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野球は漸化式である

このnoteは、東大野球部に学生スタッフとして所属する私、齋藤周が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

「アウト交換」という概念

野球で得点するためには、3アウトを取られるまでにホームにランナーを返さなければいけません。ベースは4つありますから、3つのアウトを取られる前に4回進塁しなければいけないわけです。

要は、野球は漸化式のようなものなんです。一定確率で、いくつかの限られた局面が順番に現れます。0アウト1塁の次は○○%で1アウト2塁になる、みたいな感じです。

東大野球部では、「アウト交換」という言葉がよく使われます。「1つのアウトと交換で1つの進塁を得る」という意味です。

例えば送りバントや犠牲フライなどは典型的なアウト交換ですね。他にも、内野ゴロの間にランナーが進塁するなどのプレーもアウト交換だといえます。

さて、無死1塁の状況を考えてみましょう。ここからアウト交換のプレーが3回起こるとすると、無死1塁→1死2塁→2死3塁→3死となってしまい、得点することができません。すなわち、無死1塁の状況から得点するためには、最低でも1回はアウト交換でない進塁を実現しなければならないのです。

具体的にアウト交換でない進塁にはどのようなものがあるでしょうか。

わかりやすい例としてはヒットや盗塁などがあります。他にも、ヒット1本で2塁からホームに帰ってきたり、送球の間に1つ先の塁まで進むといったプレーもアウト交換でない進塁だと言えますね。(四死球やエラーなどは自チームでコントロールできない要因なので含めていません。)

送りバントや内野ゴロでの進塁などアウト交換のプレーは比較的再現性の高いプレーが多いですが、アウト交換でないプレーは簡単ではありません。ですから私は、このアウト交換でない進塁をいかに作るかというところを日々考えています。

高校野球においては、金属バットの特性から長打が出やすいため、1本のヒットで複数の進塁を達成できる確率も高くなっています。長打は得点を取るためには1番効率がいいですから、トレーニングを積んでパワーをつけ、長打を狙っていくという作戦は合理的だといえるでしょう。

しかし大学野球では長打がかなり減るため、長打以外でいかにアウト交換でない進塁を作るか、というところがキーになります。例えば2020秋の東大では、長打は10試合で二塁打6本、本塁打1本の合計7本でした。1試合あたりでみると0.7本ということになります。

参考までに2020年のプロ野球では、シーズン120試合の中で大体300本くらい長打が出ていました。1試合あたりでみると2.5本という計算になります。MLBではもっと多いことでしょう。これだけ長打が出るならまた状況は変わってきそうです。

このように、同じスポーツでもその時々の細かい競技特性の違いに応じて最適な戦略も変わってくるのですね。何かの参考になれば幸いです。

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