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ディア(DE)最新決算:世界的な経済不透明感や建設市場の低迷で収益は減少も、将来の成長を見据え・・【5-7月/Q3,2024】


ディア・アンド・カンパニー(Deere & Company,DE)は、農業機械および建設機器の製造で知られるグローバル企業。今第3四半期は世界的な経済不透明感や建設市場の低迷が影響し、収益は減少しましたが、隠れた実力を持つ老舗優良企業として、常に投資家の注目を集めています。このnoteでは、最新決算からディア社の核心に迫ります。

ディアという会社

主要事業

  • 農業機械:トラクター、コンバイン、播種機など

  • 建設機械:掘削機、ブルドーザー、ローダーなど

  • 林業機械:伐採機、フォワーダーなど

同社は1837年に創業し、長い歴史を持つアメリカの企業です。緑と黄色のロゴで知られ、「Nothing Runs Like a Deere」というスローガンが有名です。

"Nothing Runs Like a Deere"は、ジョン・ディア社(Deere & Company)の有名な広告スローガンです。このフレーズには二重の意味があります:

  1. 文字通りの意味
    "Deere"という単語は、会社名の「ディア」を指しています。つまり、「ディア社の製品ほど走るものはない」という意味になります。これは、同社の農業機械や建設機械の性能の高さを強調しています。

  2. 言葉遊びの要素
    "Deere"は発音が"deer"(鹿)と同じです。そのため、「鹿ほど走るものはない」という意味にも取れます。鹿は素早く走ることで知られているので、この言葉遊びによって製品の速さや効率性を暗示しています。

ジョン・ディア社の製品の品質、信頼性、効率性を簡潔かつ印象的に表現しています。農業機械や建設機械が「走る」という表現は、これらの機械が畑や建設現場で効率よく動作することを連想させます。

1971年に導入され、このスローガンは長年にわたってジョン・ディア社のブランドイメージを強化する役割を果たしてきました。シンプルでありながら記憶に残りやすい文句であり、同社の緑と黄色のロゴとともに、ジョン・ディア社の強力なブランドアイデンティティの一部となっています。

第3四半期の業績はどうだった?

2024年8月15日に発表されたディア社の第3四半期の決算は、前年同期と比較して大幅な減収減益となりました。具体的な数字を見ていきましょう。

  • 売上高: 131億5,200万ドル(前年同期比▼17%)
    部門別
    -生産と精密農業:51億ドル
    -小規模農業:30.5億ドル
    -建設・林業:32億ドル
    -ファイナンシャル・サービス:15億ドル
    -その他:2.8億ドル

  • 営業利益:22億9,700万ドル

  • 当期利益: 17億3,400万ドル(同▼42%)

  • 1株当たり利益(EPS): 6.29ドル(同▼10.2%)

  • 9ヶ月累計の売上高: 405億7,200万ドル(同▼11%)

前年同期と比べて利益が減少した原因として、世界的な農業市場のファンダメンタルズが弱まりつつあることや、建設市場の減速が挙げられます。また、為替変動や材料コストの上昇も影響を及ぼしたと、同社はしています。

農産物マージンは好調も利益が減少

農産物マージンが好調であっても、建設部門の低迷や原材料費の上昇、世界的な経済不安が業績に影響を与えています。特に、建設部門では需要の低下が続いており、これが全体の売上減少に直結しています。また、ディア社が市場変動に対応するためにコスト削減や生産調整を行ったことも、一時的な利益減少の要因となっています。

2024年度の見通しは?

2024年度の通期純利益予想を約70億ドルと据え置き。これは、市場環境が厳しい中でも同社の戦略が堅実であり、コスト削減や生産調整が効果を上げることを期待しているからです。

世界の農業ファンダメンタルズは今後どうなる?

ディア社は、世界の農業ファンダメンタルズについて引き続き厳しい状況が続くと予想しています。気候変動や地政学的リスク、さらにはグローバルサプライチェーンの混乱など、複数の要因が農業市場に影響を与えています。

また、建設市場の低迷もディア社にとっての大きな懸念事項です。特に、インフラ投資の減少や住宅市場の冷え込みが、今後も同社の業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があるとディア社は見ているようです。

ディアの強み

厳しいビジネス環境にあるディアですが、同社の強みを知ることで、その魅力を再確認してみたいと思います。

  • 利益率の高さ:ディアは他の農業機械メーカーと比べて非常に高い利益率を誇ります。営業利益率は、競合他社と比較して非常に高い水準を維持しています。20今四半期営業利益率は約17.47%でした。これは農業機械業界の平均を大きく上回る数字です。

高い利益率が維持できるのは、

ディアが高い利益率を維持できている主な理由には以下があります:

