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もし東大野球部のデータアナリストが戦略コンサルタントのフレームワークを導入したら〜3〜
このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。
長打を考える
前回までの記事では、野球において得点が発生する要因を洗い出し、各要因についての検証を始めたところでした。まだお読みになっていない方はこちらもぜひ!
さて、今回はじめに検証するのは長打です。
メジャーリーグのstatcastのデータなんかを見るとよくわかるのですが、打球が長打になるかどうか、というのは基本的に打球速度によって規定されます。
打球速度がだいたい140kmくらいを越えてくると長打が出るようになり、ホームランを打つには最低でも160kmくらいが必要、という感じです。
このあたりが気になる方は以下のサイトに行くと、打球速度と打球角度をもとにバッティングシミュレーションができるので、おすすめです。
そしてこの打球速度が何によって決まるかというと、基本的にはスイングスピードの速さとミートの巧拙だと言われています。
スイングスピードに注目すると、打球速度140kmを再現性高く出せるようにするには、スイングスピード135kmくらいが必要だとされています。ホームランに必要な打球速度160kmを達成できる最低限のスイングスピードも、ちょうど135kmくらいですね。
(出典:<打球速度考察>研究者から見る「打球速度」、飛距離を伸ばすための条件とは?【NISSAN BASEBALL LAB】)
なので、長打を出していくために越えるべきハードルは「スイングスピード135km」なわけです。
さらにこのスイングスピードは、除脂肪体重と強く関係していることがわかっています。
(出典:プロ野球選手は速い!?スイングスピードの速度を上げるのに大切なこと)
先程の「スイングスピード135km」を達成するために必要な除脂肪体重は、65kgくらいだとわかります。
体脂肪率を15%と仮定すると、除脂肪体重が65kgを超えるには体重76kgくらいが必要になります。
そのため、すでにある程度の除脂肪体重がある選手については、瞬間的な筋パワーの爆発力を高めたり、スイングを改善してミートの精度が上がれば長打を出せるだろう、という結論になりました。
安打+走塁を考える
得点の3要素、最後の1つは「安打+走塁」でした。
これはヒットで一気に2つ進塁したり、ヒットを打った後に盗塁したりすることで+2が達成できる、というものでしたね。
その中でも特に盗塁については、定量的な検証を行いました。
経済学などでは「損益分岐点」という概念がしばしば使われます。これは簡単にいうと「損得がちょうどつり合うところ」という意味です。
セイバーメトリクスの研究などでは、ランナー1塁からの盗塁の損益分岐点は6割前後であると言われています。すなわち、6割以上決まるなら盗塁した方がおトクですよ、というわけですね。
(出典:「セイバーメトリクス入門」)
奪塁数の考え方からみても、盗塁成功時の奪塁数が+1、盗塁失敗はアウトが1で進塁が-1ですから奪塁数は-2なので、盗塁成功数が失敗数の2倍以上あればプラスになりそうです。
しかし実は、盗塁阻止率というのは平均で見ると3割くらいが普通で、ソフトバンクの甲斐選手でも4割ちょうどくらいだったりします。
なので、成功率6割というのは達成可能な目標なのではないか、と思ったのですね。
さらに、単純走力をそれなりに持っているプレイヤーが多かったこと、これまで走塁練習にあまり力を割いてこなかったため伸びしろがありそうなこと、などから「安打+走塁」に重点的に取り組むのは良さそうだ、という結論になりました。
春までの戦略のまとめ
よって、春までの攻撃面の戦略をまとめると、こんな感じになります。
①チーム全体で盗塁を中心とした走塁面の強化に努める
②ある程度のフィジカルをもった選手は長打を出せるようになる
このようにフレームワークを使いつつ戦略を立てたら、次は実現のための練習です。
どのような練習をしてきたかはまた次回、お楽しみに!
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