見出し画像

「変革」

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

「変革」の起こし方

今日で全体練習は終わり、あとは明日球場の大掃除をして今シーズンは終わりとなります。新チームが発足したのがちょうど1ヶ月くらい前のことですが、まるで数秒前のことのように感じます。

前回と前々回の記事でかなり魂をこめて書いたので、今回は少しライトな内容です。これまで1年生が行っていた球場の片付けを、全学年で均等にやるようになったという話です。

従来型のいわゆる「体育会」的な組織では、下級生が雑用をやって、上級生が偉そうにする、みたいな構造が長く引き継がれてきたと思います。テレビや本などで、引退したアスリートが学生時代の理不尽を語る、みたいな場面もよく目にしてきました。

こうした体質が引き継がれている組織は今もたくさんあると思います。東大野球部でも、「球場の片付けは1年生が行う」という風習が引き継がれていました。1年生はまだ実家住みの人も多いので、駒場で授業を受けたあと、片付けのために自宅とは逆方向にある球場まで1時間弱かけて戻ってくる、みたいなことも日常的でした。

多くの人はこの状況を合理的でないと思うでしょう。とはいえ自分たちが変えるのは大変だし、そもそも自分たちも1年生の時に経験しているわけなので変えるのは不公平だ、というのが積み重なってこの仕組みが維持されてきたのだと思います。

しかし今年の1年生が入ってきてから、この状況が変わりました。今の2年生が1年生と共同で片付けを行うようになったのです。これがきっかけで、3年生も片付けをすべきなのではないかとなり、全学年で片付けを分担するようになりました。

今年の東大野球部のスローガンは「変革」です。「変革」を起こすには、長期的な利益と引き換えに自らが痛みを引き受けるという勇気と覚悟が必要です。今回の例で言えば、1年生とともに片付けをしようと決めた2年生は、他の代と比べて大きな負担を背負うことになりました。

けれども、長期的な利益のために自ら痛みを引き受けてくれたおかげで、東大野球部は大きな一歩を踏み出すことができました。一見小さな変化のようにも見えますが、組織にとっては間違いなく大きな「変革」だったと思います。2年生、ありがとう!

「変革」を広げるために

ここまで「変革」を起こすには痛みを伴う、という話を書いてきました。ここからは、さらにその変革を広げていく方法についてです。

例えば日体大の野球部では、「体育会イノベーション」という取り組みがなされています。上級生こそ率先して雑用などの負担を引き受け、下級生は環境に慣れるための自分づくりに時間を割いているとのことです。

このような取り組みは個人的には素晴らしいなと思うのですが、こうした「変革」を広げるためには、そのチームが結果を残すしかないように思います。

フライボール革命はアストロズがワールドシリーズを制したことで世界中に広まったし、健大高崎の機動破壊も甲子園で結果を残したことで一気に注目されました。そして色々なチームや選手が真似して導入したことで、こうした「変革」が広がっていきました。

ですから、競技スポーツにおける取り組みは、結果を残したかどうかでその正否が判断されます。レギュラー陣は準備や片付けをしないチームがそうでないチームより強いならば、少なくとも競技スポーツという世界においてはそれが一種の正義だと言えるでしょう。

「変革」を広げるためには、勝敗という結果をもってその「変革」の正しさを証明しなければならないのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?