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絵本作家ターシャ・テューダーの生きた道。“スティル・ウォーター”、水のように生きること。


「人生は短いのよ、楽しまなくちゃ」


忙しすぎて心が迷子になっていない?
豊かな人生を送りたいと思ったら心が求めるものを心に聞くしかないわ私は時々腰をおろして ゆっくり味わうの花屋夕焼けや 自然のアリアを人生は短いのよ 楽しまなくちゃ

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より


アメリカの有名な絵本作家、ターシャ・テューダーを知っていますか?

彼女は絵本作家でありながら、農家であり、ガーデナーでもあり、4人の子供を抱えた母でもありました。50代から晩年にかけては、田舎で一人、自給自足の生活をしています。

絵もさながら、彼女はその「庭づくり」にかけても名を馳せています。私は今年から家庭菜園や花を育てることを始めましたが、それはターシャ・テューダーのことを知り、彼女の生き方に感銘を受けたというのが実は大きなきっかけの一つです。



今回は、ターシャ・テューダーの暮らしぶりや生き方についてご紹介したいと思います。


ターシャ・テューダーのことを知りたいのならば、彼女を追ったドキュメンタリー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』を観ることをおススメします。私は大好きすぎて、もう5回くらい見ちゃいました(笑)

▼予告編

https://youtu.be/4N0LebWh2og


ターシャ・テューダーの生い立ち


(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


  • 1915年 ボストンの由緒ある家に生まれ。10代の半ば農業を始める。

  • 21歳の時に後の夫、トーマス・L・マクリーディと出会い、22歳で結婚。

  • ふたりで農業を続け、絵本作家としてもデビュー。

  • 1940年代に4人の子供が次々生まれ、29歳の時には、より広い農場を求めてニューハンプシャー州の田舎に引っ越す。

  • 50歳代半ばよりバーモント州の小さな町のはずれに居を移し、自給自足の一人暮らしを始める。



ターシャが自然との暮らしに憧れを抱いたのは、幼少期に遡ります。彼女は自身の幼少期をこう振り返ります。


両親とも典型的なボストンの文化人。母は美人で芸術の才能に溢れた人。父はとっても愉快な人だった。父も母も魅力的な人だったけど家事や育児は全然できなくて、私の面倒を見てくれたのは乳母のメアリー・バーネット。
第二の母がいたのは幸せね。家事の楽しさを教えてもらって。私が社交界より家事に興味を持って家族は失望しただろうけど、おかげで私は「地に足のついた生き方」を知り、選ぶことができたの。

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より


私が農業に惹かれたのは、伯父が素晴らしい農園を持っていたから。
私はそこで買っていた牛が欲しくてお小遣いを貯めて譲ってと頼んだの。そうしたら伯父は『プレゼントだよ』って。おとぎ話かと思ったわ!コネチカット州にいた10代の半ば、牛を飼うという夢が叶って、独立して農業を始めたの。

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より

彼女はほんの幼い頃から、自然とともにある生活に憧れ、そしてその夢を叶えてきたのですね。


ターシャが「絵」と同じくらいに愛した「暮らし」


彼女の生業は「絵本作家」。絵本を描いて生計を立てながら、しかし彼女が絵と同じくらいに愛情と熱量を捧げていたのが、彼女の「暮らし」、自然に触れ、動物たちと過ごす生活でした。

ターシャの絵本の中に必ず登場しているのは、たくさんの草花や動物たちのいきいきとした姿。それは、彼女が生活の中から直に体験し、観察した「リアルな」姿なのでしょう。


自然とともに植物を育てるのは喜びに満ちたことよ。小さな芽が花をつけ実を結ぶ。こんなにやりがいのあることが他にあるかしら。

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より


(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


ターシャのこだわった「昔ながらの生活」


「昔ながらの生活」にこだわっていたのも、ターシャならではの生き方。彼女は、あらゆるものを手作りし、料理に時間をかけ、伝統的なレシピを大切にしていました。

ドキュメンタリー映画では、昔の道具を愛用し、現代の利器を使わない伝統的なレシピで料理している彼女の様子が映し出されています。


(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


そんな彼女のライフスタイルのあり方は、彼女の手がける絵本にも大いに影響しています。

クリスマスの様子を描いたターシャの作品の一つ『テイク・ジョイ!』について、編集者は語ります。

「テイク・ジョイ!」の出版前年にベトナム戦争が始まっており、戦争が続き社会が混乱する中、家族の絆が見直されていました。
現実とは対極とも言えるターシャの作品や生き方が注目されたのです。(絵本の中で)ターシャの描く、昔ながらの暮らしや家族の姿に多くの人が共感しました。

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より

彼女独特のその「生き方」は、彼女の作品にも世界観として表れているのですね。



人生そのものが、まるで完成された一つの作品


(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


私がターシャについて素晴らしいと思うのは、まるで「職業」と「生活」とを区別しない生き方をしているように見えるからです。


往々にして私たちは、人生を

  • 「仕事」=お金を稼ぐ手段 と

  • 「生活」=雑務、お金を費やすもの

とみなして区別していませんか?


