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【競馬】「OCDは馬の競走能力に影響を及ぼさない」は本当なのか? 徹底的に調べてみた!

・「OCD」ってなんだ?

今回はOCDについて書きます。「そもそもOCDとは何ぞや」なんていうのはこの記事を読んでいる競馬ファンのみなさんには釈迦に説法でしょうが、しばしお付き合いください。社台サンデーの当該ページにはこういう記述があります。

離断性骨軟骨症(Osteochondritis Dissecans)のことで、主に2歳以下の若駒に起こりやすく、関節(主に飛節、球節、後膝、肩)の軟骨から軟骨片が剥離し、炎症、関節液が増えることで関節の腫脹が起きる症状です。関節鏡手術による軟骨片摘出、増量した関節液を抜いた後にヒアロルン酸を注入するなどの処置により予後は良好で、早い段階で処置をすれば、術後も競走能力に影響を及ぼさないとされています。

https://stream.sundaytc.co.jp/pdf/rekisr240519.pdf

馬(人間もですが)の脚の関節部分は、成長するにつれて軟骨が少しずつ伸びながら硬い骨に置き換わってゆく、という生育プロセスをとります。ところが、なかにはこの化骨の最中に(激しい運動などの要因によって)軟骨同士の摩擦が起き、そこで削り取られた軟骨片が遊離したりささくれのように飛び出たりしてしまうケースがあります。これがOCDです。実際のレントゲン写真では小さい骨の破片がポツンと浮いているように見えます。発生箇所はほとんどが飛節で、若駒には珍しくない疾患のひとつだと言われているそうです。

JRA日高育成牧場のホームページによると、OCDにはおもに3つの容態があるそうです。

1)レントゲンで所見があるが、臨床症状はない
2)腫脹や跛行など臨床症状があるが、レントゲンでそれに見合う所見がない(関節鏡を入れれば所見がある)
3)腫脹や跛行など臨床症状があり、かつレントゲンでそれに見合う所見がある

https://blog.jra.jp/.s/shiryoushitsu/2019/02/ocd-7596.html

このうち、1に該当する場合は手術の必要がなく、3に該当する場合は関節鏡を用いた摘出手術を実施する必要がある。2の場合はケースバイケースです。つまり、基本的には患部の腫れや跛行などの顕著な症状が出ない限りOCDの手術は行わないわけですが、それは裏を返せば「手術歴等のページに載っている馬たちはみな、3の容態を経たのちに、脚に穴を開けて骨片を除去する手術を行なった馬なのだ」ということでもあります。と書くといかにも休養期間が長引きそうな重篤な疾患のように見えますが、はじめに引用した文章の最後にもあるように、一般的にOCDは「早い段階で処置をすれば、術後も競走能力に影響を及ぼさない」ものとされています。


・OCDは競走能力に影響を与えないのか?

ここまでOCDについての基礎知識をダラダラ書いてきましたが、俺が釈然としないのは先ほどの引用部分。ためしに他のページを見てみると、どこも口を揃えて「競走能力には問題がない」と言っておるわけですけども、肝心要のOCDの手術を受けた馬の具体的な名前や、競走能力の増減についての定量的なデータ、というのがほとんど出てこないんですね。アスペ気質の俺としてはこの状況がどうしても許せない。みなさんの中にも、検索フォームに「OCD 馬」と打ち込んで出てきたサイトをしらみ潰しに見てみたものの、本当にほしかった情報を手に入れることができず悶々としてしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。われわれが無意識のうちに求めていたのは「若い時分にOCDを発症したにもかかわらず出世して大レースを勝った馬のリスト」だったのではないか。

