進化思考を読んで。希望となるメッセージが、種火のように読者の心に宿る。 太田直樹氏
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進化思考を読んで。希望となるメッセージが、種火のように読者の心に宿る。 太田直樹氏

海士の風

※こちらの記事は、太田直樹氏がSNSに投稿したものを許可を頂いて転載したものです。

<太田直樹氏プロフィール>
株式会社 New Stories 代表。一般社団法人 コード・フォー・ジャパン 理事。ボストンコンサルティンググループでは、 シニアパートナーとしてテクノロジーに関する専門性を活かし、情報通信企業を中心にプロジェクトを推進。テクノロジーグループのアジア統括も務める。その後、2015年に総務大臣補佐官に就任し、IoT、AI、ビッグデータの政策を立案する一方で、中央と地方の様々な分断にも問題意識が移行。現在は、セクターを越えた連携やシビックテックの推進を通じて、コミュニティ主導のまちづくりや地域に開かれた教育など、地方の本当の豊かさを創る仕組み作りの支援をしている。東京大学文学部卒。ロンドン大学経営学修士。

モノに触ること、人と触れ合うことに不安を感じるWithコロナの時代に、意匠やカッコよさではなく「関係性」からデザインを紐解く本書が生まれたことの意味を、太刀川英輔さんの新著のゲラ(試作版)を読了して静かに考えていました。5年前に、英輔さんが”本当に本当にデザインすべきものは何か”という問いを、あるワークショップで投げかけたことを思い出していました。 

素晴らしい本が誕生しました。本書は、デザイン思考に分類されると思いますが、生物の進化を探究することで、より広い「創造すること」を扱っています。その構造は美しくシンプルで、コンセプトが変異することと適応することの螺旋になっています。新しい事業やプロダクトに取り組んでいる人は、「適応」の章から、事業やプロダクトの意図(WHY)について、大きなヒントが得られるでしょう。適応は「時空観」という生態学を4つに整理した観点から語られ、内部構造の「解剖」から目的に必要なものと不要なものが明らかになり、外部構造の「生態系」から系の中で求められるものと、そうでないものが見えてきます。そして、過去からの「系統樹」から本質的な願いに立ち戻ることができ、未来の「予測」から持続するものと、そうでないものが分かってきます。ところどころにある「進化ワーク」に事業やプロダクトを置いてみると、様々な気付きが得られるでしょう。

そして、本書がさらに大きなインパクトを生む二つの領域を想像しています。一つは、企業や行政が掲げる「人間中心の○○」に多くの人が感じ始めている限界の先にある、いわば「地球中心」のクリエーションです。気候変動を押さえ込むことへの敗北が明確になりつつある中で、想定される過酷な未来において、どのように様々なしくみを再創造していくのか。徹底して自然や生態学をベースにしている進化思考は、次の世代が生き残っていくときに何かを創りだすアプローチになるでしょう。イーロン・マスクのような「天才」がモビリティやエネルギーを再創造することを、「衆知」によって生み出す可能性を秘めていると思います。僕は3年間、英輔さんと進化思考をベースにしたワークショップをして、そうした可能性を体験しました。 

もう一つは、未来の学びです。本書では各所で教育について触れられています。いまの教育が創造性に蓋をしていることは、いろんな人が指摘しているところですが、人工知能が、ドリル的な教育で身に付くものをほとんど代替していく未来に、人間に求められているのは創造性であり、進化思考はその可能性を拓く力を持っています。筆者がよく取り上げる「バウハウス」は、造形の学校として、現代の社会や暮らしに多大な影響を与えましたが、「バウ」は建築を意味します。建築を学び、そこからデザインは何かを探究して生まれた進化思考は、未来の社会や暮らしを再構築するアーキテクトを生み出す学校として、近い将来に結実すると予想します。

(進化思考本文より)
”関係の奥には「出現を待つ意図=WHY」がある。創造のプロセスは、そのWHYの探究でもある。関係から浮かび上がった自然な意図と、実際の現実との差が大きい場合に、その歪みをつなぐ創造が生まれる追い風のような力が働く。それが新たな創造が出現する力になるからだ。” 

気候変動や技術の発展が不安な未来を予感させる中で、この希望となるメッセージは、種火のように読者の心に宿るでしょう。それは、この本のベースに著者自身についての時空観が織り込まれているからだと思います。デザイナーとデザイン思考の探求者としての内面や、ソーシャルデザインを通じて未来に向き合ってきた経験。さらに、過去の系譜や関係から、一旦自身を切り離し「瑛弼」と名前を変え、再び「英輔」となり、育ててくれた祖母を探し、そして家族を持った経験。これらがもう一つの物語として流れていて、強い願いとして、本書が立ち現れたのだと思います。この本を読んだ一人一人に、この種火が配られていくのが楽しみです。

株式会社 New Stories 代表 太田直樹


『進化思考』4月21日発売予定。Amazonにて絶賛予約受付中です。


(海士の風からのコメント)
太田さんは、いまの日本をビジネスと政治の両側面から作ってこられた方です。そして、海士の風を運営する株式会社風と土との株主であり、海士の風や進化思考を生み育ててきたコクリ!プロジェクトの戦略ディレクターでもあります。進化思考を活用した大企業の新規事業開発の経験もあり、進化思考の一番の理解者として、これからも太田さんとともに進化思考を世界に根付かせていきたいと思っています。


太田さんと著者太刀川英輔さんとの対談記事もあります。


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海士の風
島根県隠岐諸島の一つ、中ノ島海士町にある出版社。書籍の内容を実践で「やってみた!」という活用レポート、イベント情報の記事を発信していきます。海士の風公式HPはこちら https://amanokaze.jp/