《児童小説》 吾、猫になる 1 ようこそ、キャットストリー島4

夢話ノ肆 吾、猫である?

 オットは、ぼんやりしている黒ネコをジィ〜と見つけてどんどん近づき、鼻先が触れるか触れないかギリギリまで迫る。

 「大丈夫だかにぁ〜?目ぇ〜開いて、寝ちゃったんかにゃ?お〜い?」

 オットが呼びかけて、自分の両頬の横で両手を左右に振っている。やっと、気づいた黒ネコは、あまりにも近すぎてびっくりして目を大きく見開いた。

 「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 黒ネコは絶叫上げて、シャキーンと爪を出すと思わずオットの手を引っ掻きそうになる。ただ、それより先にオットが黒ネコの頭にチョップを叩き込む。

 「ぎゃぁぁ!!」

 短く大きな声でうめいた黒ネコは、大粒の涙を溜めて頭を抑えた。

 「失礼なやつだにゃ〜。近くの森に転がってたのを、わたしゃが助けてやったにゃんよぉ〜。いわば、命の恩人にゃよ?爪で引っ掻くなんて、ノーノーにゃ〜よ?」

 「だからって、チョップするは違うと思うにゃ...にゃ?にゃ?にゃにゃ?」

 「にゃぁ〜?やっと目が覚めたかにゃ〜?」

 にーやにーや笑いながら、ドン ドン ドンと大きな足音を立てながら、オットは奥の部屋、カウンターの奥へと引っ込んだ。
 カウンターの奥には不思議な花や雑草が入った、たくさんの瓶が棚に並んでいるし、カウンターより手前には不思議でレトロな雑貨がたくさん置いてあった。
 黒ネコがいるベットがある部屋は、さらにその奥で、雑貨屋の店に寝室がそのまま繋がったというような感じだ。

 「...にゃ...にゃんで、黒ネコになってるにゃか?人間だった、確かに人間だったにゃ...」

 意識がはっきりしてくると、発する言葉も違和感があるのか喋りづらそうに、目に溜まった涙を両手でゴシゴシ擦りながら、背を丸めて悲しそうに呟いている。

 「きみゃぁ〜が、人間だったにゃかはわからんにゃけど、どこからきた、なにがしさんにゃんかをまずは教えてほしいにぁ〜」

 「...どこにゃ...にゃ?え〜...と」

 はてなマークでも浮かんでそうに、腕を組んで首を傾げ始めた黒ネコに、参ったというように顔に手を置いたオットは、やれやれと首を小さく振って、腕組みをしてから片方の前足で黒ネコを刺した。

 「にゃら、名前はにゃんにゃ?それも分からにゃいにゃ?」

 「...えーと...」

 ちょうど見上げた場所に小窓があって、黒ネコには空が見えた。
 
 「...そうにゃ、そら、にゃ」

 そう言って、そらは嬉しそうに微笑んだ。

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