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実はOPSよりも大切な指標があった、という話
このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。
一般的にはOPS最強説が有力
最近はピッチャーの球種系とかキャッチャー関係とか、守備面の話を取り上げることが多かったのですが、今回は攻撃面について書いてみようと思います。
一般的に、得点を最大化するために最も重要なのはOPSだ、ということがよく言われています。Wikipediaとbaseballgeeksの記事によれば、得点との相関係数が強い(=重要度が高い)順に並べると、
MLB → OPS(0.941) > 長打率(0.913) ≒ 出塁率(0.910) > 打率(0.849)
NPB → OPS(0.947) > 長打率(0.902) > 出塁率(0.853) > 打率(0.798)
となるようです。値は多少違いますが、順番はどちらも同じになっていますね。
ちなみに昨日Twitterでアンケートしてみたところ、OPSが最有力でした。野球Twitter族の方々、さすがです!
なので、セイバーメトリクス界隈ではOPSの高さがすごく重要視されています。直感的にも、単に安打数だけを考慮した打率よりは、四死球を考慮した出塁率や長打を考慮した長打率の方が重要で、さらにそれらを足し合わせたOPSが最強、というのは納得できそうです。
そこで今回は、六大学に限って見た時にこの順番がどうなるのか、というのを調べてみました。使ったのは過去8シーズンの六大学のデータです。
六大学だとどうなるのか?
結果をグラフにしてずらっと並べると、こんな感じでした。
やっぱり打率はばらつきが大きいな、ということは読み取れそうですね。しかし他の数字はいまいちよくわかりません。
なので、ここでも相関係数を使って調べました。相関係数は「2つの指標の関係がどのくらい強いのか」を表す数字です。結果はこんな感じでした。
六大学 → 出塁率(0.937) ≒ OPS(0.934) > 長打率(0.903) > 打率(0.880)
(参考)
MLB → OPS(0.941) > 長打率(0.913) ≒ 出塁率(0.910) > 打率(0.849)
NPB → OPS(0.947) > 長打率(0.902) > 出塁率(0.853) > 打率(0.798)
なんと、あれほど最強だと言われていたOPSよりも、出塁率の方が得点との関係が強かったのです。これは、データアナリストにとっては大事件です。
しかし、どうしてこんな結果になったのでしょうか。ここを掘り下げて考えてみたいと思います。
なぜそうなるのか?
個人的に1番有力だと思っているのは、「長打(特に本塁打)が少ないので、長打の重要性が相対的に下がっている説」です。
「スラッシュライン」と呼ばれるデータがあります。打率、出塁率、長打率をスラッシュで区切って並べることからこの名前がついています。ためしに六大学、NPB、MLBのスラッシュラインを並べてみましょう。
打率 出塁率 長打率
六大学 0.241 / 0.316 / 0.341 (過去8シーズン)
NPB 0.250 / 0.325 / 0.384 (2020年)
MLB 0.252 / 0.323 / 0.435 (2019年)
こう見ると、打率や出塁率はあまり変わらないものの、長打率については六大学 < NPB < MLBとなっていることがはっきりわかります。要は、六大学野球というのはかなりスモールベースボール寄りなわけです。
さらに長打の内訳をみてみましょう。1試合あたり何本の二塁打と本塁打が出るのか、という数字を出してみました。
1試合あたり二塁打 六大学:2.71本 NPB:2.88本 MLB:3.14本
1試合あたり本塁打 六大学:0.99本 NPB:1.79本 MLB:2.56本
二塁打はあまり差がないのですが、ホームランを見るとNPBは六大学の2倍近く、MLBは六大学の2.5倍以上も差があるのです。
なので結論をいうと、六大学野球は本塁打が出にくいのでOPSよりも出塁率の方が重要度が高い、ということになります。高校野球は金属バットを使いますし、プロの選手たちは打撃能力がめちゃくちゃ高いので、どちらもそこそこホームランを打てます。そういう意味で、大学野球は最もホームランの出にくいスポーツなので、出塁率の重要性が高くなっているのではないか、という話でした!
これは決して長打がいらないというわけではなく、むしろ長打の少ない六大学でホームランを量産できれば圧倒的な武器になりうる、ということでもあると思っています。ホームランのもたらす利益はそれだけ大きいのですね!
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