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まあお訳古今集 恋はいちごを添えて弐拾玖

なんだか日に日に寒くなってまいりましたね、ご安全にお過ごしですか? 自称作家の あまおう まあお です^ ^ノ

この時期は一年で唯一と言っていい「公募の締め切りがあんまない時期」となっておりますので、今年はここぞとばかりに養生させていただいておりますm(_ _)m いやー、なんか今年事件が起こりすぎて神経まいっちって。その顛末についてはいずれ、なんらかの形で文章化する予定ですのでお楽しみに……!

それでは今回も恋歌を見てゆきましょうかねー♪

恋歌五 貞登
一人のみながめふるやのつまなれば 人を忍ぶの草ぞおひける

私、ひとり。古家の軒に忘れられたの。あなたのことばかり思い返して時が過ぎれば、ほら。忍ぶ草がもうこんなに生えているわ……#いちご訳

古今集らしい技巧が光る歌ですが、歌人というより皇子です。仁明天皇の第十五皇子とのことで、さすがに王位は回って来なかったかー
ながめ…長雨/眺め ふるや…古家/降る/経る つま…端/妻 忍ぶ草…シダ/あなたを偲ぶ
隙間なく詠み込まれてテンコ盛りですが、いまいち話が見えませんね。

恋歌五 僧正遍照
わが宿は道もなきまで荒れにけり つれなき人を待つとせしまに

私の家は荒れ果ててしまったわ。あなただけを待っていた庭には草が生えてもう通る道もないのよ。#いちご訳

訳すまでもない感じでしたが一応訳しました。私まだ待ってますよアピールだとすると正直重いですけどね。
草、抜けば?
とか言いたくなります。それにぶっちゃけ、二週間も放置しとけば草ぼーぼーじゃないんですか?
最強の除草剤は塩だそうですが、土が傷むのでおすすめはできません! #草むしろ

恋歌五 僧正遍照
今こんといひて別れし朝(あした)より 思ひくらしのねをのみぞなく

すぐにまた会えるよ、なんて言うあなた。送り出しては日がな一日、泣いているだけ私ひぐらし #いちご訳

ヒグラシと日暮らしは掛けられ続けて千年。昔、某掲示板に「その日暮らし板」ってのがあってよく見てたんですよ、私。
ねをのみぞなく、音に泣く(鳴く)はたまに出て来るやつでウグイス、ホトトギス、ニワトリ、珍しいやつでワレカラ(虫)等があるようです。
もうすぐその歌も出るので、お楽しみに!

恋歌五 詠み人しらず
こめやとは思ふものから ひぐらしのなく夕ぐれは立ち待たれつゝ

望みは薄いと思ってはいるのよ。だけどひぐらしの声が聞こえると私、あなたが来るのじゃないかとつい、立ちあがってしまうわ…… #いちご訳

米屋の話ではありません。来めや、で反語表現ですね。来るかなあ、いやまあ来ないんだろうけどね、という若干のツンデレ風味を感じます。
「ものから」今回は逆接ですね。これほんと試験に出るやつだから、何度でも言いますよ! 文脈で分からない場合は中世以前は逆接で覚えて。
#絶対出ます

恋歌五 詠み人しらず
いましはとわびにしものを さゝがにの衣にかゝり我をたのむる

ついにもうおしまいだわ。絶望のどん底でふと見ると、ねえ、蜘蛛が衣にとりついているのよ。もうたまらないわ、あたし。#いちご訳

私は知らなかったんですが、ささがにはカニではなく蜘蛛です。蜘蛛がつくと待ち人が来るという俗信だとか。
「蜘蛛の振舞い」というそうですが、なんで?
私は蜘蛛苦手じゃないので小さいやつならいいですが、アシダカさんだったら悲鳴を上げるかもしれません……毒蜘蛛のいない国って感じしますね。

恋歌五 詠み人しらず
今はこじと思ふものから わすれつゝ待たるゝ事の まだもやまぬか

あの人はもう来ない。頭では分かっているはずなのに、困ったものね。まだ心があなたを、待ってしまうの。#いちご訳

ザ・失恋。って感じですね。現代では別れた後も連絡を待っているのは男性という偏見はあるのですが、どうでしょうね。
やまぬか、のあたりに分かっちゃいるけどやめられない感情を読みましたので、そのように訳してみました。
気持ちはわかるけど次行った方がいいですよ。
#バッサリ #アキラメロン

恋歌五 詠み人しらず
月夜にはこぬ人またる かき曇り雨もふらなん わびつゝもねん

なんて素敵な月の晩。早く曇って雨が降ればいいのに。来ぬ人を待って眠れない夜はもうたくさんだわ。#いちご訳

あの人が来ないから、月夜さえ厭わしいというちょっとひねくれた歌ですね。
ちょっとくらいひねくれている方が、歌や小説はうまくなると思うんですがまあ……モテないんでしょうね。
#お察しします #素直がいちばん