OCDは競走能力に影響を及ぼさない、というのは本当なのか。仮に競走能力に影響がないとして、OCDを発症した馬には体質や健康の面に何かしらの問題があるのか。OCDを発症した馬は発症していない馬と比べてどのぐらい生育が遅れるのか。OCDを手術した馬がのちに重賞レースを勝ったケースはあるのか。もちろん、一介の競馬ファンごときがこの問いに答えることはたいへん難しいのですが、「募集前に手術を受けていた馬の名前」と「その馬の競走成績」を並べることでもってある程度のところまでは近づくことができるのではないか、と思っております。

一口クラブが募集馬の手術歴を公表しはじめたのは2021年度(現4歳)から。したがって、有効なデータは2年分ちょっとしかないわけですけども、手元には社台サンデーの他に、G1レーシング、社台グループオーナーズ、シルク、キャロットのカタログがあるので、サンプルとしては十分なのではないかと思います。そんなんじゃあまだ足りないよ、という方は2009年から上場馬の手術歴を公表しているセレクトセールのデータを別途参照してください。また、OCDのほかに「関節炎により関節を洗浄した馬」も一緒に載せています。

※以下の戦績はすべて2024年6月23日時点のものです。


・社台、サンデー


ディズレーリ(レディシビルの20)
右後膝関節炎により関節洗浄(2020/12/8)
2歳12月デビュー13着
12戦1勝[1-1-1-9]

ラテラルシンキング(サプルマインドの20)
左後球節関節炎により関節洗浄(2020/6/11)
2歳12月デビュー1着
9戦2勝[2-1-1-5]

ヒップホップソウル(ダンスファンタジアの20)
両飛節OCD除去手術(2021/1/5)
2歳9月デビュー1着
10戦1勝[1-3-0-6]*重賞2着2回

グランデアマポーラ(リトルアマポーラの20)
右飛節関節炎により関節洗浄(2020/8/13)
3歳1月デビュー11着
4戦0勝[0-0-0-4]

シャンデル(シャンデリアスピンの20)
左飛節OCD除去手術(2021/6/3)
2歳9月デビュー6着
17戦0勝[0-2-0-15]

オーグメントコード(プライマリーコードの20)
左後球節・飛節関節炎により関節洗浄(2020/4/26)
2歳10月デビュー2着
6戦0勝[0-1-1-4]

タイトニット(アルティメイトラブの20)
左前球節OCD除去手術(2021/1/27)
3歳9月デビュー14着
8戦4勝[4-0-1-3]*うち3勝は地方
備考:デビュー前に左前肢第一指骨を骨折

フルングニル(ターフドンナの20)
両飛節OCD除去手術(2020/12/11)
2歳12月デビュー1着
6戦2勝[2-1-1-2]
備考:右前肢橈骨側手根骨部分の剥離骨折で長期休養

グレイコード(バイナリーコードの20)
両前球節OCD除去手術(2020/12/14)
2歳12月デビュー4着
4戦0勝[0-0-0-4]

キスオンザチーク(エスキモーキセスの20)
右飛節OCD除去手術(2021/1/22)
3歳1月デビュー1着
6戦1勝[1-0-0-5]
備考:レース中に右前肢橈側手根骨の剥離骨折、同時期に左前肢の膝部分にも骨膜

セブンキューブド(サーティーンスクエアドの20)
右後膝関節炎により関節洗浄(2020/12/1)
2歳11月デビュー13着
21戦2勝[2-1-1-17]*2勝は地方


ロンゴロンゴ(ミスティークIIの20)
両飛節OCD除去手術(2021/2/22)
不出走
備考:左後肢繋部分の第一趾骨骨折→引退

ピヌスアモリス(フォエヴァーダーリングの20)
両飛節OCD除去手術(2021/3/5)
2歳6月デビュー2着
7戦0勝[0-2-0-5]

ベルリエゾン(ベルワトリングの20)
左後膝蓋骨骨折(2020/10/13)
右飛節OCD除去手術(2021/2/5)
2歳12月デビュー12着
2戦0勝[0-0-0-2]
備考:右前肢橈骨遠位端の剥離骨折で引退

