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君を追い行く薄月夜

 肩おちて揺らぐそぞろ髪を止め、見上げる闇はひび割れん。

 割れし月夜よ、滴る月光ささやくは、悲しみか、怒りか、憎しみか。

 沸き立つ我が血ぞ、やわらかき肌破り、滴り落ちん。

 冷たき地を燃やし、叫ぶ焔、頬を湿らす涙を苦き水に変えたもう。

 我が足首を握りし紫の影、溢れ出ず嗚咽、やがて焔を消したまわん。

 足りぬべし、足りぬべし、悲しみを、怒りを、憎しみを。

 振りほどき、歩みし地はぬかるみ、果て無き哀歌を響かせん。

 遠きふるさとに手を伸ばし、触れられずとも、せめてせめて、懐かしく美しき歌をと。

 あまりに弱し、我が腕引くは、闇夜に浮かぶ星ひとつ。

 うすあかき光、破れし我が羽を透かしたもう。

#掌編


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