天ぷら
天ぷらで何がいちばん好きですか?
この質問は、考え方によっていろいろな答えがあるだろう。
何を最後まで取っておくかと聞かれたら、海老である。
単品で頼むといちばん高価だし、最後に大事そうに食べるのがなんだか天ぷらへの礼儀のような気がするからだ。
ちなみに海老のしっぽは食べる派である。
ゴキブリと同じ成分なんだよ、と言いながら、しっぽをむしゃむしゃ食べる私を、軽蔑のまなざしで見てくる人もいるが、そんなこと言うくらいなら身ごと私に譲ってほしいと思う。
純粋に好きだというならかぼちゃだ。なぜならかぼちゃが野菜の中でいちばん好きだから。おいしいのは当たり前である。
しかしここで考えたいのは、天ぷらはかぼちゃの良さを引き出せているのか、という点だ。
かぼちゃのチャームポイントはその甘みと、ホクホクした食感だろう。
ほんのり甘い衣に包まれたかぼちゃも確かにおいしいが、正直、あの薄さでは物足りないというのが本音である。
わたしが丸亀製麺で、さつまいもを注文しないのもほぼ同じ理由だ。
だいたい柏天かちくわにする。
同じ値段を払うなら野菜よりタンパク質と思ってしまう貧乏性なのだ。
しかしもしもこの質問の真意が
「天ぷらだといちばん好きなものは何ですか」
つまり
「天ぷらが最適の調理法である食材は何ですか」
だとすれば、
答えは舞茸だ。
そもそも私はキノコの中でいちばん舞茸が好きなのだが、舞茸は天ぷらにしてこそ真価を発揮すると考えている。
山梨で車に酔ったまま入った蕎麦屋でも、舞茸の天ぷらだけ食べた。
このまえ山形の回転ずしで、舞茸の天ぷら握りを食べたけれど、これもすごくおいしかった。
少し甘いシャリとサクサクの衣、鼻を抜ける舞茸の香り。
舞茸の天むすがあったら誰か教えてください。