見知らぬ手紙
静かな日曜の午後、陽介はポストの中に一通の手紙を見つけた。差出人の名前はなく、ただ「陽介さんへ」とだけ書かれている。封を開けると、中には一枚の便箋が入っていた。
「こんにちは、陽介さん。あなたのことを直接知らないけれど、この手紙を通じて少しでもお伝えしたいことがあって筆を取りました。」
陽介は驚きと共に読み進めた。
「毎朝、あなたが駅へ向かう姿を見かけます。道を歩くとき、時々小さな花壇の花に目を留めて、ふと微笑むその姿が好きです。仕事が忙しそうな日でも、ちゃんと周りを気にかけていることに気づきました。それがどれだけ素敵なことか、伝えたかったんです。」
誰が書いたのか見当もつかない。でも、心のどこかが温かくなる。
「私たちは、日々の生活の中で気づかないうちに、誰かに影響を与えているのかもしれません。あなたのその優しさが、私にとってとても大きな励みです。どうか、そのままでいてください。」
陽介は便箋をそっと畳み、しばらくの間、それをじっと見つめていた。
次の日、いつもの花壇の前を通りかかると、小さな青い花が一輪だけ咲いているのが目に入った。その花を見つめると、ふと手紙を書いた人のことが頭に浮かんだ。
「ありがとう」と陽介は心の中で呟き、今日もまた微笑んで駅へと向かった。