愛について

現在時点のごく私的な話です。


 わたしが今まで書いてきた話は、ほとんど100パーセントが愛についての物語です。情には数多の種類がありますが、書いてきたのはとくに多くの情を包括した「愛」という概念についてです。
 リアルを生きるわたしは確かに愛のある家庭に育ち、愛のある友情を育み生きてきました。ただ、自分で書いてきたような恋愛はしたことがありません。恋愛、これはここ最近ずっとわたしを悩ませている難題なのですが、置いておきます。いくら考えても結論がでないので。
 愛って何だろう。このごろは会う人あうひとに尋ねてまわっているのですが、結局いちばん納得するのは自分の書いた話を読み返し読み終わった瞬間です。愛はすべて。そしてごく一部。かけらですらないのかもしれない。でも十全に生きる価値となる。そんなふうに強く思います。二次創作の畑の人間なので、書き始めるそもそものきっかけが好きなキャラクターを「しあわせにしたい」という純粋なものなのですが、その「しあわせにしたい」の行き着く先が「永遠に愛し愛される」ことなのは、どういうことなんでしょうか。愛されている、ということはわたしのなかで間違いのない幸福のかたちです。愛することもまたそうなのだろうと思います。

1 愛されること
 愛されることは間違いのない幸福のかたちです、と直前で書きましたが、はたして本当でしょうか。望まない人に愛されることは幸福でしょうか。仮に望んでいても、愛されることの弊害が愛よりも大きいものだった場合、貫くことは幸福でしょうか。
 自分が書いてきた話を振り返るに、好きなキャラクターは多くの人間に愛される人間であるということ、そして当人はそれに疎く、気づいた瞬間に幸福を実感する、という流れが多いように思います。これがわたしの書く話の最大のカタルシスです。わたしは大学の授業で、「ストーリーはハッピービギニング・ハッピーミドル・ハッピーエンドじゃおもしろくない」と学び、深く納得しました。ストーリーは大筋の一本のほかに並走する数本のストーリーがあるべきだし、起承転結があるべきだし、つねにハッピーでいてはいけないのだと理解しました。それらがすべて縒り合わさった結果、生まれるのがわたしの話における「愛される幸福」です。
 条件はさまざまあり、先に疑問を提示したように、愛されることのすべてが幸福につながるとは限りません。でもわたしは愛されることは幸福なのだと、こうして改めて議題にしなければ疑問視しないほど盲目的に信じていました。この子は愛されるべき、と、わたしは好きなキャラクターに対していつも強く願っています。
 オリジナルで書いた話に、主人公が片思いのまま終わる話があります。それでも彼には彼を恋愛としてではなくとも愛している友人がいます。また、一瞬でてくる女性キャラクターは恋人も友人の描写もありません。ですがそこには親からの無条件の愛情を含ませています。何もない、年をとるばかりの虚しさを感じる彼女もまた愛されているのです。前述したわたしの書く話におけるよくあるカタルシスとは流れが違いますが、そこはおそらく一次創作と二次創作の違いからくるものなんだろうと思います。
 そして愛される幸福がいちばんわかりやすいもののひとつに、恋人として結ばれるというかたちがあります。わたしが二次創作で恋愛ものばかりを書き続ける最大にして唯一の理由です。

2 愛すること
 恋愛する好きなキャラクター(推しとします。面倒なので)を書くとき、何より大切にしていることは、推しのバックグラウンドです。この子はどういうふうに生きてきたのだろう、得たもの失ったもの、辿った道筋、人間関係、そして愛されてきたかどうか。結局のところ二次創作なので正確なバックグラウンドなど知りようもないですが、出来るかぎり推しの人生をトレースするようにしています。愛されてきたキャラクターは愛されることを比較的すんなりと受け入れる、そうするとその享受された幸福はどのように発露に至るのか。愛されてこなかったのかもしれないキャラクターは愛されることに疎く、ではどのようにして伝え、受け入れさせるのか。そういうふうに肉付けしていきます。
 わたしの書く話の感情の配分はほとんど九割ほどが愛情に起因するものです。愛はごく一部、という表現もしましたが、それは前提条件に受け入れる素地のあるキャラクターの場合ということがあります。
 愛することは、難しいことです。誰のものも利己的な感情ではないと言い切れません。それでも無償の愛を信じるし、愛することを羨んでしまいます。わたしはきっと、自問自答しながらも今後もずっと「愛することを己に許す」瞬間の描写を続けていくんだろうと思います。

 愛し愛されること。わたしが小説ともいえない短編を書き始めてから十数年、揺らぐことなく支柱にあり続けるものです。
 今、プロットを立てているオリジナルの小説のことについて。頭のなかにあるそれらは、まごうことなく愛の物語です。現代の愛のかたちってあまりにも多様で、タブーってなんだろう、どこまでならば「愛」ひとつで片が付くのだろう、そんなことを考えています。それをわかりやすく形にするならきっとこれだろうと思い舞台を設定しました。もちろん、趣味趣向も多分に含まれています。
 ひとつ書きあがれば、その都度ここにアップしていきたいと思っています。それを読み、さらにはこれをここまで読んでくださった方には、すこし考えていただきたいです。よかったら、愛ってなんだろう、という問いに答えてもらえたらと思います。

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