見出し画像

まあお訳古今集 恋はいちごを添えて拾捌

 いよいよ師走に入ってしまいましたね、毎度おなじみ自称作家の あまおう まあお です。皆さん、師走に向かって走ってますかー?(違) 私も年末はかき入れ時なので、昼も夜も土日祝日すべて無視して働いてます(ヽ´ω`) もう正直限界なんですけどね……。

 平安お貴族の皆さんも、年末年始はお忙しかったりしたんでしょうか。なんちゃらの儀とかなんとかの大祓へとか、やってそうな感じはしますね。この時代、年を越すのは今より重大な行事だったと思いますから。

 そんな中でもどうせ恋文とか送っていたに違いない平安貴族の皆様のお歌、ちょっと鑑賞して一息いれましょうかねー^ -☆

恋歌三 詠み人しらず
思へども人めつゝみの高ければ かはと見ながらえこそわたらね

逢いたいとは思う。だが堤防のように物見「高い」人がいるだろう。川の向こう岸にいるあなたを見ながら、渡れない僕を分かってほしいよ。 #いちご訳

つつみ-かは が二重になっているのがミソ。
堤-川と、慎み(遠慮)-彼は(向こう側)ということ。
なかなか巧いなあとは思うんですが、どうも理屈っぽいというか、あまり好きなタイプではないですね。
川を渡れる日は来ないんじゃないかと思います!
#バッサリ #すべて個人の趣味ですが

恋歌三 詠み人しらず
たぎつ瀬のはやき心を なにしかも人めつゝみのせきとゞむらん

早く君に逢いたい。それなのにどうして、あいつら僕の邪魔なんかするんだろう。見ているだけの人なのに、まるで水をせき止める堤防みたいに感じてしまう!  #いちご訳

ユーモア系に(他人への)うらみが入った、愉快な歌!
これは、かわいい感じがしますね。
「つゝみ」の使い方は昨日の歌と全く同じで、「慎み」と「堤」です。全体的には堤の方が生きて、瀬とせきとゞむが縁語。
たぎつ瀬と言えば思い出す歌もありますが、これはこれで完成度の高い一首と思います!

恋歌三 紀友則
紅の色にはいでじ 隠れ沼のしたにかよひて恋ひは死ぬとも

紅だなんてとんでもない。たとえ死んだってかまわないんだ。俺はこの恋を隠し通して、窒息してしまうだろうよ。 #いちご訳

tomonoriさんらしからぬ情熱系! ぶっちゃけ、好みのタイプでーす!
ポイントは隠れ沼(かくれぬ)。万葉集では隠り沼(こもりぬ)と言います。水が出ていくところがなくて、淀んでいる。草に覆われて見えない沼。
恋の底なし沼のイメージでしょうね。陰鬱な感じがなんともそそる一首でございます。

恋歌三 凡河内躬恒
冬の池にすむにほどりのつれもなく そこに通ふと人に知らすな

冬の池の「にほ鳥」のようにさりげなく通いますから、どうかこのことは、ご内密に願います。 #いちご訳

にほどりって何? カイツブリのことです。で、そのカイツブリって何ですか?
湖でよく見られる茶色い水鳥みたいですね。カモっぽいけど全然違う種類だそうです。餌を取るのに「底に」行くのと「其処に」通ふを掛けた歌のようです。
後撰集に上が一緒で「したにかよはん人にしらすな」がありました。

恋歌三 凡河内躬恒
さゝの葉におく初霜の夜をさむみ しみはつくとも色にいでめや

寒い夜です。笹の葉に初霜が降りて凍りついてしまいますが、氷は透明ですから色が出ないので安心ですよね? #いちご訳

圧が……すごい……!
これ、私は色に出しませんよ、と言っているだけなのか、お前も黙っておけよと言っているのか分からないんですが、とりあえずこんな歌をいただいたら私は黙ります
同じ躬恒さんの作。
夜を寒み置く初霜をはらひつつ 草の枕にあまた旅寝む
雰囲気がぜんぜん違いますね!

恋歌三 詠み人しらず
山科の音羽の山の おとにだに人の知るべくわが恋ひめかも

山科の音羽山じゃないんだから、音に聞こえるような恋なんて、私がするとでもお思いかしら? #いちご訳

あっ、このひと強い!(確信)
このうたある人、近江の采女のとなん申す。
と書いてあります。「恋ひめかも」はちょうど仮名序の「恋ひざらめかも」と逆になっていますが、文法的には同じ「反語の終助詞」でよろしいと思います。
和歌の中にも、詠嘆はよく出てきますが、反語の方は珍しいようです。

恋歌三 清原深養父
みつ潮の流れひるまをあひがたみ みるめの浦によるをこそ待て

昼は満潮、「干るま」で逢えないので。浦にみるめが出てくる夜を僕は待っているんですよ。 #いちご訳

さすが深養父。さすやぶ!
「ひるま」は昼間と干るま、「よる」は夜と寄る、「みるめ」が海松布と見る目の三段構え。しかも全体に一貫した海の歌……。これは、巧い!
あひ「がた」みも「潟」って言いたいんじゃないかとのこと。凝ってますね!
これは、さすやぶ! #さすやぶ

恋歌三 平貞文
白川の知らずともいはじ 底きよみ流れて世々にすまんと思へば

白川は、こんなに奇麗な水底だから時が流れてもずっと住んでいたいと思うんです。「しら」川だから「知ら」ないなんて、僕は言わない。 #いちご訳

ああ……うん。
奇麗な白川のように偽りなく見渡せる僕の胸のうち。ということらしいです。
通常、川底が奇麗に見えるのって浅瀬なんですよねえ。世々に流れて干上がって、泣かされないといいですね。
底あさみ清き流れも世々に絶え 袖のしづくもたれか白川 まあをダジャレにはダジャレ返し!

恋歌三 紀友則
したにのみ恋ふればくるし 玉のをのたえてみだれん 人なとがめそ

秘めた思いなんて苦しくてたまらない。美しい玉をつないだ首飾りだって切れて乱れ飛ぶものじゃないか。何か文句があるのか。 #いちご訳

tomonoriさん、芸風変えたんですかね? これくらい情熱系の方、好みなんですよねえ……!
玉の緒は「絶えて乱れて」、ネックレス的なものが切れてばらばらになるイメージ。万葉集に類似ありとのことですが私はこれ。
ぬき乱る人こそあるらし白玉のまなくも散るか袖のせばきに
業平様好きなもんで。

恋歌三 紀友則
我が恋を忍びかねては あしひきの山橘の 色にいでぬべし

ああもうダメだ、隠しきれない。僕の恋心はとうとう山橘の赤い実のように色鮮やかに白日のもとに……。 #いちご訳

そして、ついに色に出でてしまわれました!
山橘って聞いたことないですね? 万葉集にはたまに出てくるようです。ヤブコウジのこと、とのことですが、なんかこれ見たことあるかも。
冬に小さい赤い実をつけるので雪と合わせて。
この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む(大伴家持)

 今回はこんなもんかな。続けていてもさっぱり人気の出ないこのシリーズですがww 私はどこまでも続ける所存です! 個人的にはこういうの、嫌いじゃないですね。ただ世間的に意味のある活動かというとそれは……;^ ^ まあ、いいでしょう。
 今年の古今集はここでおしまいです! 次回は2021年に、再開しますよ!

 時を超えて詠まれる歌は、一年二年など誤差にもならない。
 うつくしい日本の歌を、また詠いましょう!
 いつでもフォロワー大募集中、自称作家の あまおう まあお でした^ ^ノ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?