きびだんご詐欺

誰しも物語に登場する食べ物に憧れたことが一度はあるだろう。
桜でんぶがのった可愛いお弁当だったり、黒くて固いクリスマスプディングだったり。

ちびまる子ちゃんは4コマ全集で、旅人が森で迷った果てに見つけた人家でふるまわれるスープが食べたいと言っていた。

私はというと、きびだんごにずっと憧れている。

桃太郎の祖父母がこしらえた世界一のきびだんご。
食べると百万力の力が湧いてくるというきびだんご。
気高き戦士たち(犬、猿、雉)の心をわしづかみにしたきびだんご。

いったいどれほどおいしいものなのだろうと、幼いころの私は絵本を見ながらわくわくしていた。
ときどき腰に3つしか携えていなかったりするので、桃太郎は食べられたのかよく不安になったものだ。

もしかしたらそれ以前にも母と作ったりしたこともあるかもしれないが、
きちんと食べたことを覚えているのは、16歳の時だ。
浅草に出かけたときに、5本で百円のきびだんごを買った。(安い!)
ちょうどコロナ渦だったので食べ歩きはできなかったが、店の横のテーブルで立ったまま食べたのを覚えている。

食べた感想はというと、期待したほどではないな、という感じだった。
少なくともこれを食べたから命を懸けようとは思えない。
おいしくなかったわけではない。また食べたい。

私の脳内ではぷちぷちしたキビが団子の周りについているイメージだったので、あづまのきびだんごはただのきな粉団子としか思えなかった。
詐欺被害額100円。

しかしこれは全くの私の勘違いであり、
そもそもきびだんごの「きび」が何を指すかはよくわかっていないらしい。
仮にきびが黍だったとしても、それは黍をまぶしているわけではなく、生地に練りこんでいるという。

小6の時の自由研究では桃太郎について調べたが、きびだんごに焦点を当ててみるのも面白いだろうなと思った。

それでも私はいつか自分が思い描くきびだんごに出会えると信じている。

その時にはきっと、鬼ヶ島だろうとどこへでも行ける気がするので、
どうか温かく見守っていてほしい。


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