ローレルキャニオン(キャンプロックの20)
両後膝OCD除去手術(2020/12/8)
2歳10月デビュー1着
13戦2勝[2-2-1-8]

セレスティアリティ(アドマイヤテンバの20)
左飛節OCD除去手術(2021/3/1)
2歳6月デビュー3着
11戦1勝[1-2-1-7]


フォティーゾ(スキアの21)
左肘関節関節炎により関節洗浄(2021/5/14)
3歳4月デビュー9着
2戦0勝[0-1-0-1]

ティンク(オーレリアズベルの21)
左飛節OCD除去手術(2021/12/28)
2歳7月デビュー2着
7戦1勝[1-1-2-3]

エレクトリックブギ(カイザーバルの21)
右後膝関節炎により関節洗浄(2021/12/23,26)
2歳6月デビュー8着
6戦2勝[2-0-0-4]

キッドストン(ドリーフォンテインの21)
右前腕節関節炎により関節洗浄(2021/12/29)
3歳2月デビュー5着
5戦0勝[0-0-0-5]

アピーリングルック(ブライトリビングの21)
両飛節OCD除去手術(2021/12/10)
3歳2月デビュー2着
3戦2勝[2-1-0-0]

サイレントグルーヴ(リメインサイレントの21)
両飛節OCD除去手術(2022/1/18)
2歳12月デビュー8着
4戦1勝[1-0-0-3]

バニーホップ(ラビットランの21)
右飛節OCD除去手術(2022/5/20)
2歳8月デビュー8着
5戦0勝[0-0-0-5]


アスコリピチェーノ(アスコルティの21)
左飛節OCD除去手術(2021/11/12)
2歳6月デビュー1着
5戦3勝[3-2-0-0]*阪神JF1着、新潟2歳S1着🥳

テウメッサ(プロクリスの21)
右前肘関節感染性関節炎により関節洗浄(2021/10/18,21)
2歳7月デビュー2着
7戦2勝[2-2-1-2]*アネモネS2着

フォートボヤール(ローエキスキーズの21)
左飛節OCD除去手術(2022/2/10)
2歳10月デビュー4着
5戦0勝[0-1-0-4]

イラーナ(イリーサの21)
両飛節OCD除去手術(2022/1/10)
2歳11月デビュー6着
5戦0勝[0-3-0-2]

シルバーカレッジ(シルバーポジーの21)
左後肢球節OCD除去手術(2022/3/14)
2歳12月デビュー2着
4戦1勝[1-2-1-0]

ヴィクトリアドール(ヴィンテージドールの21)
両飛節OCD除去手術(2021/12/8)
2歳8月デビュー2着
6戦1勝[1-1-0-4]
備考:重度の右前肢屈腱炎で引退

エラトー(エライヤの21)
左飛節OCD除去手術(2022/3/17)
2歳7月デビュー4着
6戦2勝[2-1-1-2]


・G1レーシング、社台グループオーナーズ


ルヴェルリドー(ハイリリーの20)
右飛節OCD除去手術(2021/2/5)
2歳10月デビュー2着
9戦0勝[0-1-1-7]

グレンハイウェイ(アナアメリカーナの20)
両後膝OCD除去手術(2021/1/25)
2歳9月デビュー11着
5戦0勝[0-0-0-5]

アシュアビクトリー(アレイヴィングビューティの20)
右飛節OCD除去手術(2021/2/13)
3歳8月デビュー11着
2戦0勝[0-0-0-2]


レーベンスベルーフ(ライフフォーセールの20)
両飛節OCD除去手術(2021/3/10)
2歳10月デビュー4着
4戦0勝[0-0-0-4]

アウグーリ(アッラサルーテの20)
右飛節OCD除去手術(2021/5/3)
3歳1月デビュー11着
22戦2勝[2-2-0-18]*2勝は地方

プレジャークルーズ(ランドオーバーシーの20)
右飛節OCD除去手術(2020/12/19)
2歳10月デビュー10着
15戦2勝[2-2-0-11]