たとえば「生活」であるところのお皿洗いや庭の雑草抜き、洗濯など、お金に変わらないものは「生産的でない」との理由でそれをなるべく省力で行ったり、より効率よく行おうと努めます。

しかしドキュメンタリーの中で見るターシャは、一日の大半を庭の手入れに費やしたり、伝統的なレシピに則って一日がかりでチキンを焼いたり、胸の中でハトの子供を抱いたり…

ひとつひとつのことを、「こなすため」でなく「楽しむため」として、慈しんでいるように見えます。


そしてその生活から育まれた世界観が、そのままに彼女の作品に表れているのを見ると、彼女の人生そのものが、まるで完成された一つの作品のように感じられるのです。


スティル・ウォーター、水のように生きること


(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


そんなターシャは、自身の生き方を「スティル・ウォーター教」と名付けています。

既存の生き方や宗教で自分にぴったり当てはまるものがないと言って、自分で新しいものを作ってしまおう!というのはなんともチャーミングですね。


私は静かな水のようにありたいと「スティルウォーター教」を発明したの
それは私が惹かれる小さな動物たちの生き方にも通じるもの彼らは必要なすべてが身の回りにあると知っているから満ち足りているかたや人間はないものねだりばかり 欲望で不満を膨らませているのまずは静かな水のように世界を受け止め 感謝することから始めたいわ

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より


ドキュメンタリーの中でターシャは、とても愛おしそうに彼女の動物たちや、庭の草花を紹介しています。

仲良しの鶏の名付けの由来を話したり、ハトの幼子を胸の抱いて暖炉で暖まったり、相棒のコーギー犬・メギーのことも、まるで一つの人格を備えた人物かのように語ります。

実際、彼女にとっては動物も人間も、絵本の中のキャラクターのように同じ、立派な「人物」としての、等しい「命」なのでしょう。



ターシャは庭の草木ひとつひとつにも等しく愛情を注いでいました。

他の人が雑草と呼ぶ花もかわいいからたっぷり植えてあるの。

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より


ガーデニングは喜び。人生は短いから好きなことをする、私の場合はそれがガーデニングなの。美しい庭は喜びを与えてくれるわ。
満点の星と同じよ。草原に咲き乱れる白いデイジーを想像してみて。無数のデイジーが光を浴びて輝くの。まさに夜空の星空のように。もう他に何もいらないと思うわ。

ー映画『ターシャテューダー〜静かな水の物語〜』より


まとめ〜愛や好きに沿った生き方は、必ず人の胸を打つ〜


(C)2017 映画「ターシャ・テューダー」製作委員会


必要なものは全てあり、満たされていると感謝して、静かな水のようにこの世界をみたい。昼間ちょっとひと休みして、動物たちも交えておやつを食べる。そんなことで生活はとても楽しくなるわ。

ー著書『ターシャ・テューダーの言葉』より抜粋

ターシャの生き方を、「スローライフ」と括っては、物足りないように感じます。「丁寧に暮らすこと」、だけではなく、彼女はあくまで「自分の好きなものをとことん愛して来た」人生だったのです。

そしてその生き様は今もなお、彼女の世界観から生まれた作品たちは高く評価され、多くの人の胸を打っています。

効率や新しさ、生産性や、一般社会に見る「価値」にすがらない生き方…、「愛に満ちた」生き方は、どんなに時代を経ても、私たちにとって欠かせない何かがあるのでしょう。


私たちはどんどんと未来へ進んで行きますが、何が人間にとって何が普遍的で、いつも新しく、変わらず価値があるかというと、「愛」や「好き」に沿った生き方なのではないでしょうか。


あなたは、何に沿って生きていきたいですか。

どんなふうに、人生の時間を送っていきたいですか。


何かヒントが欲しいときには、このドキュメンタリー映画をちょっと見てみることをオススメします。全員が全員、ターシャのライフスタイルに憧れるわけではないと思いますが、彼女の「好き」を徹底的に愛し、それと共にあった人生を見ると、そういう人生があるのだということ、そういう人生を「選択」しても良いのだと言うことに気付かされます。


人生は短いのよ 楽しまなくちゃ


以上です。最後まで読んでくれてありがとうございました^ ^


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