目していきたいですね。

そもそもなぜ人権弾圧が起きてるの?

まずウイグルの場所から確認していきましょう。

Googleマップでは中華人民共和国と書かれておりますが、東トルキスタンという国なのではないかというところが問題ではあります。

ウイグルの過去の歴史について、少しおさらいしていきましょう。

ジャーナリストの福島香織氏が次のように解説してくれています。

清朝が征服したジュンガル・タリム盆地はその王朝末期の衰退期、その土地を取り戻すべく、チュルク系イスラム王朝の末裔たちが聖戦を仕掛けていた。
当時の世界情勢の混乱に乗じて、1933年にカシュガルで、東トルキスタンイスラム共和国の独立宣言が行なわれた。
だが、それを国際社会が認める前に、ソ連軍の介入によってあっけなく滅亡。その後の新疆地域は、ソ連の影響力を強く受け、1944年に誕生したアフマトジャンを指導者とする東トルキスタン共和国はソ連の軍事的支援を受けて成立した。
このままソ連の衛星国になると思われたが、ソ連は中国国民党政府との密約によって、東トルキスタンの支配権を外モンゴル・満州の権益とのバーターで売り渡してしまった。
その後、国民党政権との連合政権を経て、アフマトジャンおよび旧東トルキスタン閣僚によるイリ自治政府が一応、独立した政府の恰好をかろうじて保っていた。
国共内戦の決着がつく直前に、中国共産党政権はソ連との合意に基づいて、アフマトジャン率いるイリ自治政府に接触。
北京の協議に呼ばれたアフマトジャンと旧東トルキスタン閣僚が搭乗した飛行機がイルクーツク付近で墜落した。指導者と閣僚を失った政府は、そのまま中国共産党政権に飲み込まれてしまった。
その後は人民解放軍の進駐によって、反抗的なウイグル人を一掃した。だが、一度ならず独立国をつくった民族の抵抗が簡単に終わるはずもなく、血まみれの抵抗と弾圧、粛清が延々と続いたのだった。
引用:Yahoo!ニュース「なぜ弾圧? 知っておきたい中国政府と「ウイグル族」の歴史

歴史を見てみると、なぜウイグル人を弾圧してるのかが見えてきます。

つい最近の問題ではなく、問題自体が長い歴史を持っていることが伺えます。

なぜ日本人が知る必要があるのか?

ここまでウイグル問題について、その内容や世界・日本の反応等についてお伝えしてきましたが、「これって私たちには関係ないよね?」思う人も少なくないのが現状です。

対岸の火事のように見ていては、あっという間に日本が同じ運命をたどると言われています。

そして、普段私たちが何気なく着ている洋服。

おしゃれであればいい、とか、安くて品質が良ければいいとだけ思っていてはいけないのです。

着ている洋服が作られる過程を知った上で、選ぶ時代になってきているのだと私は思います。

拘束され、過酷な環境下で強制労働させられてる人の洋服が売れ続けていたら、、、状況は変わらないどころか深刻さが増すばかりです。

自分さえ良ければそれでがいいだなんて思ってないですよね?

ただ、こういった事実を知らないというだけなのだと思います。

不買行動を促すつもりもないですし、不買行動だけがジェノサイドの抑止力になるとも思っておりません。

しかしこういった事実があることを、私たちは知っておく必要があるのだと思います。

そして、少しずつ議論になっている北京冬季五輪についても考えていかなければなりません。

五輪に向けて練習を重ねてきた選手の方々の事を想うと心苦しい部分もありますが、このような事実がある国で五輪をする事に対して、心から喜べるのでしょうか。

非常に難しい問題ではありますが、一人一人がこの問題について調べ、そして自分の頭で考えた上で行動していく事が大切なのではないかと思います。

この記事が、そのきっかけの一つとなると幸いでございます。


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