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六大学で勝つために、身につけるべき球種は何か?

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

「防御率をよくする方法」を掘り下げる

前回の記事では、特にホームランの少ない学生野球において、防御率は三振と四死球によってだいたい決まるよ、という話を書きました。

そしてこの記事の公開後、分析を始めるきっかけをくださったTJさんから、Twitter上で「ストライクゾーンで勝負できる球種を持つことがめちゃくちゃ大切だ」というご指摘をいただくことができました。(TJさんありがとうございます!)

そこで今回は、ストライクゾーンで勝負するためにはどんな球種が有効なのか、というところに着目してみようと思います。

感覚的にいうと、落ちる系は空振りを取りやすいとか、ストレート系はファウルが増えそう、みたいなところはあると思うのですが、実際に数字でみるとどうなのでしょうか。

調査対象は2020年の六大学春季リーグと秋季リーグです。内容としては、各球種がストライクゾーンに投げられたとき、それぞれどのくらいの確率でどんなプレーが起こるのかを検証しました。

空振りを取るなら「落ちる系」か「カット・スライダー系」

三振を取れるようになるためにもっとも有効なのは、空振りを取れる球種を習得することですが、実際に空振りを取りやすいのはどの球種なのでしょうか。結果はこんな感じでした。

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空振りという点で見ると、スライダー・カット系やチェンジ・フォーク系が有効で、ストレートやカーブだとあまり取れない、という結果が出ていますね。ストレート以外に自分の武器となる変化球を身につけることの重要性が、よくわかります。

やはり落ちる系は空振りを取れる確率が高いですね。フォークボールは被打率も低く、コントロールさえできれば最強のボールだと言えそうです。

フォークに見劣りしないくらい、カット・スライダー系も空振りを取れる確率が高くなっています。カット・スライダー系は、落ちる系に比べて制御もしやすいので、「ゾーンに投げつつ空振りを狙う」みたいな便利な使い方ができます。

この辺りは、お股ニキ氏の提唱する「スラッター万能説」に通じるところがあるのでしょう。カット・スライダー系は被打率が低く、バットに当たってもヒットになりにくい、ということも言えそうです。

カーブの有効性

もうひとつ着目すべきポイントは、カーブの見逃し率の高さです。

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ストライクゾーンに投げた場合には46%が見逃し、すなわち半分くらいの確率でバッターがスイングしないのです。

近年の野球界では、カーショウ投手に代表されるような強いトップスピンのカーブが高く評価される傾向にあります。実際、早稲田の早川投手はそんな感じのカーブを投げていました。こういうカーブは空振りが取れるので、めちゃくちゃ強力な武器になります。

しかし、普通のカーブでも、カウント稼ぎのためには非常に有効だということがわかります。変化が大きい分コントロールすることの難しさはあると思いますが、ストライクゾーンにカーブが投げられるというだけでも十分武器になるのです。

自分のもつ手札は何か、という視点も必要

このような球種ごとの特徴を踏まえつつ、ピッチャーがピッチデザインをしたりキャッチャーが配球を考えていくことは、非常に重要だと思います。

これに加え、「サイド気味のピッチャーなら縦の変化より横の変化の方が圧倒的に投げやすい」みたいなメカニクス的特徴や、「もともとカット系の真っ直ぐを投げる」みたいな個性も考慮していくべきでしょう。カット系の真っ直ぐを武器にするピッチャーがチェンジアップを習得しようとして、かえってストレートの特徴が失われてしまったら本末転倒になりかねません。

また、同じスライダーでもさまざまな変化のパターンがあるように、ピッチャーが投げるボールは(ストレートも含めて)十人十色です。そういった意味で、今回のデータは一般則に過ぎません。

各球種の一般的な特徴を認識しつつ、選手1人1人の持ち手札を最大限に生かすにはどうすべきか、という視点も忘れないようにしなければいけませんね!

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