恋歌五 詠み人しらず
うゑていにし秋田刈るまで見えこねば けさ初雁の ねにぞなきぬる

あなたが植えた苗が刈り取るまでなりました。あなたの代わりに今朝、初雁が来たんですよ。その声に私も泣いてしまいました。今はもう、秋なのですか。#いちご訳

三十一文字の中に初夏から秋へと、時の流れが詠まれています……ToTノ
まあでも実際、飽きたのでしょうね。もしかしたら何かのっぴきならない事情があるのかもしれませんが。
ねになく、今回は雁で。
待ちぼうけシリーズ、まだまだ続きます。
#しみったれたゾーンに入りました #毎日失恋の歌ばかり

恋歌五 詠み人しらず
こぬ人をまつ夕ぐれの秋風は いかに吹けばかわびしかるらむ

あの人はもう来ないの。夕暮れの秋風が悲しい。いったいどんなふうに吹いているというのかしらね。#いちご訳

松とか飽きとか掛けそうで敢えて掛けない。素直な歌風が好感度高し。
定家のこれと比べる人が多いようです。
来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
技法がない方が、しみじみと伝わる心情もあるのかなと。どちらか慰めることになったら夕暮の秋風さんの方にするでしょうからねえ。

恋歌五 詠み人しらず
久しくもなりにけるかな 住江のまつは苦しきものにぞありける

もうずいぶん長く会っていないなあ。待つというのは苦しいものですよ、ほんと。#いちご訳

どうせこれおじさんの歌だろ? 待ってないで行ってみたら? 門前払いなら待つとかじゃないからね。
久しいと松は縁語なのかよく分かりませんが、セットみたいですね。こういう歌もらっても少しも嬉しくないと思うんです。なんかうまいこと言った感あるし。
#超辛口 #個人の趣味です

恋歌五 兼覧王
住江のまつほど久になりぬれば あしたづのねになかぬ日はなし

住江の松くらいに久しくあなたを待っています。鶴のように毎日、毎日、音をあげながら。#いちご訳

松と鶴。なんだか妙に縁起のいい絵面で、個性がありますね!
「久しい」感じを表現したのだと思いますが、なんかめでたい気がしてしまいました。
兼覧王は 惟喬親王の子ということで、古今集には五首採録されています。 惟喬親王は伊勢物語に何回も出て来るので一部界隈では有名ですね。

恋歌五 伊勢
三輪の山いかに待ちみん 年ふともたづぬる人もあらじと思へば

さてどうやって待ちましょうか、あなた何年経ってももう三輪山へ訪ねてくることもないと思うのですが。#いちご訳

伊勢さんより仲平の朝臣宛てと書いてあります。
三輪山はどうも伊勢さんの父上の転勤先ということらしい。
詠み人しらず「わが庵は三輪の山もと恋しくはとぶらいきませ杉立てるかど
比べますと、かわいさが全然違っておりますよ、伊勢さん……!
#それで破局か #あっそーん

恋歌五 雲林院親王
吹きまよふ野風をさむみ 秋はぎのうつりもゆくか 人の心の

吹き惑う風がこんなに寒いのですもの。萩の色も褪せてゆくわね、ねえ、あなた? #いちご訳

最後の「人の心の」がやたらねちっとしていたので女性主人公にしてみました。男でこれだとドン引きしたくなるので。
雲林院親王、この歌以外では 詞書にちらほら登場しています。仁明天皇の第七皇子で更衣の子みたいですね。文徳天皇は異母兄。父崩御後悲しみのあまり出家したとあります。

恋歌五 小野小町
今はとて わが身時雨にふりぬれば 言の葉さへに移ろひにけり

もう駄目ね。一人時雨に濡れて泣いても、木の葉どころか言の葉さえも変わってしまったわ。うそつき…… #いちご訳

やっぱこの人、天才ですわ。葉の色変わり、とか言の葉、とかそんなに珍しいものでもないし、時雨降ると我が身経るもよくある感じはしますが、この全体の自然な美しさ……ただものじゃないですよね。
明日これの返し歌の予定なんですが、正直心配しかありません。
#返せるのか #返事しないのもまずい

恋歌五 小野貞樹
人を思ふ心この葉にあらばこそ 風のまにまにちりもみだれめ

木の葉のような恋心ならば、風に吹かれて舞い散るだろうさ。だが俺の心は木の葉のように軽くはないぞ。#いちご訳

お! これは好感触。技法的には小町の「移ろひ」を受けて「散る」を出したとみるようです
単体で見てもすっきりまとまった男らしい歌、めげずうますぎず、これは及第点あげていいんじゃないでしょうか?
#合格 #よく返したな #小町の彼氏の格を見せた

今回はまた待ち人が来ない方が続出しておられますねToT みんなぼろぼろやないかーい! とは言え。ぼろぼろな歌とか詠んでいられるってことは本当に弱ってはいないと思うんですよね。
本当に夢も希望もなかったら、歌どころじゃなくなっているはずですから……。そういう意味では、失恋も名歌に変えて生きる力を見せつけていると言えなくもないんでしょうね。

さてさて。次はどんな歌が続くのやら。なんだか先が思いやられてしまう、あまおう まあお ですが;^ ^ それはそれとしてフォロワーはいつでも大募集しております☆ ほとんどの場合フォロバしてますのでお気軽にどうぞ~!!

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