「フレーミング」を考える
このnoteは、東大野球部に学生スタッフ兼アナリストとして所属する私、齋藤周(Twitter→@Amapenpen)が、日々の練習内容や気づいたことをメモしておくためのものです。
先日、昨シーズンのフレーミングデータをまとめていたのですが、その際にいくつか思ったことがあったので、ここに書いておこうと思います。フレーミングに関してはまだあまりつかめていないところもあるので、間違っていたらすみません。
フレーミング能力の重要度は高い
まず一つ目に、フレーミング能力の重要度は僕の想像以上に高かった、ということです。
「ボール→ストライク判定」を+1、「ストライク→ボール判定」を-1として計算すると、キャッチャーの能力で獲得したストライクの数がわかるなと思ってやってみたのですが、キャッチャーによって最大で1試合あたり5〜6くらいの差がありました。
かなり大きいですね。僕が想像していたよりはだいぶ多かったです。大ざっぱにいえば、キャッチャーのフレーミング能力で、1試合につきアウト2個分くらい変わってくるのですね。
野球において野手が打席に立ったり打球を捌いたりする機会は少ないため、1試合あたりで見た時にプレーヤー間で生じる差はヒット1本とアウト1個くらいだとすると、フレーミングは選手間でアウト2個分くらい差がつくわけです。
そう考えると、キャッチャーのフレーミングの重要度は、世間一般の認識よりも高いのではないでしょうか。時間をさいて練習する価値のあるところだと思います。
ピッチャーのコマンド能力と関係するかも?
そして二つ目は、キャッチャーの能力として語られるフレーミングの指標は、ピッチャーのコマンド能力にそこそこ依存するのではないか、ということです。
通常フレーミングを評価する際には、ストライクゾーンに来た球をボール判定にされた割合や、ボールゾーンに来た球をストライク判定にした割合で語られることが多いと思います。
そこで実際にこれを調べてみると、めちゃくちゃストライクなのにボール判定されている、みたいなことがありました。原因としては、カーブなどの変化の大きい球種だった、逆球だった、審判側の問題、の3パターンくらいが考えられると思います。
投球の変化の大きさが原因の場合は、逆に判定の難しさにより恩恵を受けることもありそうなので、まあまあ公平であるように思えます。またそういう球種を投げる割合も、基本的にはさほど高くないでしょう。
審判側の問題だった場合は、これは一定確率で生じるバグなのである意味公平です。そして発生する確率も高くないでしょう。
問題は逆球だったパターンです。これはキャッチャーの能力に依存しないですし、確率的にも1番発生しやすいような気がしています。さらに各チームの投手陣のコントロール能力には差があるはずなので、ここは公平ではありません。
よってストライクをボール判定された割合は、キャッチャーの能力だけでなくチームのピッチャーのコマンド能力にもまあまあ依存しているのではないか、と思っています。コントロールの良い投手が多いチームとそうでないチームでは、必ずしも横並びに比較できないでしょう。
ボールをストライクにする能力を数値化するのは難しい
三つ目は、ボールをストライクにする能力を数値化するのは難しいということです。
単純にボールをストライクにした割合で考えると、明らかなボールが多い場合はどうしても数字が低くなってしまいます。キャッチャーのフレーミングで判定が変わってくるゾーンはかなり限られているからです。
とはいえ「どのくらい惜しいボールだったか」に応じた指標を作るのはかなり大変です。ストライクゾーンは審判や試合状況などさまざまな要因の影響を受けて変化することがわかっているからです。
なので、現段階で1番いいのは散布図を見ることでしょう。散布図を見れば、フレーミングが得意なコースと苦手なコース、どのくらい安定感があるか、などは一目でわかります。そのためにも、ぜひNPBには一球ごとの厳密な投球位置を公開してもらいたいところですね!
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