「2mmによく似合う傘」
前照灯が滲む雨。
アスファルトの皺に水が溜まる。
漠然と苦い口の中。
気持ち悪くて靴を履いたら
お気に入りの傘が一つ無くなってた。
そうだ、この前忘れたんだっけ。
紺色の、水に濡れると模様が浮かぶ。
少し重たくて、手に馴染んだ。
今日くらいの。
2mmの雨によく似合う傘。
気づかず踏んだ深い水溜まりに
裾を少し沈ませながら
気晴らしに進む散歩道。
特に何も考えないまま
歩いていたつもりでも
やっぱり気になるこの違い。
あの傘はどんな音だったっけ。
お気に入りの日常の1%。
たったそれだけの小さい違和感。
思ったより外が暗かった時とか
いつもいる猫がいなかった時とか
好きな傘の音を忘れた時とか
気付かないままでも変わらないのに
思い出すと寂しい1%。
もうすぐ降り止みそうだなぁ…。
白線の上を歩きながら
青色の傘をくるくる回した。
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