エリソン(サブトゥエンティの20)
両後膝OCD除去手術(2020/10/16)
3歳1月デビュー6着
1戦0勝[0-0-0-1]

フィンガークリック(アンバーミニーの20)
両飛節OCD除去手術(2020/12/14)
2歳6月デビュー2着
16戦2勝[2-1-1-12]

イスラブリーサ(クラウンプリンセスの20)
両飛節OCD除去手術(2021/1/6)
3歳1月デビュー8着
7戦0勝[0-1-0-6]

ヘルムシュテット(セルキスの20)
左飛節OCD除去手術(2021/2/24)
3歳12月デビュー1着
1戦1勝[1-0-0-0]*1勝は地方
備考:右前肢蹄骨骨折で引退

ムーンプローブ(スマイリングムーンの20)
右飛節OCD除去手術(2020/11/24)
2歳10月デビュー5着
11戦2勝[2-1-0-8]*フィリーズレビュー2着

シャルラハロート(カルティカの20)
左飛節OCD除去手術(2021/1/5)
2歳8月デビュー2着
5戦0勝[0-2-1-2]

ディアマイサン(ディアマイダーリンの20)
左飛節OCD除去手術(2021/1/26)
2歳8月デビュー6着
16戦1勝[1-1-1-13]

カリーナベローチェ(カレンリスベットの20)
左飛節OCD除去手術(2021/2/18)
2歳12月デビュー2着
8戦0勝[0-1-0-7]

スリリングチェイス(シンギングメリリーの20)
左前蹄関節炎により関節洗浄(2020/10/14)
3歳2月デビュー2着
6戦0勝[0-4-1-1]

テクノデザイン(テクニカルランの20)
左飛節OCD除去手術(2021/3/10)
2歳12月デビュー8着
7戦1勝[1-1-0-5]

ユーピテル(エクレアオールの20)
両飛節OCD除去手術(2021/5/29)
9戦1勝[1-0-1-7]*1勝は地方


クォーツァイト(ハニージェイドの21)
右飛節OCD除去手術(2022/2/15)
2歳6月デビュー7着
5戦1勝[1-1-0-3]

シャパリュ(ボンバルリーナの21)
両飛節OCD除去手術(2022/1/7)
2歳7月デビュー7着
3戦1勝[1-0-0-2]

イノセントキャット(イルーシヴキャットの21)
右前球節・腕節関節炎により関節洗浄(2021/5/10)
2歳9月デビュー11着
2戦0勝[0-1-0-1]
備考:骨折で長期休養

パーソナルリバティ(パーソナルダイアリーの21)
両飛節OCD除去手術(2022/1/4)
3歳4月デビュー11着
3戦0勝[0-0-0-3]

オペラプラージュ(ベルプラージュの21)
両飛節OCD除去手術(2021/11/26)
2歳10月デビュー1着
2戦1勝[1-0-0-1]
備考:左前肢橈骨遠位端骨折で長期休養

ベラコルサ(ベラポーサの21)
両飛節OCD除去手術(2022/1/4)
3歳5月デビュー13着
1戦0勝[0-0-0-1]

ワイマング(レディオブヴェニスの21)
両後球節OCD除去手術(2021/12/13)
2歳11月デビュー2着
4戦0勝[0-2-0-2]

モアザンワンス(フォーエバーモアの21)
両飛節OCD除去手術(2022/2/21)
2歳10月デビュー1着
3戦2勝[2-0-0-1]
備考:骨折で長期休養


フィオドラの21*募集中止
左後膝OCD除去手術(2021/9/23)
両後膝OCD除去手術(2021/10/28)
未出走

シャバツィ(シュピッツェの21)
右飛節OCD除去手術(2022/1/19)
2歳12月デビュー5着
4戦0勝[0-0-0-4]

