見出し画像

「フォアボールのランナーは失点に繋がりやすい」は本当か?

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

活動制限下における東大野球部の現状

1月11日(月)から東大球場への立ち入りが禁止され、東大野球部は活動場所を失うこととなりました。

現在は個人単位で公園や河川敷、バッティングセンターなどを利用し、一人一人ができることをやっています。また、週に一回は縦割りの少人数班でオンラインミーティングを行い、取り組んでいる課題や進捗状況の共有を行っています。

苦しい状況ではありますが、個々のスキルアップに注力する時期として割り切ってまいります。

都内で硬式ボールを使える場所の情報や、スペースを貸していただけるなどがありましたら、ぜひご連絡ください。よろしくお願いします。

「フォアボールのランナーは失点に繋がりやすい」は本当か

さて今回も、投手についての記事です。前々回の記事で、防御率を下げるには四死球数を減らしてストライクゾーンで勝負できるようになることが大事、ということを書きました。

野球界では昔から「フォアボールのランナーは失点に繋がりやすい」ということがよく言われます。この記事を読んで下さっている方なら、一度は聞いたことがあると思います。

しかし、野球というゲームの性質を考えれば、本来安打と四死球の価値は変わらないはずです。起きている現象としては「アウトを与えることなくバッターランナーが出塁する」という点で一致しているからです。

そこで今回は、「四死球で出したランナーは得点に繋がりやすい」が本当なのかを検証していきます。検証する際には、六大学野球の過去8シーズンのデータを参考にしました。

ちなみにフォロアーさんにアンケートを取ってみたところ、「ほんと」が「うそ」を大きく上回っていました。実際のところはどうなのでしょうか。

画像1

まずはグラフでみてみる

まずは、「被安打と防御率の関係」と「与四死球と防御率の関係」をグラフにしました。ここでは「被安打」(ホームランでもツーベースでも全て1としてカウントする方式)を使っているため、理論上は与四死球よりも被安打のほうが防御率に強い影響を与えるはずですが、実際はどうなのでしょうか。

なお、六大学野球はルール上チームごとに試合数が異なるので、被安打や与四死球は1試合あたりの数に直して利用しています。

こちらが被安打と防御率の関係です。赤い線は回帰直線といって、1番ちょうど良さそうなところに引いた線です。

画像2

なので例えば防御率3点台を目指すなら、1試合あたりの被安打を9より少なくすればよさそうだ、ということがわかります。さらに細かくいうと、1イニングにヒット1本以内にできれば、1試合あたり4点以内には抑えられるということです。

次にこちらが与四死球と防御率の関係です。

画像3

1試合あたり2〜4個くらいになるパターンが多いですね。1試合あたり4個以内とかにできれば、防御率は3点台を目指せそうです。

ちなみに、1番左側の点は2020年春の早稲田大学です。このときは今年ドラ1の早川投手を筆頭に、5試合で被安打20、与四死球7、防御率0.77という驚異的な成績でした。(が、勝敗で見ると3勝2敗で3位でした)

防御率との関係性はどちらが強いのか?

では、被安打と与四死球ではどっちの方が防御率との関係性が強いのでしょうか。「相関係数」という数字で調べていきます。

被安打と防御率の相関係数は0.84でした。めちゃくちゃざっくりいうと、関係性の強さを100点満点で表したら、84点くらいだということです。

一方、与四死球と防御率の相関係数は0.88でした。100点満点でいうと88点です。

すなわち、ホームランやツーベースなど一度にたくさん進塁できる可能性がある「被安打」よりも、ただバッターとランナーがひとつずつ進塁するだけの「与四死球」のほうが、失点に繋がりやすいのです。

野球界に昔から伝わる「フォアボールのランナーは失点に繋がりやすい」は本当だったのですね。先人の知恵は偉大です。

なぜそうなるのか?

いったいなぜこのような結果になったのでしょうか。

個人的な仮説としては、「四死球の方が安打よりも投手の能力への依存度が高い」からではないかと考えています。

投手の視点に立って考えてみましょう。

もし仮に「わざと四死球を出してほしい」と言われたら、誰でも簡単に実行できるはずです。ボールゾーンに投げておけばいいからです。

一方、わざと安打を打たせるのはそんなに簡単ではありません。どんなに甘いコースに打ちごろの球を投げても、それをヒットにできるかどうかはバッターの能力次第だからです。

つまり、四死球はほとんどピッチャーの能力だけで発生しますが、安打はピッチャーの能力だけでなくバッターの能力が大きく関係しているのです。よって、被安打の数よりも与四死球のほうが、ピッチャーの能力への依存度が高い、というわけです。

なので、「フォアボールで出たランナーは失点に繋がりやすい」を正確にいうと、「フォアボールを出しやすいピッチャーが投げているので、失点も多くなりやすい」という因果関係になると思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?