縣千くんをベルばら雪組24年を通して語る回
書き出し
皆様こんにちは、今回は宝塚歌劇団 雪組の縣千くんについて、その魅力とまた目覚ましい成長にスポットライトを当て、
現在公演中の「ベルサイユのばら」を通して、ここが素敵!と語り続ける回です。
すでに縣くんのファンの方も、ちょっと気になってるよという方、
また作品の一部のシーンのみピックアップし、脚本には触れておりませんので
まだ作品を観ていない方でも読んでいただけるような内容になっています。
早速ですが、私が今回の公演でぐっと縣くんに惹かれるようになった一番のポイントは「無理をした頑張っている感」が一気に抜けたからだと感じています。
こう文章にすると偉そうに聞こえてしまいますが、今までも天性の男役にふさわしい身長、すらりとした手、表現力を十分に持っている方でした。
その才能を活かし、エネルギッシュに踊る姿はフレッシュな若手そのもの。
芝居もお役柄どこか愛らしさや未熟さを含んだ面があり、そこも学年とリンクして良さにはなっていましたが、
私の中では、どこか可愛らしい雰囲気を持っていたままでした。
また、縣くんはお役に対して感覚よりも論理から作りこむタイプと感じるのですが、芝居として表現する段階でどうしても考えをすべて出し切れていないイメージを抱いていました。
しかし、本公演のアンドレという役を通しブラッシュアップされ、厚みのある男役さんになった。
彩風さんのお言葉を借りると、
この部分を強く感じられるのはアンドレの年上としての兄のような包容力。本記事では、そんなアンドレの性格と表現に注目していきます。
本編
アンドレという役
アンドレを語る上で外せないのは、想い人オスカルへの従僕ながら幼馴染として、築いてきた友情と秘められた愛情。
決して万能なキャラクターではないが、たおやかに、そばにいるだけで安心し無意識に全てを預けてしまうような包容力。
そして今宵一夜での、十代から募らせた幼馴染への叶わぬ愛情の吐露。
オスカルへの想いこそ激しくも、全体を通しては落ち着きのある性格です。
この一見、二面性があるとも思われる性格を一人の役に落とし込まなければなりません。
また今回のフェルゼン編では、オスカルと二人の場面は今宵一夜にして初めてとなり、短時間でオスカルを振り向かせる説得力を、独白や他の役との関わりで持たせる必要もあります。
そんなアンドレを主に本公演の二場面を引用して語っていきます。
縣くんのアンドレ
第九場 シャトレ夫妻とのやりとり
ロザリーとその夫ベルナールが、パリの民衆たちは一触即発の状況にあることを知らせにきます。
オスカルが妹のようにかわいがり面倒を見た少女。アンドレにとっても妹のような、しかし同じオスカルに強い想いを持つ同士のような存在。
そんなロザリーへの声のかけ方の優しいこと!対等でありながら、さりげなく気を遣う年上として、兄のように頼りになる雰囲気。
また、気さくで親しみやすい声のトーンから、剽軽な性格の面影を感じ、幼少期のオスカルとのやり取りをも思い起こさせるよう。
アンドレの面倒見の良さ、それがオスカルの幼馴染として支えになってきた面をロザリーとの会話を通して知ることができます。
このように想像を広げられるのは、やはり縣くん自身が原作のアンドレから深堀し役を作っているからこそ。古典的な部分もリスペクトしながら、令和のベルばらにふさわしいバランスと思います。
対して、今宵一夜でオスカルに”眠れないのか”とかける声は同じく穏やかに、しかし少し甘さの滲んだ表情をしているのが、似て非なるオスカルへの愛を含んだ優しさだと感じています。
第十五場 独白
幕前芝居でオスカルへの想いを語ります。
自身が失明寸前である状況と想いを、なかなかのスピードで説明し駆け抜けていきます。
前述の場面にてアンドレの性格の土台を、この場面でオスカルへの想いがどれほどのものであるのかをしっかりと観客に伝えることで
オスカルがアンドレのどこに愛を感じてきたのか、直後の今宵一夜のオスカルの感情の動きに説得力を与えることができます。
この際もはや”お前をかばって受けた傷”なんて情報はどうでもいいのです。
ただ温厚なアンドレが焦りを感じているという勢いが大事。
スピーディーな展開も、台詞と歌の繋ぎや力の込めるバランスを取り、芝居の緩急として自分のものにしている点が本当にうまくなったと感じさせます。
まとめ
他にも芝居の細やかさを語りたい部分はあるのですが、引用はここまでに。
上記にあげた点が特に魅力が増した縣くんの見どころです。
もともと細かに役を作り上げてきた縣くんが、その内にあったものを舞台で伝わる芝居にできるようになったのだと。少々頭でっかちになりがちであった情意に技術面が追いつき、追い越したと。
ベースが出来たから余裕ができ、芝居にゆとりを生み出し、それが深みに、魅力に。頭だけで考えた芝居ではなく、想像の余地があるからこそできた役だったと思います。
独占欲のにじむ目つき、包容力、厚みのある男役だからできる部分。
男役十年とはよく言ったもので、節目に近づく学年としてターニングポイントになったのではないかと勝手ながら想像しています。
言葉に出るところはまだ少なくとも、お役に対して深く考察し自分の考えを持ち、向き合うことのできる縣くん。
その内なる部分を、細やかな芝居で様々なお役に挑戦し幅を広げてゆく姿を楽しみに、楽しみにしております。
(おまけでフィナーレの話を少し)
もともと縣くんのダイナミックに空間を踊る長い手足が本当に大好きなのですが、
役の影響でしょうか、しなやかさと色気が加わり、それはもう頭の天辺から足の爪先までもが美しく目を惹かれるように。
階段を下りる際も凛々しく渋みのある表情をしており、また徐々に等身大の笑顔になっていく変化も、学年を重ねても変わらない可愛らしさを持っているような気がしてファンとして目頭が熱くなります。
あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ここからは余談で2つお話を。
余談その1
引用させていただいた彩風さんの宇宙人からの成長を例えたお言葉ですが、はじめてこのレポを読んだときには衝撃的でしたね。
縣くんの以前から持っていた魅力からさらに、目を惹かれる男役への進化。
”タカラジェンヌから男役”という表現はシンプルながらこの二つの間に大きなステップがあることをはっきりと感じられます。
当然のことですが、やはりトップさんはよく組子を見ていますし、彩風さんは芸事に関してそれをとても丁寧に言語化されている方です。
ご本人はご自身を不器用とおっしゃいますが、組子個人と正面から向き合い、ご自身には一番厳しくあられる姿は、組の先頭に立たれる方として本当にトップ中のトップスターでした。
そんな雪組をいま応援できることを嬉しく思い、
”男役 彩風咲奈”がいつまでも生き続ける、これからの雪組を応援していきたい所存です。
余談その2
今宵一夜、書きたい。
今回は縣くんの進化にスポットライトを当てたかったので、あくまでベルばらは引用元として出しました。
もっとベルばらを書きたいなと思いながら、そろそろ仮面ガトボニの円盤が届くので→間に合いませんでした届きました。仮面ガトボニも書きたいななんて考えています。
いっそ贔屓との絡みだけ各作品からピックアップしてもいいし……
あとは、作品全体の書評のようなものも書いてみたいですね。それなら、ほんまほかストルーエンセか……
ちょっと収集つかなくなってきましたので、またの機会に。
マイペースに書くつもりですが、反応やコメントをいただけたら嬉しいです。
というわけで、今回はこのあたりで。
読んでいただきありがとうございました。