「高めは長打になりやすい」はウソだった!?
このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。
高めストレートの有効性
プロ野球のキャンプも始まり、さまざまな選手のプレーをみたり、球団ごとの練習メニューなどをみたりできるようになったので、うまくチームに取り入れていきたいな、と思っています。
さて今回は、「高めのストレート」は本当に有効なのか?というテーマで書いてみようと思います。
田中将大投手といえば、オフシーズンの間に楽天に復帰することが決まり、大きな話題となりました。そんな田中投手ですが、MLBに移籍してから年を経るにつれて「高めのストレート」の割合が増えていたことがファンの間では知られています。
というのも、データで見ると高めのストレートは空振りを奪いやすく、かつバッターは手を出しやすい、とわかっているからです。
このnoteでも何度か言及していますが、大学野球はプロと比べて長打が少ない、という傾向があります。なので、フライの出やすい高めの直球はさらに有効なのでは?と思ったのですね。
ということで、高めの直球は果たして六大学でも有効なのか?というところをみていきましょう!
高めストレートは長打になりにくい
結果から見ると、ストレートを高さ別に調べた時の結果はこんな感じになっていました。空振り率やファウル率、見逃し率、インプレー率はそれぞれ、ボール判定以外の投球数に対する割合で表しています。
打率で見ると高めが有効で、真ん中と低めは同じくらいであることがわかります。長打率では高め、真ん中、低めの順に悪くなるのですね。また、高めにいくほど空振りやファウルが増え、見逃しが減っていくことがはっきりとわかります。インプレー率はさほど変わらないようです。
野球界ではごく普通に「長打力のある打者には低めに投げろ」という指導がなされていますが、ストレートに限ると「低い投球ほど長打になりやすい」という意外な結果が明らかになったのです。
さらに空振りやファウルも奪いやすいのも高めですから、「高めのストレート」の威力はデータからも示されたと言えるでしょう。
逆に見逃し率は低めにいくほど上がっています。やはりバッター目線で見ると、低めよりも高めの方が手を出しやすいのですね。
このデータをどう生かすか?
さて、大切なのはこのデータをどう生かすか?というところなわけですが、現状では3つくらい考えているところがあります。
まずは普段のピッチング練習の中から「高めのストレート」を意識して投げることです。投球練習でストレートを投げる際は外角低めを狙うのがオーソドックスだと思いますが、田中将大投手は意識して高めも練習しているようです。
ストライクゾーンの上限は、下限に比べてバッターの身長や審判による影響を受けやすいので、それなりのコントロールがないとなかなか使いこなせないでしょう。なので「真っ直ぐの理想はアウトロー」という固定観念に囚われず、日頃から高めのストレートを練習しておく意義はあると思います。
2つ目は、各ピッチャーが自分のストレートの特質を理解することです。
ストレートのホップ成分が強いタイプの投手は高めのストレートがより有効になりますし、逆に垂れ気味のストレートを武器にする投手の場合は高めに投じるリスクが高くなると考えられます。
また、仮に右投手でシュート成分が強いタイプなら、高めの中でも特に右打者のインハイや左打者のアウトハイに投じるストレートが「伸びシュー」のような形でより有効になると思います。この辺りはピッチデザインとも繋がってきますね。
そして3つ目は、守備との連携です。
高めを狙って投げられるようになれば、高めのストレートの時に内野は少し深めに守ってフライに備えるということもできるでしょう。ゴロの確率が大きく低下するため、前の打球に対する意識よりも後ろの打球への意識を強められるのですね。
これにより、ただでさえ低い高めストレートの被打率をさらに下げることも期待できます。
こんな感じで、データに基づいて新しい戦術も使いながら六大学野球をハックしていけるよう、がんばります!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?