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ASMLの強みと技術:最先端リソグラフィ装置の秘密

ASML(ASML Holding N.V.)は、オランダに本拠を置く半導体製造装置のリーディングカンパニー。1984年に設立され、以来、最先端のリソグラフィ装置を開発・製造。リソグラフィ装置とは、半導体チップの製造過程でシリコンウェハーに回路を焼き付けるための重要な機器です。

企業理念とビジョン

「半導体技術が世界の隅々に行き渡り、社会が抱える大きな課題の解決にこの技術を役立たせることです。私たちは、お客様各社が製造する半導体製品の価値の継続的増大とコスト低減を後押しする製品とサービスを創出することによって、このビジョンを実現していきます。」

製品とサービス

ASMLは、特にEUV(Extreme Ultraviolet)リソグラフィ技術で世界をリードしています。EUVリソグラフィは、5nm以下の非常に微細なプロセスで半導体チップを製造するための技術であり、スマートフォンや高性能コンピュータ、AIデバイスの進化に欠かせません。この技術は、より小型で高性能なチップを生産することを可能にし、半導体業界の未来を切り開くとされています。

主要製品

  1. EUVリソグラフィ装置(NXEシリーズ): ASMLのEUVリソグラフィ装置は、極めて微細な回路をシリコンウェハーに描き込むために使われます。この技術は、次世代の高性能デバイスに不可欠です。

  2. DUVリソグラフィ装置(TWINSCANシリーズ): DUV(Deep Ultraviolet)リソグラフィ装置は、半導体製造の初期段階から現在に至るまで広く使用されています。ASMLのTWINSCANシリーズは、高速かつ高精度な露光を実現します。

  3. ホリスティック・リソグラフィ・ソリューション: これには、メトロロジー(計測)およびインスペクション(検査)システムが含まれ、リソグラフィプロセス全体の精度と効率を高めるためのツールです。

サービス

ASMLは、製品の販売だけでなく、総合的なサポートサービスも提供しています。これには、装置の設置・メンテナンス、トレーニングプログラム、プロセス最適化のためのコンサルティングなどが含まれます。これにより、顧客は最先端の技術を最大限に活用することができます。

市場と競争優位性

ASMLの主要市場は、半導体チップを製造するファウンドリー(受託生産企業)やIDM(Integrated Device Manufacturer)と呼ばれる企業です。代表的な顧客には、TSMC(台湾セミコンダクター製造会社)、サムスン、インテルなどが含まれます。

ASMLの競争優位性は、何と言ってもその技術力にあります。EUVリソグラフィ技術において、ASMLは事実上の独占的地位を確立しており、この技術は今後数十年間にわたって半導体業界の中心となると予想されています。また、ASMLは膨大な研究開発投資を行っており、常に技術の最前線を維持しています。

最新の動向

決算ハイライト

ASMLの2024年第1四半期(1-3月)決算によると、
-売上高:53億ユーロ(約7,950億円)売上総利益率:51.0%、純利益:12億ユーロ
EPS:3.11ユーロ(basic)
-*純受注高 (Net Bookings)は36億ユーロ、うちEUVは6億5600万ユーロ
-2024年第2四半期の総売上高は57億~62億ユーロ、粗利益率は50~51%を予想
-2024年の総売上高が2023年と同程度になると予想

また、ASMLのアニュアルレポートには
2023年の売上高は276億ユーロ、純利益は78億ユーロとなっています。

「Net Bookings(純受注高)」は、特定の期間中に顧客から受けた新規注文の総額を示す指標。これには、キャンセルされた注文や返品が差し引かれた後の金額が含まれます。ASMLの純受注高は、同社の将来の売上高を予測する上で重要な指標です。半導体製造装置は高額であり、また納期も長期にわたるため、新規注文の動向はASMLの財務状況と市場の需要を反映します。

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技術革新と新製品

ASMLは、次世代のハイNA(高数値孔径)EUVリソグラフィ技術の開発を進めています。ハイNA技術は、現在のEUV技術よりもさらに微細な回路パターンを形成することができ、これにより半導体チップの性能と効率が一層向上します。この技術は、2025年以降の商業化が期待されており、ASMLのさらなる成長を牽引する要因となるでしょう。

環境への取り組み

ASMLは、環境保護にも積極的に取り組んでいます。製品のエネルギー効率を高めるだけでなく、製造過程における二酸化炭素排出量の削減を目指しています。また、サプライチェーン全体での持続可能性を推進し、サプライヤーとの協力によって環境負荷を低減するための取り組みを行っています。

