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今後NPBで導入が進むホークアイとは何者か。既存のトラックマンとは何が違うのか。

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

トラックマン

そもそもトラックマンとはどういう機械なのか、というところから確認しておきましょう。

トラックマンとは、デンマークに本社を置くトラックマン社が提供する弾道測定器のことです。

サイズは結構小さく、四角い見た目をしています。(広島を除くプロ野球の各本拠地に設置されているのでぜひ探してみてください!)

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元々は軍事用のレーダー技術を応用したもので、ボールに対してレーダーを当てることによりスピードや回転などを計測しています。

救急車が自分の横を通り過ぎるときに、通る前と後ではサイレンの音が変わるという経験がある人も多いかと思います。

あの現象は「ドップラー効果」というのですが、これを応用することで計測が行われているのです。

2015年には全てのMLBの球場にトラックマンが設置され、2018年には日本でも広島を除く11球団で導入されていました。

ホークアイ

しかし2020年のシーズンから、MLBは全ての球場に「ホークアイ」という新しい機器を導入しました。

ホークアイとはソニーの子会社であるホークアイ・イノベーションズ社が提供するシステムのことで、たくさんのカメラの映像をもとにボールやプレーヤーなどを追跡し分析することができます。

サッカーでゴールに入ったかどうか微妙なときや、テニスでライン上にかかっているかどうか微妙なときなどに、CGによる再現で判定しているのをみたことがあるかもしれませんが、あのような場面でもホークアイの技術が用いられています。

見た目はTHE・ビデオカメラという感じです。

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MLBではトラックマンからホークアイに完全に移行しており、今後日本プロ野球でも導入が進むことが予想されます。すでにヤクルトスワローズでは2020年から日本で初めてホークアイが導入されています。

トラックマンとホークアイの違い

一見似たように感じるトラックマンとホークアイでは、何が違うのでしょうか。

まずあげられるのが、取得できるデータの種類です。

トラックマンでは主にボールを追うのがメインですから、ボールのスピードや回転、飛距離、変化量などを計測します。

しかしホークアイはトラックマンで取れる情報に加え、スイングスピードや体の動き方、守備位置、走者や野手の走るスピードなど、さまざまなデータを取ることができます。

特に骨格座標を取得できる(=体の動きを追跡できる)のは革新的で、状態のよい時と悪い時では動きがどう違うのか、じょうずな選手の動作と自分の動作はどこが違うのか、などがわかるようになるのです。対戦相手のクセの発見などにも役立ちそうですね。

また、野手のトラッキングが加わったことで、これまでは客観的な評価が難しかった守備面についても、守備範囲の広さやポジショニング、肩の強さなどを定量的に評価できるようになります。

次に挙げられる違いが、データの正確性です。

トラックマンは、ゴロや高いフライなどの追跡が苦手だとされています。実際に使ってみても、トラックマンで計測された飛距離にはそれなりに誤差があるな、と感じていました。

また個人的に気になっていたこととして、スライダーなどジャイロ成分が多い球種を投げたときに、回転数や回転軸を正確に計測できないという問題点を感じていました。ありえない量の回転数が表示されるバグが、わりと頻繁におこるのです。

このあたりの問題点も、ホークアイによって改善されることが期待されています。(ホークアイの正確性に関しては、英語ではありますがこちらの動画がわかりやすかったです)

というわけで、近年野球界で利用されてきたトラックマンと、今後導入が進むであろうホークアイでは何が違うのか、について書いてみました!


参考にしたwebサイトなど


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