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固定観念を取り払い、データから「配球」を考える

このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。

ラプソードヒッティングが導入されました!

先日、念願だったラプソードヒッティングがついに東大野球部に導入されました。

実際に使ってみて他の大学との打球の質を痛感していますが、日々数字を計測することで少しでも打撃能力の成長速度をあげられたらと思っています。

秋の東大の打撃をお楽しみに!

コース別の投球成績

というわけで今回は、コース別の打者のアクションがテーマです。

よく「変化球は低めに」とか「困ったらアウトロー」とか言われるわけですが、本当にそれが正しいのか?と思ったことはないでしょうか。

僕がデータを用いてやりたいことの1つに、経験則や感覚からなる野球界の「常識」を、データをもとにアップデートする、というものがあります。

例えば野球界には「変わったところに打球が飛ぶ」という言葉がありますね。選手が変わるとそこに打球が行きやすい、という意味です。

しかし、冷静に考えればそんなはずはありません。(これについてはデータをとったわけではありませんが)

たまたまそういう事象が起きた時に「やっぱり変わったところに飛んだ!」と感じてしまうため、このような言葉が使われてきたのだと思います。

同じように投球コースについてもいろいろなことが言われていますが、実際のところどうなのかを検証するため、今回は2021年春の六大学リーグのデータをコース別に分類してみました!

ストレート

まず見るのはストレートのコース別データです。

ブルペンでは、ストレートも変化球も低めに投げる練習が基本かと思いますが、メジャー帰りの田中将大投手が高めのストレートを練習していた、というニュースが一時期話題になっていました。

これはデータを検証してみたら高めの方が空振りや凡フライに打ち取りやすかったため、意図して投げるようになったとのこと。

というわけで、3×3のコース別に投球結果がどう変わるのか、実際のデータがこちらです!

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どれも各コースの投球数に対する割合を表示したものですが、まずは左上からみていきましょう。

左上のファール率のグラフからは、投じた高さが高くなるほどファールの割合が増えることがわかると思います。1番ファールになりやすいコースは外角高めでした。

右上の見逃し率のグラフでは、ダントツで外角低めと内角低めの数字が高くなっています。全体的な傾向で言えば高めより低め、真ん中より内角や外角の方が見逃し率が高いですね。

左下の空振り率のグラフでは、内角高めの空振り率の高さが目立っています。内角や真ん中では高めの方が空振りを取りやすいのに対し、外角では低めの方が空振りが取りやすい、というのも面白いポイントです。

右下の安打率のグラフでは、やはり四隅だとヒットを打たれにくいことがデータでも実証されました。ど真ん中よりも真ん中高めや真ん中低めの方が打たれやすい、というのは少し意外ですね。

ということで、ストレートのコース別データをまとめると、こんな感じになります!

①ファールになりやすいのは低めより高め
②見逃しを取るなら内角低めor外角低め
③空振りを奪うなら内角高めがもっとも有効
④ヒットを打たれにくいのは四隅

ということで、今度は変化球をみていきましょう!

変化球

変化球のコース別データはこちらです。

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変化球についても左上から順にみていきましょう。

まず左上のファール率は、真ん中低めが最も高く、真ん中高めや外角真ん中がそれに続いています。四隅はファールになりにくいようですね。

次に右上の見逃し率を見ると、外角高めが非常に高くなっています。半分以上は見逃してくれるわけですから、バックドアの変化球の有効性がわかります。全体的な傾向で見ると低めより高めの方が見逃しが増える傾向にあります。高めのボールゾーンから入ってくる球にはなかなか反応しづらいのでしょう。

左下の空振り率のグラフを見ると、低めに投げるほど空振りを奪いやすいことが顕著にあらわれています。ストレートの空振り率では内角高めの14%が最大ですから、空振りを取るにはやはり変化球の方が向いているようです。

最後に安打率を見ると、最も低いのは外角高めになっています。外角高めはダントツで見逃し率が高いことから、このような結果になったのでしょう。全体的な傾向で見ると、低めより高めの方が打たれにくい、というやや意外な結果となりました。

というわけで変化球についてまとめるとこんな感じです!

①見逃しが多いのはダントツで外角高め、その次に内角高め
②空振りを取りやすいのは高めより低め
③安打率が低いのは高め

実際の投球にどう活かすか?

ここまではデータを見てきたので、ここからは実際の投球にどのように活かせそうか?という観点から少し書いてみようと思います。

まず0,1ストライクにおいては、基本戦略としてはストライクをとってカウントを有利にしていきたいところでしょう。

なので、ストレートであれば外角低めや内角低めで見逃しを取るのが最善策だと思います。スイングされなければ絶対にヒットにもならないからです。

一方変化球を投げる場合は、ボールの高さから入ってくる変化球がかなり有効なようです。さらにコースもボールのところから曲げて来られればなお良いでしょう。理想はアウトハイのバックドアです。

2ストライクになると、打者はストライクだと思えば全て手を出してきますから、特にストレートの場合は見逃しよりも空振りを狙う方が合理的でしょう。

そうなると、ホップ成分の多い投手であれば高めに狙って投げることは有効だと考えられます。理想は内角高めですが、真ん中高めでもそこそこ空振りを取れそうです。ただし内角高めに比べて真ん中高めは安打率がはるかに高いので、そこは注意が必要ですね。

逆にホップ成分が少なければ、内角低めや外角低めが有効でしょう。安打を打たれにくいのは四隅なので、垂れてくれれば内野ゴロを取りやすいと考えられます。

変化球の場合は、やはり低めに投げることが有効でしょう。今回のデータではストライクゾーンに来たもののみを集計していますが、変化球の場合は低めのボールゾーンでも空振りを取れますから、空振りを取るにはやはり低めに投じることが重要になります。

高めの変化球については、虚を突かれて見逃しを取れるかもしれませんが、スイングされたら空振りにはなりにくいので、このプラスとマイナスのどちらが大きいかはわかりません。もしかしたら意外と見逃しを取れるのかもしれません。

と、こんな感じで今回はコース別の投球分析をしてみました。

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