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絵に描いた餅

サワディー・ピーマイ・クラップ
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

美味しいお餅を食べたい!

皆さんはお正月美味しいお餅を食べましたか?

日本では「お餅」と言うとお正月に食べるもの?的な感じを持ちますよね。
私だけでしょうか?

タイに長くいるとその感じも薄れていますが、
餅米は年中食しています。

今日はその食べる「お餅」では無く、
『絵に描いた餅』の話です。

私は小さなコンサルティング会社も経営しています。
お客様の紹介だけでお請けしているだけで、
積極的な営業活動は一切していませんが、
タイへの進出希望企業のコンサルティングを・・・

もう10年以上前の話になります。

旅行業の方の取引先から
「タイ進出を検討している企業がある。是非、コンサルティングを請けて欲しい。」と。
日本では5,000人以上の従業員を雇用する企業。
社長、副社長と数度の面談を経て請ける事にした。

先ずは業界のリサーチから始めてレポートを提出。
それを熟考し数度の来タイを繰り返して進出を決定。
そして、タイ現地法人の社長を決定するに当たって私から提案。
それは社内公募+役員の推薦、
そしてテーマ別のレポートを数回提出させて5名に絞込み、
最終選考の面接はタイで行った。

結構、面白い人材が集まった。
叩き上げの支社長が2名、本社営業部長1名、営業所係長1名、
そして数ヶ月前に入社した大手製薬会社の海外支社長を退職された方。
この方はある役員の推薦で入社して、
最終選考にも役員推薦で残った方である。

タイでの選考は日本での取引先の現地法人の訪問視察が2日間、
観光が2日間、そして最終面接。
私は現地法人の視察には同行せずに観光と面接のみ参加。
候補者は観光は息抜きのように思われてたみたいだが、
それも現地対応能力、タイ人とのコミュニケーション能力の適正を見る為のものだった。

面接は社長、副社長、専務、常務、平取2名、そして私の7名。
そして7名がそれぞれ2名に票を入れ、
得票数上位2名に絞り込んだ。
その2名は役員推薦の大手製薬会社を海外支社長を退職された方と本社営業部長。
そして7名で2名に対する再投票。
結果、5−2で大手製薬会社海外支社長経験者。
本社営業部長に票を入れたのは副社長と私。

その数ヶ月後に着任して法人設立手続きから立上げスタッフの面接などをサポートしていた私に、
「経営方針、社則、試算表他を作成したので意見を聞きたい」と言ってきた。
当然、コンサルティング契約の中に含まれている内容である為その書類を預かるが、
それを日本の役員にも渡してるかの確認をしたら、
「その必要は無い、私が現地を任されたから日本側に意見は求めない」と。
この時点で『問題児』的に感じたのは間違いでは無かった。

数日間に亘り預かった書類に目を通す。
その企業に1年足らずの在籍者が作った書類にしてはよく出来てる。
そりゃそうだろう、一部上場企業の海外支社長経験者だから。
社則などもタイの事を結構調べて適合させているようにも感じられた。

日本の本社で数ヶ月、
タイに着任して数ヶ月、
トータル1年程度である出来事が・・・

ある日、タイ法人の社長からとても機嫌の良い声で電話が。
「相談したい事があるので来て欲しい」と。
週1で必ずオフィスに伺いミーティングを繰り返しているのに何故?
明るい機嫌の良い声だったのでオフィスを訪問。

その社長の第一声は「新しい試算表が出来ましたよ。
何と1年で黒字に持っていけますよ。見て下さい。」と。
結果だけ見ると確かに黒字になってるが、
あくまでも試算表なので幾らでも数字の操作は出来る。
細かく見ると単価設定が日本と同じかそれより高い設定になってる。
それなら・・・

私は数年お付き合いしてる日本本社の社長、副社長から、
「3年計画で試算して欲しい。その為の予算は・・・ここまで」と。
それでも厳しい数字ではあったが出来ない数字ではないと思いコンサルティングしていたのだが、
見せられた試算表はかけ離れたものでしか無かった。

「これで日本本社も安心するでしょう。」って?
何を根拠に?
確かに3年計画を1年で達成すれば誰も文句を言う事はない。
「出来れば」の話だ。

まずは単価設定の根拠を聞いた。
その応えは「ヨーロッパ、アメリカで経験した現地企業で、
日本の価格を基準に取引先を納得させてきた。
だから同じ事をやるだけだ。」と。

開いた口が塞がらなかった。
そして、更に私に対するマウントを。
「貴方は上場企業のやり方を知らないからビックリされたのでしょうけれど、
こんな事は常識です。相手が取引したけりゃ条件を飲ませれば良いだけだから。」
大企業の看板で仕事をしてきた方の言葉。
その看板がなくなり何も出来ない自分に気がつくまで多くの時間を必要としない。
それは彼に限らずだ。

私は彼に「絵に描いた餅は食べれません。
確かに食べれる絵にするのも仕事でしょうけど、
それは確かな裏付けの元に描かれた絵の餅。
裏付け無しの餅はいつまで経っても絵に描いた餅。」と。
かなりムカついたようです。
10歳程度年下の私に言われたのですから。

そして数日後に日本本社の副社長から電話で、
「申し訳ないがコンサルティング契約を解除させて欲しい。
契約満了までのフィーは一括支払いするので」と。
その理由は『タイ法人の社長からコンサルティングを切って欲しい』と強い要請があったそうです。
器の小さな方と可哀想になったくらいです。

さて、その後は?
その彼は1年後に辞表を提出。
その1年の間に本社からの応援出張が毎月のようにあり、
出張者は必ず私に連絡を取りプライベートでお会いしていました。
それは副社長から「私に会って状況を相談しておけ」との事だったようです。

絵に描いた餅を食べれるように実現出来ずに辞表を出した彼。
立上げに失敗した企業の後任は並大抵の力量では・・・
ましてや海外となればなおの事。
後任も半年程度でギブアップ。

結局は撤退する事を決断した直後に、
心労と過労が重なり心筋梗塞で社長が入院。
息子である専務が社長に就任。
副社長は定年で退職。

絵に描いた餅で日本本社の役員達は皆、
心労が絶えずフラフラ状態だったようだが、
撤退を決めて少し楽になったようだ。

絵に描いた餅を認めた自分達の無責任な点に皆反省はしたようだが、
タイ法人を任せた彼を引き入れた役員は引責辞任したと聞いている。

私も良い経験をさせてもらった。
それ以降、数々にプロジェクトに関わってきたし、
進出企業のコンサルティングも数件請けたが、
COVID-19下におけるコンサルティング、プロジェクトは経験値を遥かに越えている。
絵に描いた餅など一瞬にして消える。
裏付けのある事業計画でもその通りに実行出来ないのが辛い。

想像を絶するCOVID-19の影響力。
まだ続くのだろう・・・・

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