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『りっとう』の完成と、真ッ冬主催『Story Seller』


2019年の11月2日。
真ッ冬はamazarashiのカバーユニットとしてスタートした。

前回の記事で触れた通り、僕らは初ライブを終えた後のビジョンを全く考えていなかった。

「感覚を忘れない程度に、
月1程度でスタジオ入りませんか?」

僕の提案でその後は、それはそれはのんびりとカバーの練習をする日々が続く。

そして、ちょうど1年後。
真ッ冬としての初めてのオリジナル曲
『りっとう』が完成した。

それを皮切りに、僕らは大きな一歩を踏み出すことになる。






『りっとう』を思いついたのは、翌年2020年の夏ごろだったと思う。細々とamazarashiのカバーを練習してきて、演奏も板についてきた頃合いだった。

まず僕がギター伴奏のみで全体像を作り、
後からピアノを入れる。
そんな形で作曲がスタートした。


この曲を作る上で意識したことは2つ。
冬がテーマであること。
そして、ギターとピアノのアンサンブルだ。

アンサンブル、と言うと聞こえはいいが
要は「ピアノが入るとしたらこんな感じかなぁ」とまあ曖昧な感覚だ。


今振り返れば、その曖昧な感覚が『りっとう』の複雑な曲構成に繋がったように思う。
見切り発車で作り始めたからこそ、色々な挑戦ができたのだと思う。

まず遅いテンポからポエトリーで始まるわけだが、ここのギターがまあ難しい。
親指と人差し指で持ったピックと残りの中指と薬指で弾くチキンピッキング奏法だ。

実はこの奏法、この曲で初めて使った。
初めてなので当然難しい。

だが、ポエトリーの裏で鳴るピックで弾くルート音と、指で弾く音のバランスがイメージにピッタリだった。これはやるっきゃない。
練習あるのみだ。

ポエトリーが終わるとテンポアップ。
そして白玉(全音符)を入れてもう一度静かに。
アルペジオを入れてサビへ。
(↑ここのアルペジオがほんっとにムズい!😭)

サビはメロディもコードもシンプルだけど、
rit.(段々テンポが遅くなる)の後にアルペジオを入れて元のテンポに戻したりと、意外と入り組んでいる。

初めてにしては、あまりに複雑だ。
けど、不思議と最初のイメージから崩れることなく、綺麗にまとまってくれたとも思う。


無事にフル尺で作り終えた僕は、啓さんにLINEで動画を送った。

啓さんからは
「おけ!  フレーズ考えとくね!」と一言。

僕はキーも理論も分からないので、最初は啓さんにとことん丸投げしていた。
啓さんは音大出身で理論がバッチリ分かる人だ。やはりピアノのフレーズはピアノを解る人がやるべきだと考えていた。

ちなみに『りっとう』がひらがな表記なのは、amazarashiの前身「あまざらし」(Vo.&Gt. 秋田ひろむ / Key.&Cho. 豊川真奈美の2人組ユニット)に起因する。


気付けば季節は秋の終わり頃。

図らずも本物の立冬が近づいてきた時のこと。





忘れもしない、『りっとう』を初めて合わせたスタジオの日のこと。
カバーは何度も合わせたけれど、オリジナルで合わせるのは初めて。僕は前乗りしてどこか浮き足立っていた。

啓さんと顔を合わせ、
「とりあえずセクション毎に合わせてみます?」と言うと、

「いや、フレーズ考えてきたからさ。通しで合わせようよ」と、しれっと言う。


え………

いきなり…………??


及び腰な僕をよそにさっさと支度を始める啓さん。


大丈夫かなぁ。


音出しの準備を終えて、
いざ『りっとう』の通し。



せーのっ!



まずポエトリー部分からしっとりとピアノが入る。多少のテンポのブレはあっただろうけど、休符の位置も完璧だ。

ポエトリーが終わり、ちょこっとブレイク。

啓さんと目を合わせ、
「いいじゃないですかぁ」

そしてカウントを取ってテンポアップ。

ここからリズミカルなピアノが入り、そこからすぐにまた白玉でブレイク。

サビの出来栄えにワクワクしながら例のアルペジオを弾くと、間にピアノの高い単音をピンッ!

サビは基本的に四つ打ち。ボーカルの合間を縫って心地よいピアノが散りばめられる。

ラストサビ終わりに一旦静かになって、段々とクレッシェンド。最後は短いスタッカートで曲が終わる。


一息ついて、


「どう?  手直しするとこある?」


僕は既に確かな手応えを感じていた。



「ありません」


ちょっと気恥ずかしいけれど、
僕の音楽人生の中で最も高揚した瞬間だった。





『りっとう』のコードは
F / C / G / Am とシンプルな構成だ。
一曲を通してこの4つのみで終結する。

実は僕がこのコード進行を使うのが初めてだった。ただ意識したことは、ピアノが入ったら〜という曖昧な感覚のみ。

大分後に気づいたことだが、このコード進行は啓さんが普段使う手癖と全く一緒だと言う。
だから『りっとう』もすんなりフレーズを思いついたのだそう。

もしかしたらカバーを合わせていく上で、何となく啓さんのフレージングを身体で理解していたのかもしれない。

以来、真ッ冬のピアノフレーズは啓さんに丸投げだ。僕が付け焼き刃で学んだ理論でフレーズを考えたところで高が知れている。啓さんには啓さんなりのロジックがあって、積み上げてきた音楽の教養には敵いっこない。

