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「男女のパリテを守ることは、斬新な研究を発展させていくためにも大切な考え方だとおもいます」フランス国立科学研究所、リサーチディレクター・小田玲子さんへのインタビュー


自己紹介をお願いします。
小田玲子と申します。分子集合体からなる超分子構造を使ってナノテクノロジーへの応用へつなげる研究しています。日本で学部を出た後まずはアメリカの大学院でphDをとり、その後フランスにやってきました。ストラスブールのルイパスツール大学で4年間ポスドクをした後 、ボルドー大学のEuropean Institute of Chemistry and Biology(EICB)かつInstitute of Chemistry and Biology of Membranes and Nanoobjects(CBMN)にグループリーダーとして移り、同時にフランス国立科学研究所、リサーチディレクターとして活動しています。

研究されていることについて教えてください。
分野はナノテクノロジーとよばれる分野で、どのように非常に小さな分子からなるサブミクロンの集合体の形やそのプロパティーをコントロールできるのかを研究しています。基礎研究は直接に社会に役に立たないと思われがちですが、応用研究の基盤にある大切な物で私の分野の基礎研究はバイオテクノロジーやタッチスクリーンなどのテクノロジーから車や化粧品、セキュリティーまで様々な分野を網羅できる広がりが大きい希望のあふれた分野です。フランスを選んだ理由の1つとして、この分野ではフランスの研究が昔から強いと言う理由がありました。

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CNRSについて教えてください。
フランス国立科学研究所(CNRS)は、フランス独自のシステムです。全国単位の組織であるCNRSは人文科学含めて大体40分野に分かれ、各学部が毎年全国単位で、研究員の募集試験を行います。競争率は5パーセント程度とかなり高く、採用された人は全国中の希望した研究所へ行くことができます。このCNRS研究員という肩書は人間につくものなので、職を維持したまま別の都市の研究室へ移ることもできます。また、CNRS研究員には教職義務がなく研究に没頭できるので研究面ではかなり有利だと思います。

フランスでの研究環境について教えてください。
私は日本の大学院には進学せず、研究員としてのキャリアもアメリカ、フランスだけですので日本の状況を正確に把握してはいないかもしれません。しかし、よく言われるように、フランスでは働く女性が日本より多いということは日々感じていることです。科学の研究職のなかで一般的に女性が少ないと考えられる物理等の分野においても多くの女性研究者はいます。とはいえ、CNRSにおいても男女比を均等にすることはいまだ努力が要されること、また、よく見ると研究者のなかでも上の役職に上り詰める女性の比率はまだまだ少ないというのが現状です。そこを変えていくのはフランスや日本だけではなく世界共通の課題だと思います。

最近の出来事で印象深かったことはありますか?
CNRSの研究員の昇進のための審査に参加した際、審査員の7人中5人が女性だったことに審査の途中に気づき、皆で驚いて笑いました!わざとそうしようとしたわけではなく、自然と女性の方が多くなっていたのです。CNRSの規定では、必ず最低限2人は女性を入れるという記載がありますが、男の人数に対しての言及はありません。それほど研究の場というのは依然として男性が優位な現場であるということです。研究社会におけるパリテという考えは私にとって1つの大切な軸であり、すべての人が気を付けるべきことであると思っています。斬新な研究を発展させていくためにとても大切なことはオリジナリティー、そしてダイバーシティーだと思います。研究を行うに当たって男女のパリテを守ること、そして国際的にもいろいろな国籍の人が混ざることは上記の2点において広がりを見せる大切な手段だと思っています。最近、国際学会を開催した際にも、ゲストの女性の研究者の数を男性となるべく半々に近い状態に持っていく事に重きを置きました。世界中から研究者を呼び、全体の女性比は約40%でした。女性だからできない研究はありませんし素晴らしい研究者に性別は関係ありません。男性ばかりの空間だとそういう刷り込みが生まれてしまいます。女性が選ばれるのが珍しいことではなく、当たり前だという社会を目指さなければいけないと思っています。それには若い学生さんから初めて個人個人の意識を変えていかなければいけません。

フランスで研究をしたいと思っている学生さんに一言お願いします!

ドクターに行くことに対して不安になっている人へ。博士号を取得した学生を採用することに理解がある会社は増えてきています!また、フランスでは博士課程の学生は雇用されていることになり、生活費として十分な給料を受け取ります。私は学部の後、外国に行くことを選びましたが、まわりまわって今は日本の大学と協力して様々なことをしています。是非どんどん新しいことにチャレンジして、今見えている世界を広げていってください。

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