ASMLに投資する場合は、ADR

日本の投資家がASML社に投資する場合、ADR(米国預託証券)を通じて行うのが一般的です。

  1. ASMLはオランダの企業で、本国市場はアムステルダム証券取引所ですが、日本の証券会社から直接オランダ株式市場で取引することは難しいです。

  2. 一方、ASMLのADRはアメリカのナスダック市場に上場しており、多くの日本の証券会社で取り扱いがあります。

  3. ADRは、日本から直接投資が難しい国の企業に投資できる便利な手段です。日本の証券口座から米ドルまたは日本円で購入できます。

  4. ASMLのADRを保有することは、ASML社の株式を間接的に保有するのとほぼ同じことになります。配当金も受け取れます。

したがって、日本からASMLに投資する場合、ADRを利用するのが最も現実的な方法だと言えます。

6/7の終値:1,041.71ドル→1株投資金額目安165,000円前後

こぼれ話

キャノンとニコンがASMLに遅れをとった理由

1. 技術的な差異

ASMLは、極端紫外線リソグラフィ(EUV)技術に早期に着目し、大規模な投資を行いました。EUV技術は、半導体製造における次世代技術として非常に重要であり、これによりASMLは市場で圧倒的なリーダーシップを確立しました。一方、キャノンとニコンはEUV技術の開発で遅れを取りました。

  • ASML: EUVリソグラフィ技術の先駆者であり、大規模な投資と研究開発を行ってきました。

  • キャノンとニコン: 主に従来の深紫外線(DUV)リソグラフィ技術に依存しており、EUV技術への移行が遅れました。

2. 資金力と投資

ASMLは、EUV技術の開発において莫大な資金を投じました。これは、グローバルな半導体メーカーからの支援を受けて実現したものであり、研究開発費の規模で他社を凌駕しました。キャノンとニコンは、このような規模の投資を行う余裕がなかったか、投資のタイミングを逸しました。

  • ASML: グローバルな半導体企業からの支援を受け、研究開発に巨額の投資を実施。

  • キャノンとニコン: 投資資金の規模やタイミングで劣り、大規模な研究開発の実現が困難。

3. 市場の戦略と焦点

ASMLは、半導体製造装置市場においてリソグラフィ技術に集中し、専門特化することで市場での優位性を築きました。キャノンとニコンは、カメラやプリンターといった他の事業分野にも注力しており、リソグラフィ技術に対する集中度が相対的に低かったことが挙げられます。

  • ASML: リソグラフィ技術に専門特化し、市場のニーズに迅速に対応。

  • キャノンとニコン: 多角的な事業展開により、リソグラフィ技術へのリソース配分が分散。

4. パートナーシップと協力関係

ASMLは、主要な半導体メーカー(インテル、サムスン、TSMCなど)と強力な協力関係を築き、彼らからのフィードバックや資金支援を得て技術開発を加速させました。この戦略的なパートナーシップが、技術的な優位性を確保する上で大きな役割を果たしました。

  • ASML: 半導体業界の主要プレーヤーとの協力関係を構築し、開発リソースと市場情報を最大限に活用。

  • キャノンとニコン: 同様の規模のパートナーシップを築くことができず、技術開発で遅れをとる結果に。


キャノンとニコンがASMLに遅れをとったのは、技術開発の方向性、資金力、市場戦略、そしてパートナーシップの構築において、ASMLに対する劣位があったためです。特にEUVリソグラフィ技術における先見性と投資規模でASMLが大きくリードし、これが市場での優位性に直結しています。キャノンとニコンは依然として高い技術力を持つものの、半導体製造装置市場におけるASMLの圧倒的な地位を覆すには至っていません。

まとめ

ASMLは、その卓越した技術力と持続的なイノベーションによって、半導体製造装置市場で独自の地位を確立しています。同社の製品は、スマートフォンやコンピュータ、AIデバイスなど、私たちの生活に不可欠なテクノロジーの基盤を支えています。将来的には、ハイNA技術の商業化やさらなる環境保護の取り組みなど、ますますの成長と進化が期待されます。

投資家にとっても、ASMLは長期的な成長ポテンシャルを持つ魅力的な企業であり、技術革新を牽引するリーダーとして、今後も注目すべき存在であり続けるでしょう。

ご注意-投資はご自身の判断で。

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