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タイムストップ

先日変わったBARを見つけた

BARに行った事がある人なら解ると思うが

薄暗い店内、メロウな洋楽

綺麗に並べられたボトル棚

想像するのも簡単な光景だ

店内は薄暗いのだが

流れている音楽は邦楽だ

洋楽やミッドナイトジャズが

流れていないBARに初めて出会った

そしてボトルはほとんど並べられていない

店員もマスターらしき人が一人だけ

私がカウンターに座ると

スッとおしぼりとチャームが出てきた

「いらっしゃいませ」

「当店はウイスキーとブランデーしかありません」

「それ以外をご所望の場合はヨソでお願いします」

私は痺れた

元々BARではビールやカクテルは飲まないので

望むところだ

私はあえて銘柄を言わず

「バーボンのロックを」と告げた

メニューがないので

値段も何の銘柄があるかも全く分からない

「お待たせしました」

「ブラントンロックです」

ここで初めて銘柄が解った

無駄な事は一切ない

とても心地いい空間だ

客は私だけではなかったが

皆、静かに純粋に酒を楽しんでいる

何よりバックミュージックが邦楽

これが新鮮でとてもいい

少し昔の曲だろうか

聞いたことがある曲もあれば

初めて聞いた曲もある

音楽とは不思議だ

懐かしい曲を聴くと

その当時が蘇ってくる

私は日本で生まれ育ったので

邦楽が私の歴史の大半を彩っている

その記憶がさらに

私を深く酔わせるような気がした

現在でも解散していないと思うが

米米CLUBというバンドがある

昔かなり売れたバンドだったと記憶している

浪漫飛行という歌が好きだったこともあり

CDのアルバムを何枚か聞いたことがある

その中に私の切ない記憶を呼び覚ます曲がある

TIME STOP

アルバムの中の1曲だ

不意に流れ始めたその曲のせいで

また深く酔ってしまう事になる

当時カラオケに行くと必ず

歌ってほしいとせがまれた曲だった

「普通」と呼ばれる恋ではなかったので

とても切なかった事を思い出す

1時間が経とうかというころ

3杯目のグラスを開けた私は

いつもとは比較にならぬほど酔っていた

びっくりするほど安かった店を出て

明るい夜を歩く

またいつか

時間よ止まれと願うような

切ない経験をしたいものだ





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