決して怠惰ではない。


そう、決して怠惰ではない。(白目)


さて、『りっとう』がすぐさま完成形に近づき、微調整をしていく中で、そこから約3ヶ月。


はたまた狂ったようにスタジオに入ることになる。




翌年の2021年1月31日
真ッ冬主催の『Story Seller』が決定した。



2020年の10月時点で
『りっとう』『暗転するふたり』が完成。

『white shock』『凋落』は
まだ構想段階だった。

そんな状態で僕は、企画開催を決めた。

理由は一つ。
徹底的に追い込むためだ。

『りっとう』でブーストのかかった僕は、この勢いそのままでライブがしてみたかった。僕は殊創作においては、こんな風にブレーキペダルがぶち壊れることがままある。

ぶっちゃけ啓さんは巻き込まれた形だ。
申し訳ないとは思っている。

初ライブの時と同様、そこから狂ったようにスタジオに入った。ライブに向けての練習も作曲編曲が同時進行だったため、よく頭がパンクした。

しかもピアノフレーズは啓さんに丸投げなので、彼もたまもったもんじゃなかったろう。
申し訳ないとは思っている。

そんなこんなで3ヶ月の時間をかけて、何とか4曲を形にすることが出来た。




曲は何とか形になったが、
大きな問題が一つ横たわる。

緊急事態宣言だ。

あの時は確か2回目だったか3回目だったか………。何度も何度も発令するから覚えられたもんじゃない。"緊急"とは何だったのか。

今思えば、さらっと発令してくれれば諦めがついたものを、その時は緊急事態宣言を発令するか否かの瀬戸際だった。ニュースでも感染者数と共に、緊急事態宣言出るかも?でも大して効果なかったよね??  そんな曖昧な言葉に振り回されて、練習の傍ら僕は気が気じゃなかった。

さらに出演者を集めるのにもかなり苦労した。
バンドも誘いたかったけれど、ステージに3〜4人上がるだけで"密"だ。
せめて弾き語りに絞って声をかけたが、それでもかなりの人数に断られた。世間的には当然のことだ。開催するほうがおかしい。

延期も何度も頭をよぎった。
そもそも3ヶ月のカツカツスケジュールで、しかもこのご時世。2〜3ヶ月くらい延期した方が寧ろいいライブが出来るかもしれない…………。


それでもどうしてもやりたかったのは、『りっとう』を機に沸き立ったこの熱を持ち越す自信がなかったからだ。このまま延期すれば熱が冷めるどころか腐って消えてしまう。

それくらいマジだった。

今よりも混沌としたあの世の中で、僕は恥を忍んで仲間たちに打診した。あの時に出演を承諾してくれた面々には本当に感謝している。


情報が錯綜する日々を悶々と過ごしながらも、何とか緊急事態宣言を免れ、
ライブ当日を迎えることが出来た。




左から、はるかぜ、堀周平、
山崎啓、Amayjigen、イケガヤタツキ
(敬略称)


真ッ冬  セットリスト

1.りっとう
2.暗転するふたり
3.white shock
4.凋落
Ec. ライフイズビューティフル (amazarashi)



自粛ムードの中、普段お世話になっている先輩やバンドの面々が駆けつけてくれた。

出演者のみんなも不安な中、最高のパフォーマンスで僕らにバトンを渡してくれた。


本番。


くだらないミスをたくさんした。

MCで行き場のない愚痴もこぼした。

もっと練習すれば良かったと思う。

もっといいライブが出来たと思う。

それでも、あの時でなければ放出できなかった熱があったと確信している。

そして、アンコールでは啓さんがソロでよくやっていたamazarashiの『ライブイズビューティフル』をデュエットで歌った。以来、真ッ冬のカバーでは定番曲となっている。


ライブ後も感染者が出ることなく、無事に終えることが出来た。都合の良い結果論だけど、本当にやれて良かったと思う。


あの時関わってくれた全ての関係者の方々には、本当に感謝しています。

本当にありがとうございました🙇‍♂️


ライブの打ち上げで、啓さんに
「この3ヶ月どうでした?」と聞くと

「マジで死ぬかと思った」
とげっそりしていた。


マジで死ななくて良かったと思っている。




最後まで読んでいただき
ありがとうございました🙇‍♂️

これからも真ッ冬はゆっくりしっかりのんびりと音楽活動を続けて参ります。

お近くの方、ご都合良い方は
ぜひ気軽にライブにお越しくださいませ🐳


noteもかなり不定期ではありますが、
ちまちま更新していこうと思っています。


また次回、お会いしましょう。


それでは。


Shin Mizumoto.

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