  1. ブランド力: 長年の歴史と信頼性により、プレミアム価格での販売が可能。

  2. 技術革新: 精密農業技術などの先進的な機能により、高付加価値製品を提供。

  3. 効率的な生産: 高度な生産システムと規模の経済により、コスト管理が徹底。

  4. アフターサービス: 部品販売やメンテナンスサービスの継続的な収益源を確保。

  5. 市場シェア: 北米市場を中心に高いシェアを持ち、価格決定力を持つ。

  6. 製品ポートフォリオ: 農業機械だけでなく、建設機械や林業機械など、多様な製品ラインナップを持っています。

このように、技術革新とブランド力の相乗効果により、高価格帯での販売が可能となっており、ディアは業界平均を大きく上回る利益率を実現しています。

  • 人口増加と食料不足に対応:今後、世界人口が増加する中、耕作地の増加が限界に達し、食料不足が予想されます。この課題を解決するために、農業機械の生産性向上が求められ、ディアの技術が注目されます。

  • ディーラー網の強み:ディアは世界中に広がる強力なディーラー網を持ち、これが競争優位性を支えています。他社には真似できない強みであり、部品販売や保守修理、金融サービスなど他の事業との相乗効果を発揮します。

    農業は集中する収穫期に、もし機械が壊れてしまったら農家は損害を被ることになります。短い収穫期は何が何でも故障せずに動いてもらわないといけません。そのためには、日ごろのメンテナンスが非常に重要ですし、不幸にして故障した時でも、すぐに修理に駆けつけてくれるサポート体制が求められます。

    そこで、重要になってくるのが、ディアのディーラー網(全世界に5,000、米国内に1,500以上)です。特に、南北アメリカ大陸にまたがる、米国、中南米の巨大な農業生産マーケットをカバーする圧倒的なディアのディーラ網は、他社の追随を許しません。同社の最大強みです。

AIと抜群の相性

米国でのディアの精密農業技術は、最新のテクノロジーを活用して農業の効率性と生産性を向上させる先進的なアプローチ。たとえばトウモロコシの苗を植える時、どのくらいの間隔で植えると収穫が一番良い状態になるのかを、AIで分析していくもの。そこで力を発揮するのが、世界中からディアに集まる膨大なデータです。

このデータを武器に、それぞれの農地にあった機械や最適解を提案できるのです。GPSやドローンを使っての、離れたところへの肥料や農薬の散布は広大な農地をもつ農業従事者、関連企業には、効率的なビジネスモデルを提供します。

さらには、トラクターや建機の電動化を進め、完全自動運転トラクターの量産化にも取り組み、最先端のAIを活用できる世界でも競争優位性を持つと考えられます。

トップのコメントは?

「低迷する市場環境に対応するため、私たちはコストを削減し、戦略的に生産と顧客のニーズを一致させるための手段を講じました。これらの決断は困難なものでしたが、当社の継続的な成功と競争力にとって不可欠なものです。」

ジョン・C・メイ会長兼CEO

この発言からもわかるように、ディア社は現在の市場環境に適応し、将来的な成長を見据えて行動しています。

About ディア

  • 創業:1837年

  • 上場:1933年

  • 現在の形へ:1958年、Deere & Companyへ

  • ティッカー・シンボル: DE

  • セクター:資本財(Industrials)

  • 株式時価総額:1,040億ドル(約15.3兆円,8/22時点)

  • 年間売上高:613億ドル(2023年会計年度)

  • ライバル企業:CNH インダストリアル(CNH),
    キャタピラー(CAT,建設機械部門で競合)など

  • 日本での同業種:クボタ(6326)

  • 従業員数:82,000人

投資金額の目安
376.59ドル×147円×1株=55,358円~
*手数料は入れていません。為替(ドル・円)、株価は変化します。

まとめ

ディア社は、180年以上の歴史を持つ農業機械市場のリーダーであり、世界的なブランド力と高い市場シェアを誇ります。常に最先端の技術を取り入れ、精密農業技術の開発などを通じて生産性の向上に貢献してきました。農業機械にとどまらず、建設機械や林業機械など幅広い分野で事業を展開しており、多角化された事業ポートフォリオを持っています。

また、業界平均を上回る営業利益率を維持し、安定した財務基盤を有している点も魅力です。さらに、世界中で事業を展開し、新興国市場での成長機会も積極的に捉えており、長期的に持続可能な成長と高い収益性を維持できる企業として注目されています。

よくある質問 Q&A

今回の決算や事業内容をQ&Aでおさらい・・

Q: ディア社の今後の業績見通しはどうなっていますか?
A: 2024年度の通期純利益は約70億ドルと予想されています。市場環境は厳しいですが、戦略的なコスト削減や生産調整により、堅実な業績を維持する見通しです。

Q: 第3四半期に業績が減少した理由は何ですか?
A: 主な要因は、建設市場の低迷と原材料費の上昇です。特に建設部門の需要低下が売上に影響を与えました。

Q: ディア社はどのようにして厳しい市場環境に対応していますか?
A: コスト削減や生産調整を行い、顧客のニーズに応じた戦略的な対応を進めています。また、革新的な製品とソリューションへの投資も継続しています。

Q: 農業市場のファンダメンタルズについて、ディア社の見解はどうですか?
A: ディア社は、世界の農業ファンダメンタルズが引き続き厳しい状況にあると予測しています。複数の要因が農業市場に影響を与えており、今後も注意が必要です。

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*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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