20240126 正楽訃報
林家正楽が亡くなられた。傑出した寄席芸人でいらしたと思う。寄席で彼が紙切をしているときは、なんだか世の中の何もかもがいい感じにおさまっていくような心持ちになったのを覚えている。自分の思うようにうまくいっても、いかなくても、さいごはほんわか笑えるような気持ちになった。くねくね動きながら紙切をする名人芸も、ぴたりと止まって「動かないと、地味なんです……」と呟くあのしゃがれ声も、嬉しそうに作品を手に取るお客さんを見るのも好きだった。長患いになられるくらいなら、と思う気持ちもあるけれど、とかく寂しくてしかたない。
明治天皇の詠んだ歌で、好きなものがある。
さまざまの虫の声にも知られけり 生けとし生けるものの思ひは
なんとなくこれをつぶやいて、お布団に入った。