クーデメイン(クーデグレイスの21)
両飛節OCD除去手術(2021/11/25)
2歳10月デビュー10着
4戦0勝[0-0-0-4]

ベリーク(エルビッシュの21)*募集中止→シルクで追加募集
左飛節OCD除去手術(2022/3/8)
2歳10月デビュー13着
2戦0勝[0-0-0-2]

ルスディヴィナ(ディヴィナプレシオーサの21)
右飛節関節炎により関節洗浄(2021/5/4)
3歳5月デビュー9着
2戦0勝[0-0-0-2]
備考:レース中に右前肢橈骨側手根骨骨折

サーブザミッション(ウィズアミッションの21)
右肘関節炎により関節洗浄(2021/10/9)
左飛節OCD除去手術(2021/12/7)
2歳12月デビュー5着
4戦0勝[0-0-0-4]


・シルク、キャロット


サスティーン(ゼマティスの20)
両飛節OCD除去手術(2021/2/12)
2歳11月デビュー13着
1戦0勝[0-0-0-1]
備考:左後肢の第一趾骨折で引退

レゾリュート(ソーディヴァインの20)
左前肢球節関節炎により関節洗浄(2020/8/2)
3歳3月デビュー9着
2戦0勝[0-0-0-2]
備考:骨折で引退

バーラデプラータ(カルディーンの20)
左飛節OCD除去手術(2021/2/19)
不出走
備考:競走能力喪失で引退

ベルローブ(デックドアウトの20)
左飛節OCD除去手術(2021/2/1)
3歳3月デビュー17着
1戦0勝[0-0-0-1]
備考:レース中に右前肢第3手根骨を骨折→引退

ベルシャンブル(シャンブルドットの20)
左後肢球節関節炎により関節洗浄(2020/10/1)
2歳11月デビュー2着
8戦2勝[2-1-1-4]

ブレスユアスターズ(ブレッシングテレサの20)
右肘関節関節炎により関節洗浄(2020/10/25)
2歳12月デビュー14着
4戦0勝[0-0-0-4]


グランサバナ(エンジェルフォールの20)
右飛節OCD除去手術(2021/2/16)
2歳6月デビュー10着
14戦3勝[3-3-2-6]

スキルヴィング(ロスヴァイセの20)
左飛節OCD除去手術(2020/11/20)
2歳10月デビュー2着
5戦3勝[3-1-0-1]*青葉賞1着
備考:レース中に急性心不全で死亡

リーチエミネンス(リーチングの20)
右飛節OCD除去手術(2021/2/3)
3歳3月デビュー15着
3戦0勝[0-0-0-3]


グランアトミカ(アトミカオロの21)
右後膝・左飛節OCD除去手術(2022/1/11)
3歳12月デビュー3着
3戦0勝[0-0-2-1]

アンドローゼス(ローズウィスパーの21)
左飛節OCD除去手術(2022/5/14)
2歳9月デビュー4着
4戦0勝[0-0-0-4]

ベストミーエヴァー(デルフィニアIIの21)
両飛節OCD除去手術(2022/5/21)
2歳8月デビュー2着
5戦1勝[1-2-2-0]

チェレスタ(カリンバの21)
左飛節OCD除去手術(2021/12/10)
2歳7月デビュー3着
3戦1勝[1-1-1-0]

フェンダー(プリンセスロックの21)
左飛節OCD除去手術(2021/12/3)
2歳6月デビュー10着
9戦1勝[1-1-0-7]

カールスタード(シフォンカールの21)
右飛節感染性関節炎により関節洗浄(2021/8/21)
2歳9月デビュー5着
5戦1勝[1-1-0-3]

アルレジャン(アルルの21)
左後肢球節感染性関節炎により関節洗浄(2021/3/18)
2歳10月デビュー8着
6戦0勝[0-0-1-5]


