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Widmung(独)

 差し上げること、らしいです。ヨーロッパの音楽界においては、昔、作曲家が貴族の手厚い保護なしには生きていけなかった時代に、作曲家が特定の個人に捧げることとしてこの言葉が使われていたのだとか。
参考文献:http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2008/01/post_09cd.html

 一方で、貴族との関係や保護だとかの利害関係なしに、ただその人に愛情込めて捧げた——という意味で『Widming』を題目とした曲があります。

 R・シューマン 作曲 歌曲集「ミルテの花」より 「献呈」

  ドイツの作曲家・シューマン の作曲した歌曲です。妻・クララへの一途な愛情は有名であり、クララの父の反対を押し切って結ばれ、結婚式の前日に「愛する花嫁へ」と書いて歌曲集「ミルテの花」を彼女に捧げたという。その歌曲は全部で26曲あり、その第1曲が「献呈」となっています。

 ミルテは日本ではギンバイカ(銀梅花)と呼ばれており、花言葉は「愛」「愛のささやき」。

 歌詞の冒頭を紹介すると——

きみこそはわが魂よ、わが心よ、
きみこそはわが楽しみ、わが苦しみよ、
きみこそはわが生を営む世界よ、
きみこそはわが天翔ける天空よ、
きみこそはわが心の悶えを
とこしえに葬ったわが墓穴よ。

引用:https://enc.piano.or.jp/musics/1035

 歌詞はシューマンが書いたものではなく、詩人・リュッケルトの無題の詩に曲をつけたものですが、この熱烈なフレーズをはじめとして、音楽に乗せて26曲プレゼントするなんて、どれほど幸せで、愛の絶頂にいたかが分かりますね。
 まぁ正直に言えばメンヘr(ry


 19世紀ヨーロッパの愛の表現方法というのは、一体どんなものだったんでしょうね。今日は愛のあり方も多様化されていますが、当時は階級社会で決められた結婚もあり、身分違いの恋も少なからずあったのではないでしょうか。シューマンとクララも身分が違うことによって、クララの父の猛反対にあったわけですし。しかし、許される恋と許されざる恋の線引きがしっかりされている世の中だからこそ、こうしたロマンチックな恋愛模様がより美しく熱烈なものに映るのでしょうね。

 現代においても、世界中で、世界でなくても日本で、ドラマチックな恋愛が展開されて、それぞれ素敵な結末を迎えているだろうと思います。

 一方で浮気や不倫のニュースが多く「男/女なんて信用できない」なんて声も多く聞こえてきます。悪いニュースというものは大抵良いニュースよりも印象深くなってしまうものです。

 ベートーヴェン 音楽とドイツ観念論について以前学んだとき、ポジティヴなことよりもネガティヴなことを感じた時に、人は強い印象を受け、理性を働かせるのだということを知りました。こうした考えは、現代社会においても非常に有用になってきそう。

 ネガティヴなものに目を向けることは確かに理性が働いて、批判などして頭がスッキリするような気もしますが、不倫のニュースを大袈裟に見て評論するよりも、自分の身の回りの幸福、恋愛や結婚にももっと深く触れ、感じていく時間を増やしていかなくてはならないと思っています。浮気・不倫などは創作物としては愉しく考察しがいのあるものですが、そういった話題ばかりに囚われず、それは画面越しの世界であり自分の領域に持ち出してはなりません。
 まぁ、マスメディアなんてものは、儲かるコンテンツを書かなくては業界で生き残れない訳ですから、不倫のニュースを大袈裟に取り上げることで大衆の注目を引くことができる以上、世の中このような流れになるのはごく自然なことなのでしょうね。
 そもそも恋愛は多様化されて、私の想像のできない愛の形があります。それらを世間的に受容しつつも、共感しすぎず、静観し、恋愛そのものへの憧れでなく、好きな人への憧れを以って恋愛を進めていけば良いですね。

 何を偉そうに語ってんだか。


 まとまりもなくただ次々と語ってしまいましたが、なぜ今回献呈を取り上げたかというと、単にこの曲が好きだからです。音痴なので歌曲を歌うことはあまりしませんが、シューマンと同年代の作曲家であるF・リストがピアノバージョンにしたものがあり、これを私は一日に一回必ず弾くようにしています。

 私には付き合って約1年半の彼女がいますが、やはりこの曲は彼女のために弾いてあげたいと思う訳です。はじめは「この曲を弾いて告白するんだ」とか豪語していましたが、譜読みもままならないうちに付き合うことになりまして。「弾いて」と言われた時に心を込めて弾けるくらいには腕を落とさないようにしていきたいものです。

 これほど彼女のことを考えて献呈を弾いていれば、たとえ別れてしまった後にこれを弾いた時、いちいちセンチメンタルになって心が保ちません。きっと別れたら献呈を二度と弾くことはないかもしれません。

 献呈をこの先も弾き続けることができれば幸せです。

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