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星を編む者


星々がきらめく夜、静かな森の奥深くに住む老いた紡ぎ手がいた。彼は誰にも知られず、夜な夜な星を紡いでいた。その糸は、星々の光そのもので編まれていた。

彼の小屋の中には、無数の星々が絡まるように収められている大きな織り機があった。老人はその織り機に星の糸を通し、一枚の布を編み上げていた。その布は、見る者にとっての願いを叶える力があると言われていた。

ある日、若い少女が森の奥へと迷い込んだ。彼女は、村で愛する者を失った悲しみから逃れるため、森へと足を運んだのだ。迷いながらも、彼女は老人の小屋を見つけた。

「おじいさん、これは何を編んでいるの?」少女は老人に尋ねた。

老人は静かに答えた。「これは、願いを叶える布だよ。君が心に秘める願いを込めて、この布に星の糸を通すんだ。」

少女はその言葉に胸を打たれ、静かに布を見つめた。彼女の瞳には、失われた愛する者への想いが宿っていた。少女が布に手を触れると、奇跡が起きた。布は眩しい光を放ち、やがて星々が少女の周りを舞い始めた。

光が収まったとき、少女は再び愛する者の温もりを感じることができた。しかし、老人は姿を消していた。小屋には、ただ星々が輝く布が一枚だけ残されていた。

その後、少女は村に戻り、その布を大切に抱きしめて生きていった。星を編む者がどこへ行ったのか、誰も知らない。だが、彼の織り上げた布は今でも、夜空の星々と共に輝き続けている。


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