フォルクスリート(シンギングメリリーの21)
右飛節OCD除去手術(2021/11/27)
2歳6月デビュー3着
8戦1勝[1-2-2-3]

ルシフェル(アルアリングスターの21)
右大腿膝蓋節感染性関節炎により関節洗浄(2021/4/17)
2歳7月デビュー2着
5戦2勝[2-1-0-2]*萩S1着

アッファシナンテ(アディクティドの21)
両後肢球節OCD除去手術(2021/10/29)
左飛節OCD除去手術(2022/7/22)
2歳8月デビュー6着
1戦0勝[0-0-0-1]
備考:右前肢屈腱炎で引退

リューデスハイム(グリューヴァインの21)
右飛節OCD除去手術(2022/2/9)
2歳10月デビュー2着
6戦1勝[1-3-0-2]

ピュアスマイル(レイリオンの21)
両飛節OCD除去手術(2021/11/1)
2歳10月デビュー9着
5戦0勝[0-0-0-5]


・まとめ

該当した63頭のうち、G1勝ち馬が1頭(アスコリピチェーノ)、G2勝ち馬が1頭、重賞で連対した馬は2頭。その下に2勝クラスの馬→1勝クラスの馬→未勝利馬と推移していくピラミッドのかたちを見るぶんには一般的な一口クラブのそれとほとんど変わらない。したがって、少なくともこのデータを見る限りでは「OCDは競走能力に影響を及ぼさない」と言ってしまってよいのではないかと思います。以下気になったポイントをメモしておきます。

・OCDの馬は選ばないに越したことはない
身も蓋もない話ですけども、「OCDの馬だろうが走る馬は走るし、走らない馬は走らない」。同時にOCDはれっきとした故障なわけですから、発症してしまった時点で何らかのリスクを抱えてしまうのは仕方がない。OCDは競走能力に影響を与えないかもしれないが、体質面への影響はあるかもしれない(因果が逆で、体質が弱いからOCDになってしまうのかもしれない)。とりわけ走らなかった馬に限って言えば、育成段階に入ってからまた別の部位を故障したり、レース中に怪我をしたり、脚が弱すぎてなかなか数を使えなかったり、といったケースが非常に目立ちます。少しでもそういうリスクを避けたい、という方はOCDの馬は選ばないほうが無難でしょう。

・症状が複数箇所に跨る馬は危険
両飛節のOCDはそこまで致命的でもないのですが、球節と飛節、膝と飛節、飛節を手術したあとにもう一度手術、といった具合に「症状が複数箇所に跨った馬(関節洗浄も含む)」というのは6頭いて1勝もしておりません。競走馬にすらなれなかったフィオドラの21をはじめ、体質面に深刻な問題を抱えたケースが目につきます。

・高額馬が驚くほど少ない
そもそもなぜこんな記事を書こうと思ったかというと、今年出資申し込みをしたクロノジェネシスの23が両飛節OCDの手術を受けていたからなんですね。しかも申し込みが締め切られたあとに気づくという(笑)。しかしながら、ウォーキング動画の飛節の動きを見ている分にはまったく懸念はなさそうでした。飛節の角度に合った無理のない伸びでもってピュッと後ろに蹴り出し、そのまま前肢を追いかけてスムーズに戻っていく。むろん、育成に入ってから何かしらの問題が出てくるかもしれないし、さいぜん申し上げたように体質の弱い馬である可能性もあるわけですが。
ちなみに、リストの顔ぶれを見ていて気づいた方もいるかもしれませんが、OCDの手術を受けた馬には高額馬が驚くほど少ないんですよね。募集額が8000万を超えた馬は1頭もいなかったように記憶しています。高額馬の絶対数が少ない、という当然考えられる事情はあるにせよ、ここまで極端に偏るといろいろと邪推してみたくなる…。クロノジェネシスの23の場合は相当なレアケースと言ってよいでしょう。今後も注視していきたいところです。

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