ONシリーズから20年

20世紀最後の年の日本シリーズの組み合わせを覚えている方はどれだけいるだろうか。

読売ジャイアンツ対福岡ダイエーホークス

当時を経験した方々は、すぐに思い出した方もいるはずだ。長嶋茂雄と王貞治。日本プロ野球に並び立つ両雄が相まみれる決戦に興奮したことだろう。

結果は4勝2敗で長嶋率いる巨人に軍配が上がった。

敵地・東京ドームで2連勝したダイエーだったが、福岡ドームに場所を移した第3戦に飛び出した仁志敏久の守備でのビッグプレーが流れを変えた。巨人はそこから4連勝を果たし、20世紀最後の日本シリーズを制した。

あれから20年。セ・リーグを制した巨人と、ダイエーの文字は消えたものの、そのあとを受け継ぎ、パ・リーグの覇者となったソフトバンクが日本一の座をかけて激突する。

プロ野球を日本を代表する娯楽・文化に引き上げたONの総決算となった日本シリーズは、真の意味での昭和のプロ野球のフィナーレだった。それから20年後の今年の日本シリーズはどうだろうか。

キーワードは「ONの孫世代への継承」だ。

後楽園球場で長嶋の引退スピーチから6年後の1980年、王がひっそりと現役生活を終えた年から丁度20年後にONシリーズが実現した。ONシリーズから20年後の今年は奇しくも両雄の薫陶を受けた者同士が監督として采配を振るう。工藤公康と原辰徳。12球団の監督の中でON双方の下でプレーしたのは、この二人しかいない。

時が経てば、ONの指揮下でプレー経験を持つ選手はグラウンドから姿を消す。事実、その数は年々少なくなっている。その一方で、監督としてのキャリアを積んでいる者もいるものの、こちらもいずれはユニフォームを脱ぐ時が来る。工藤、原の両監督も若手監督ではなくなっており、次世代にバトンを渡す日が迫ってきている。

それだけに、プロ野球が大衆に認められた時代からの流れを途切れさせないように、見ごたえのある日本シリーズとなることを願うばかりだ。故に今年の日本シリーズを戦う両監督には使徒としての役割を期待している。それは一球団のためではなく、球界全体を発展させていくための役割だ。

2000年の日本シリーズが真の意味での昭和のプロ野球のフィナーレだったならば、平成のフィナーレもあれば、令和のフィナーレも来ないはずがない。それでも、前の時代からの歴史を紡ぎながら、新時代を作り上げていくことで球界は発展してきたのだから。









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